ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ラオス金銅鉱山開発 > 欧米豪NGOがEIB融資に抗議
ラオスで初めての大規模な鉱山開発のニュースです。ラオス中南部でオーストラリア企業が進めているセポン金鉱山開発は、次の銅鉱山の採掘に進もうとしています。欧米豪のNGOが環境と人権面から問題視する中で、ヨーロッパ投資銀行(EIB)が融資を決定しました。
セポン金銅鉱山開発については、このメールニュースでは2002年5月2日のニューヨークタイズム以来となります。
以下、IPS通信の記事をメコン・ウォッチボランティアの後藤歩さんが翻訳しました。
Stefania Bianchi記者
ブリュッセル、1月28日(IPS)−ラオスの銅採掘プロジェクトへの融資決定は現地の人々に危害を及ぼす、と主要環境グループが述べるヨーロッパ投資銀行(EBI)理事会は火曜日(1月27日)、ラオスの銅鉱山開発に7620万ドルの融資を行うことを承認した。四方を陸地に囲まれ600万の人口を持ち、ベトナムの西、タイの北東に位置するラオスは、鉱業開発に苦心してきた。
ラオスは近年、投資誘致のため市場改革と民営化を行っている。ラオスは自給農業で暮らしを立てているが、ここ数年で鉱業が年7%以上もの成長率で伸びている。
いくつかの国際機関が、ラオスにおける鉱業や他の開発プロジェクトへの融資に踏み切ってきた。ヨーロッパ連合(EU)で最大の金融機関、ヨーロッパ投資銀行(EIB)は、去年から銅鉱山プロジェクトへの融資を検討していた。EIBは、ヨーロッパ援助プログラム下での合意に対して融資を行う。
提案されているセポン銅鉱山は、ベトナムとの国境近くのサバナケート県に位置し、その80%がオーストラリアの巨大採掘会社Oxiana社が所有している。
この鉱山は、同じOxiana社所有のセポン金鉱山の近くに作られる予定になっている。同社はここで2002年から金を採掘しており、銅の採掘は2005年に開始予定である。この地域は、世界最良の未採掘の銅が埋蔵されていると信じられている。
しかし、Oxiana社は自社のウェブサイト上に掲載した影響評価で、「採掘プロジェクトは負の環境・社会影響をもたらすかもしれない」と認めている。この地の同社の金鉱からの廃棄物は近くの河川の絶滅危惧種を生存の危機に追いやり、現地の森を破壊し、まともな土地補償もないまま現地の人々を強制的に移住させていることを認めている。
しかし、Oxiana社は3000万ドルかけて金鉱の拡大を始めており、来年の1月から年間16万オンスから23万オンスへと採掘量を伸ばすことにしている。
環境グループは、提案されている銅鉱山が、メコン河の重要な支流である鉱山近くの川の生態系を破壊するのではないかと危惧している。環境グループは、鉱山建設がシアン化合物の流出、違法伐採、それに地域の生物多様性への負荷を増幅することにつながる可能性がある、と述べている。
EIBは去年の12月に同プロジェクトへの決定を下すはずであった。しかし、現地の環境やコミュニティへの影響を危惧するNGOからの圧力により、その決定は先延ばしにされた。
3つの環境NGO(オーストラリアの援助を監視するAidwatch、地球の友インターナショナル(FOEI)、中央・東ヨーロッパへの国際援助を監視するCEEバンクウォッチネットワーク)は協力し合い、プロジェクト反対のキャンペーンを掲げたが、EIBは融資を承認した。
「国連委員会のひとつがラオスでの人権侵害を防ぐ緊急行動を求めている中、論争のあるプロジェクトにEIBが関わろうとしている事実は驚くべきものである」、とNGOのキャンペーン担当のMagda Stoczkiewicz氏は述べる。「セポン銅鉱山は、環境や社会に有害な影響を与える巨大なプロジェクトであり、ラオスの人々には何ももたらさない」。
Stoczkiewiczは、EIBは他の融資機関への手本となるべきだと述べた。「EIBのような公的融資機関はこういうタイプの融資取引では助けになる。というのは、プロジェクトへの介入を決定することでその事業は安全だという印象を与えるからだ。そして他の民間融資機関はすぐさまその後に続くことになる」。
Stoczkiewicz氏は、EIBは、鉱山が現地の環境へもたらす影響を分析するNGOは、この鉱山に対するキャンペーンを引き続き行うことを固く決意しているとStoczkiewicz氏は言う。「このケースについては、私たちは人権の側面だけでなく、特に欧州委員会が融資前にEIBに要求したこの銅鉱山に関わる環境影響評価の実施についても追求していくだろう」。最近の世界銀行による『採掘産業の見直し』の調査が、こういった採掘プロジェクトは、ガバナンスの弱い国では貧困削減につながらないと結論付けた、とNGOは指摘する。『見直し』は、汚職や現地コミュニティへの度重なる嫌がらせによって、政府や市民が負担するコストは、そうしたプロジェクトがもたらす便益より多いことがしばしばあると述べている。
世界銀行グループが支援した石油、鉱業、ガスプロジェクトに関する2年間の開発影響評価に基づき、『見直し』はより一層の人権保護、プロジェクトによって影響を受ける人々の「事前に十分な情報を得た上での同意」、そして破壊的な採掘技術への支援の停止を勧告している。
世界銀行(*注)は2002年、Oxiana社にプロジェクト用に3000万ドルの融資を申し出たが、同社はそれを受けなかった。世界銀行の担当者は、これは「デュー・デリジェンス(適切な注意)と環境/社会上の必要条件」によるものだった可能性がある、と述べている。
担当者は、「明かなことは、世界銀行がプロジェクトに関与しないことは、プロジェクトが世界銀行のガイドラインにしたがっているかに疑問を投げかける。正式な契約がない、したがって世界銀行の条件に従う義務はないので、Oxiana社が世界銀行のガイドラインを守る動機付けはない」と述べた。
Stoczkiewicz氏は「(欧州)委員会によって要求された環境影響評価を行わずにプロジェクトを承認したEIBは、説明責任を果たしていない」と述べている。EIBのウェブサイトのプロジェクト概要によれば、プロジェクトは「現地の環境規則、世界銀行のガイドライン及び最優良産業実践(best industry practices)に沿って計画される」だろう。しかし、地球の友インターナショナルの活動家は、「(EIBが)これらの基準に従わないか、たとえ従ったとしても、こうした方法だけでは適切なセーフガード(環境社会配慮の確保)にはなりえない」と述べている。
(*注)ここでいう世界銀行は、世界銀行グループの1つで民間セクターを支援する国際金融公社(IFC)のことを指している。