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ウォーター・グリッド>200人市民集会で批判
メコン河開発メールニュース 2004年3月5日

タイ政府が首都を離れて行う移動閣議(文章末に訳者注)、2月は東北タイのナコンパノムで開催されました。それに合わせて、東北タイの住民グループのネットワークやNGO、研究者らは、ウォーター・グリッド(送水網)に反対する集会 を開催しました。ウォーター・グリッド計画とは、タイ国内や近隣諸国(ラオス とビルマ)にダム貯水池を建設し、そこから長大な導水管を通して、東北タイの 高原地帯に灌漑用水を供給しようというものです。

以下、メコン・ウォッチの土井利幸(バンコク)による、有力タイ字紙のプージャッカンの記事の翻訳です。

市民集会で東北タイ開発戦略を非難
「移動閣議は、投資家のための開発計画しか眼中にない」

プージャッカーン紙

2004年2月25日

【東北タイ報道センター】東北タイ天然資源ネットワークは政府の東北タイ開発戦略について、工業化を主眼に投資家を利するものでしかなく、小規模農民の生活向上については一言も触れずに、水資源管理戦略への市民の参加も妨げている、と非難した。また、ウドンタニ県のカリウム採掘事業については、中止を求める意見書を提出した。

2月21日、ナコンパノム県の大ホテルで移動閣議が開かれている同時刻に、同県にあるレストラン「インドシナ」で東北タイNGO合同委員会と東北タイ天然資源ネットワークの共催による集会、「コン・チー・ムン計画から送水網(ウォーター・グリッド)へ:くりかえされる過ち」が開催され、東北タイ各地のネットワーク組織から200名以上の村民代表などが参加した。

マハサラカム大学薬学部教員のヤンヨン・インムアン博士は、政府の東北タイ開発戦略の実態はダム・道路建設で、予算はダム貯水池や道路、そして沿線の工業地帯建設に使われる、と指摘した。「道路の両側の土地はほとんどすべてタイ人と組んだ海外投資家のものになる。小規模農民には対抗する手段もなく、このような弱肉強食の開発戦略は投資家を利するだけである」。

「また、この開発戦略では小規模農民の生活を支える術(すべ)について一言も触れられておらず、工業地帯や政府関係者のことばかりである。市民の姿のかけらも見えない開発戦略だ」。

「今回移動閣議が開催されたのは、ビルマから東北タイを通過してベトナムのダナンにぬける東西回廊にのっとった投資・経済活動への関連を深めるためである。

区間の道路は企業が建設し、メーソットからダナンまでも企業が投資して、ダナン港に輸送する商品を生産する工場を建設する。東北タイ開発戦略では、農民のことについては実にわずかしか触れていない。例外は水資源の件である。しかし、水資源が本来持つ価値ではなく、工業生産の必要要因としての側面だけを見ており、政府が決めた送水網計画においても考え方の傾向は水資源の管理である」。

東北タイ・オルタナティブ農業ネットワークのウボン・ユーワー氏は、政府の開発戦略は間違っており、それは地元の伝統的な考え方や現実をまったく大切にしていないからだ、と述べた。「開発戦略は見直す必要がある。それは、長期的に考えたタイ国民の自立ではなく、海外資本、科学技術、商品や労働力の輸出入市場に依存して企業家や投資家に奉仕することを目的としているからだ」。

「現在小規模農民のための地元産業への投資は窮状に瀕している。これは、タイより生産コストや賃金の安い中国との自由貿易で、タイが諸外国に太刀打ちできなくなっているからで、タイは再び天然資源を切売りしはじめている。その例がウドンタニ県のカリウム採掘だ」。

ー政府の水資源管理は失敗する、と指摘ー

ムン川流域ネットワークを代表して参加したサオソットサイ・サンソーク氏は、水資源管理の基本は東北タイの多様な生態系にのっとったものでなければならない、と発言した。「水資源には村の伝統に基づいた別の使い方がある。コン・チー・ムン計画や送水網計画は外国から借りてきた出来合いの画一的なもので、水資源を管理しようとする考え方である。東北タイの人々の伝統的な知恵や必要性に根ざしていない」。

「政府は、11年前に立案され問題を起しつづけているコン・チー・ムン計画を推進する前に、どのような問題が生じどのような対策が必要となったのかなど、過去の教訓をまず明らかにすべきである。塩害、住民参加の欠如、多くの無価値な大規模事業の問題は今も未解決だ。東北タイで実施される様々な大規模事業、水資源関連事業は、伝統的な知恵、文化、地域に根付いた水資源管理手段を尊重にしたものであるべきだ」。

クムカム原生林ネットワークの村民代表として参加したリット・ブンプラゴープ氏は、政府は天然資源を管理しようとダムや貯水池を造るが、これはその地に昔から住んでいる人々の生計手段と相容れない、と語った。「洪水が起これば農業は被害を受ける。事業が失敗しても政府は問題を解決することなく、あらたな事業に着手し村民を苦しめようとしている。コン・チー・ムン計画や送水網計画もやめて、タイ国家やタイ社会に利益をもたらさない事業はやめるべきだ、と思う。地域社会や生物多様性に悪影響を及ぼし、全国に被害が広がるからだ」。

同日、集会参加団体は移動閣議に対して東北タイ開発戦略を問う目的で三項目からなる文書を提出した模様である。この三項目とはまず、水資源管理戦略について、コン・チー・ムン計画をはじめとする過去の水資源開発計画が起こした被害や問題、特に計画決定の段階で市民が参加できない点を閣僚たちに喚起することである。

また東北タイの農業産業化開発戦略については、農民への悪影響をかんがみて二国間自由貿易の中止を求め、影響を多面的に調査する市民参加の委員会を政府が立ち上げるよう要請した。

さらにウドンタニ県でのカリウム採掘については、地域社会の生計、農業、天然資源と環境への悪影響を理由とした採掘の中止、そして大規模事業から生じる塩害の拡大を食い止める策を求めた。


*(訳者注)タイのタクシン政権は時折首都バンコク以外で閣議を開催することがあり、これを「移動閣議」と名付けている。今回のナコン・パノム県の移動閣議では、その開催に先立ち、ベトナムのダナン市とナコン・パノム市それぞれでタイ・ベトナム政府合同閣議が開催されたため、連日タイの各メディアで大々的に取り上げられた。

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