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メコン河開発メールニュース 2004年4月14日
メコン河開発とは直接関係ありませんが、国際開発金融機関にとって、極めて重要な動きなのであえてニュースとしてお伝えします。
国際開発金融機関のトップ人事は「紳士協定」によって、世界銀行の総裁はアメリカが、国際通貨基金(IMF)の専務理事はヨーロッパが、アジア開発銀行(ADB)の総裁は日本が、それぞれポジションを確保してきました。
その一角であるIMFをめぐって、トップ人事を旧来のドナー国の暗黙の割り振りではなく、開かれた透明性のあるプロセスで選出すべきだという声明が、各国政府の代表者であるIMF理事たちから出されています。
今回の件は、これまで日本人、なかんずく大蔵・財務省出身者が占めてきたアジア開発銀行総裁の人選にも影響を与えることが予想されます。
以下、IMF理事グループが出した声明(IMFの報道発表)とワシントンポストの記事を、メコン・ウォッチ(バンコク)の土井利幸が翻訳しました。
報道発表番号04/55
2004年3月19日
国際通貨基金(IMF)
所在地:700 19th Street, NW Washington, D.C. 20431 USA
本日、IMF理事グループは新専務理事選出過程について以下の声明を発表した。「本日、アジア、アフリカ、ラテン・アメリカ、中東の新興・開発途上国を代表するG11理事は、それぞれ複数の国を代表するオーストラリアおよびスイスの理事、ならびにロシア連邦の理事の参加をえ、総勢100を超える国々を代表して集まり、ホルスト・ケーラー氏辞任にともなうIMF新専務理事の選考過程について話合いを行なった。
1.上記のグループは、専務理事の要職に指名推薦される候補者は本機関の使命を熟知したすぐれた人物でなければならないとかたく信じる。
2.候補者の選考・特定の過程は透明かつ開かれたものとし、国籍を問わず、この職務に最も適する人物を招き入れることを目的とするものでなければならない。
世界諸地域にわたる加盟国の多様性を代表する複数の候補を選ぶことが基金にとっても最善の利益となるであろう。
3.理事会を構成するすべての理事について、新専務理事の選考に至る候補者選びに際してその意見が求められ、候補者の資格業績や本機関への理解度に関する情報等が適宜伝達されるようでなければならない。」
IMF広報局
一般窓口電話:202-623-7300、ファクス:202-623-6278
メディア専用電話:202-623-7100、ファクス:202-623-6772
原文(英語):
Press Release Statement by a Group of IMF Executive Directors on the Selection
Process for a New Managing Director
http://www.imf.org/external/np/sec/pr/2004/pr0455.htm
『ワシントン・ポスト』紙2004年3月22日(A11ページ)
Paul Blusteinワシントン・ポスト記者
国際通貨基金(IMF)の理事会としては異例と言える意見の相違を表明する形で、100以上もの加盟国を代表する理事たちが、次期IMF専務理事を「国籍にしばられずに」選考することを呼びかける声明を発表した。
先週金曜日(3月19日)に、IMFによる記者発表として出された声明は、欧米諸国を標的にして、IMFのトップはかならずヨーロッパ人に、世界銀行(世銀)の総裁はかならずアメリカ人に、としてきたこれまでの取り決めを非難している。
IMFと世銀のトップの選考過程が問題化したのは、3月4日にホルスト・ケーラー氏がドイツの大統領選挙に出馬するためIMF専務理事を突然辞任したことがきっかけである。
欧州の理事たちはケーラー氏の跡を継ぐのは自分たちの仲間であるとの期待をあらわにし、おおかたは現スペイン政府のロドリゴ・ラト財務大臣の名前をあげていた。政権交代を実現したスペイン新社会主義政府もラト候補に支持を表明した。
しかし選考過程は欧州各国の財務大臣の間での舞台裏の駆引きであり、フランスがラト候補に反対するとの報道を流す欧州メディアもあらわれた。
こうした選考過程は、経済学者、新聞の論説委員、非政府組織(NGO)関係者らから、世界で最も権力を持つ二つの組織の長を横暴なやり方で決めている、と長年にわたって批判されてきた。内部の人々の多くは結局もとのさやにおさまると
ふんでいる。これは欧米ともに選考過程を押さえることでもたらされる力を認識しており、双方で理事会の過半数を占める投票権を持っているからである。IMF・世銀の理事会での投票権は、各国の出資額に基づいて算出されているのだ。
金曜日に発表された声明は、こうした駆引きから排除された国々による強い抗議の意思表明である。声明はIMFの理事24名の半数にわずかに及ばない「G11」を名乗る理事たちのグループによって出された。声明によれば、この理事たちは、「アジア、アフリカ、ラテン・アメリカ、中東の新興・開発途上国」を代表し、そこにそれぞれ複数の国を代表するオーストラリアおよびスイスの理事、ならびにロシアの理事が加わっている。
「候補者の選考・特定の過程は透明かつ開かれたものとし、国籍を問わず、この職務に最も適する人物を招き入れることを目的とするものでなければならない」、と声明は述べている。
この声明は、IMFが途上国を犠牲にして金持ち国を利する政策を取っている、と非難してきた人々からも歓迎されている。
「IMFの理事たち自身が突きつけた前例のない挑戦状だ」、という電子メールをよせたのは「50年でもうたくさんネットワーク」のSoren AmPose氏である。
「無視できない数の理事たちが、理事会全体に対して、特に最も力を持っている理事たち個々に対して、やり方をあらためるように公開声明で要求を突きつけたなんて出来事は前代未聞だ。」
英語原文: