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ラオス・ナムトゥン2ダム>世界銀行理事が現地訪問
メコン河開発メールニュース 2004年2月19日

完成すれば東南アジア最大となるラオスのナムトゥン2ダム(水没面積45,000ha、1070MW)についてのニュースです。支援を検討している世界銀行の意思決定機関である理事会のメンバーがついに現地を訪問しました。そこには日本の原田理事も参加しています。

事前に理事の現地訪問の情報を入手したメコン・ウォッチが、いち早く日本の財務省開発機関課に伝えた懸念の1つが、現地ではこの訪問を利用して、「世界銀行がナムトゥン2ダムにゴーサインを出した」と宣伝するという点でした。

案の定、そのような主旨の記事がタイの英字新聞に掲載されました。その翌日の紙面では、世界銀行の広報担当者の言い訳が投稿として載っています。それも合わせて以下に翻訳しました。

世界銀行広報担当者の言い訳は、「理事たちは何の意思決定もしていない」という点につきます。しかし、「世界銀行の支援を得られる見通しとなった」ともとの記事が書いた根拠は、ラオスのプロジェクト企業体顧問(もともとラオス政府高官)のインタビューです。メコン・ウォッチが理事の現地訪問前に財務省に指摘したように、今回の最大の懸念は世界銀行が意思決定したかどうかではなく、ラオス側に「世界銀行の支援はほぼ決まった。そうでなければ理事がわざわざ現地に行かない」と宣伝する機会を与えたことにあるのです。そんなことは、ダムのようにリスクが高く政治的な要素もある事業の支援に関わったことがある世界銀行なら、山ほどの経験を持ち合わせているはずです。

それに言い訳投稿では意思決定は何か月も先だと主張していますが、もとの記事でも「遅くとも来年早々」すなわち何か月か先だと書いているわけです。ですから、言い訳投稿は格好だけで、実質的にもとの記事と言っている中身に大きな違いはありません。

ナムトゥン2ダムへの支援を決定する世界銀行の理事会は、年末か来年早々と見られています。メコン・ウォッチは、過去10年以上にわたってプロジェクト準備のプロセスをずっとモニタリングしてきた団体として、世界銀行の政策に従えばこのプロジェクトへの支援は絶対にできるはずがないと考えます。このメールニュースでもナムトゥン2ダムをめぐる様々なニュースを今後提供していくつもりでいます。

ラオス・エネルギー・プロジェクト:世界銀行がダムを支援

The Nation

Supalak Ganjanakhundee記者

2004年2月12日

論議を呼んでいるラオスのナムトゥン2ダムは、プロジェクトに出資している企業体が昨日(2月11日)語ったところによると、遅くとも来年早々には世界銀行のリスク保証の承認を得られる見通しとなり、遅れに遅れていた東南アジア最大の水力発電所の完成に道がつけられた。

ナムトゥン2電力企業体(NTEC)のアドバイザーをしているLoy Chansavat氏は、世界銀行の代表者たちが先週ナカイ高原のプロジェクトサイトを訪問し、ダムが深刻な環境・社会問題を起こさないだろうと決断した、と語った。

我々は森林や野生生物への環境影響を制御できることを世界銀行の代表者たちにはっきりさせた、彼はそう話す。

世界銀行はこのプロジェクトのカギとなる存在である。というのも、プロジェクトの融資者たちが、ラオス政府による契約違反の恐れに対して、世界銀行のリスク保証を必要としているからである。

Loy氏は、環境保護活動家たちが、ダムによってセバンファイ川沿いの15万人が影響を受けると言っていることを批判し、その数はせいぜい5万人程度だと語った。

彼はまた、開発企業体はダムに対する10億ドルの投資費用の1パーセントを、立ち退きを余儀なくされるナカイ高原の5700人同様、国立生物多様性保護地域の森林や野生生物の保全に充てていると主張した。

世界銀行は、引き続き住民移転プログラムや環境保護計画に疑問があるため、すぐさまプロジェクトを承認することはできなかった。(しかし)世界銀行の職員たちが挙げたのは、貧困削減プログラムの効果に関する比較的重要でない懸念だ、世界銀行の代表団をプロジェクトサイトに案内したLoy氏はそう述べた。

Loy氏によれば、ラオスのSomsavat Lengsavad副首相は世界銀行職員たちとの会合で、、貧困削減計画は政府にとって最も優先度の高いプログラムだと述べた、ということである。

プロジェクト開発企業体は、フランス電力公社の国際部門担当会社、それにタイのElectricity Generating社とイタリアン・タイ開発社からなっている。

ラオス電力公社は、インドシナ・ベトナム戦争で残された不発弾の処理のために3000万ドルを充てている。また、タイは(2003年)11月にプロジェクト開発企業体と電力購入合意に同意し、2009年から25年間にわたって、ダムが発電する1070メガワットのうち995メガワット分を引き受けることに署名した。

タイの活動家によれば、1キロワット時あたり0.42ドルという電気料金取引はタイにとっては高すぎるし、ラオスにとっては安すぎる。エネルギー問題に詳しいWitoon Charoen氏は、タイは他のプロジェクトから1キロワット時あたり0.413ドルで買うことができる一方で、ラオスにとっては、0.57ドルでもプロジェクトの費用を回収することはできないだろうと述べている。

世界銀行は、報道されているようにダムプロジェクトの決定間近ではない

The Nation

2004年2月13日

昨日のThe Nationの記事(『世界銀行がダムを支援』,2004年2月12日付)は、ラオスで計画されているナムトゥン2水力発電プロジェクトに対する世界銀行の見方を誤って解釈して伝えている。

過去長い間に渡って私たちがはっきり述べているようにー全て私たちのウェブサイト(www.worldbank.org/lao)に掲載している、世界銀行は、このプロジェクトに支援をするかどうかの最終決定をするのは、まだ何か月も先のことである。

世界銀行の理事たちのグループが先週ラオスを訪問したのは、借入国が直面している課題をより理解し、その国における世界銀行の業務を視察するという、理事たちの現地訪問プログラムの一環である。

世界銀行代表団が提案されているナムトゥン2プロジェクトのサイトを訪問したのは、この事業をめぐる複雑な問題をより理解することが目的である。

代表団の訪問は、進行中のプロジェクトについて何らかの意思決定を行ったり、何か結論を出すためのものではない。

確かにナムトゥン2プロジェクトは、世界の最貧国の1つであるラオスにおいて、社会サービスと社会基盤の改善に必要な長期的な収入源となる可能性はある。

また、このプロジェクトがラオスに対して、徴税、経済マネージメント、地域住民との協議、電力システムの運営、それに環境保護といった基礎的なサービスの運営方法を改善する手助けになる機会を提供する。

しかし、これは巨大プロジェクトであり、環境面を含めた大きなリスクを必然的に伴っている。また世界銀行の10あるセイフガード政策(環境社会配慮)全てに引っかかってくる。

世界銀行はラオスの人々の利益のためにこの事業を支援することができたらいいと考えているーだからこそこれほど長い間私たちはこのプロジェクトについて業務を行ってきているのだ。

しかし、私たちはリスクをできる限り適切に扱うため、慎重に進めているのである。それ以外の暗示をしたり、いずれにせよ意思決定はなされたと示唆したりすることは正確ではない。

Peter Stephens

World Bank
regional communications manager
East Asia and the Pacific region
VIA E-MAIL

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