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ウォーター・グリッド>東北タイで抗議の声
メコン河開発メールニュース 2004年3月1日

さっそくメコン・ウォーター・グリッド(送水網)に関する続報です。巨大導水灌漑計画(コン・チー・ムン・プロジェクト、文末に解説あり)で深刻な被害を受けてきた東北タイのグループが、批判の声を挙げています。

ネットワークグループが東北タイの灌漑計画に抗議

The Nation, Sumalee Phopayak記者

2004年2月20日

ダム貯水池に溜めた水を東北タイの高地にある農家へ送水するという計画に反対している人たちは、この計画は社会、環境、経済面で災禍をもたらし、コン・チー・ムン灌漑プロジェクト(*)と同等の問題を引き起こすだろうと述べている。

送水管による導水プロジェクトは、この地域の貯水池から灌漑用水を取り、高地地帯や丘陵地の農作業用にポンプでくみ上げるというものである。

活動家、村人、研究者は、計画されている導水プロジェクトを批判し、共同声明の中で「この計画は、経済面、社会面、あるいは環境面で実行可能ではない」と述べている。

この見解は、週末にナコンパノムで開かれる移動閣議に対して表明されることになっている。

「Suwit Khunkitti副首相が、閣議においてこのプロジェクトを推し進めると聞いている。この計画は国全体、特に東北タイ(イサン)地方に深刻な被害を引き起こすだろう」、東北環境自然資源ネットワークのSanan Kularbwong事務局長はそう述べた。

Sanan事務局長によれば、地元の研究者や村人と一緒に、このネットワークは閣議において、タクシン首相に公式に忠告を提出する予定である。

Sanan事務局長によれば、このネットワークは数十年にわたって、総事業費数十億バーツのコン・チー・ムン・プロジェクトの影響を詳しくモニタリングし、その結果、ますます多くの悪影響に気がついてきた。特に重要な問題は、プロジェクトによって誘発される塩水によって数百万の農民が被る被害である。広範な水路の掘削は、地質的な岩塩ドームを刺激し塩水を作り出す、Sanan事務局長はそのように述べた。

「新しい同類の事業を作る前に、コン・チー・ムン・プロジェクトの見直しが必要だ」と。

*解説『コン・チー・ムンプロジェクト』とは・・・

タイ政府は、東北タイの貧困の原因を水不足と考え、そのために大規模な灌漑を推し進めてきた。その代表格がコン・チー・ムン導水計画である。1989年にタイ政府が決定した計画では、42年間、90億ドル以上をかけて、東北タイの498万ライ(79万6000ha)を3つのフェーズで灌漑するというものだ。第1フェーズが既存のランパオ・ダム灌漑システムの改善を含む貯水池建設、第2フェーズが新たな灌漑システムの建設、第3フェーズがメコン河本流(ビエンチャンから20キロ上流)にダムを建設して導水するという計画である。第3フェーズだけで427万2050ライ(68万3528ha)と全体の86パーセント近くを占めている。

1992年の民主化運動後、科学技術環境省の環境計画政策局(OEPP)が「環境影響分析専門家委員会」を設置し、コン・チー・ムン導水計画を含めた大規模インフラの見直しを実施。専門家委員会は厳しい勧告を提出した。しかし、チュアン政権は、メコン河本流からの導水を除きほとんど勧告を受け入れなかった。

一方、この計画は、1992年頃下流のカンボジアとベトナムの反対に合い、地域的な政治紛争になった。1995年下流国の拒否権を奪うことで新しいメコン河委員会(MRC)が発足した。同じ年、コンケン大学のプラゴープ工学部長は、コン・チー・ムン導水計画の需要はない、あるのは政治家と技術者にだけだと政府を批判した。

第1フェーズは予定していた2000年には完了していないが、これまで3つの地域でダムと灌漑システムが完成し、9つのダムが完成した(灌漑システムは未完)。その中にラーシーサライ・ダムやラムドムヤイ・ダムなどが含まれている。コン・チー・ムン導水計画で唯一稼働している灌漑システムは、ナコンラチャシマ県のチュンプアン・ダム。灌漑面積は200ライ(32ha)。政府は農民に灌漑利用の拡大を呼びかけているが、水使用代、ポンプ電気代、乾季作のための化学肥料代、塩害などが障害になっている。塩害の問題は深刻である。当初は灌漑水が塩を洗い流すと言われていたが、実際には排水が悪い場所では水が塩害地帯を拡大させ、排水がいい場所でもwater logging(土が水浸しになる状態)によって地下水の水位が上昇し塩害を深刻化させてきた。

また、1992年に完成したラーシーサライ・ダムは周辺住民の農地や漁業に甚大な被害をもたらした。長年の抗議運動によって、2000年政府はダムの水門の開放を決定した。(文責:松本 悟)

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