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メコン河開発メールニュース 2004年5月7日
今年の乾季はメコン河の異常水位・漁獲高の現象のニュースが続きました。異常気象のせいだという声もありますが、圧倒的に記事として多いのは、中国の開発にその原因があるという論調です。
以下は、イギリスのテレグラフ紙の記事を、メコン・ウォッチボランティアの柿元えり子さんが翻訳しました。
テレグラフ紙 (イギリス)
2004年4月1日
飽くことのない電力需要は、漁業資源を破滅に追いやることで2000万人の生活を脅かしていると非難を受けている。Alex Spillius記者のプノンペンからの報告です。
タイ、ラオス、カンボジアの人々にとって、メコン河は常に「母なる川」であったが、Kham Chhon氏は、ある日魚が採れなくなり疑惑を抱いていた。
彼の捕獲量はイワシ大の魚22ポンド(約10kg)だった。、これが彼の収入源であり、主なたんぱく源、また主な生活の糧となる。だが20年前には、彼は確実に1日440ポンド(約200kg)を捕獲していた。
「魚がどうしてあまりいないのかわからない。たぶんメコン河は人間に優しいのだが、人間はメコン河に優しくないのだろう」と、彼はためいきをついて、首都プノンペン近くの質素なコンクリート造りの自分の家の前のマンゴーの木陰の木の腰掛に引き込んだ。
メコン河下流域に住む6,500万人の人々は、河川水位が下がったことで生活と健康の危機にさらされている。Kham Chhon氏もその一人。魚の乱獲と森林破壊は、何年もの間、影響を及ぼして来ているが、メコン河上流に建設されている中国の水力発電ダムが事態をますます悪化させている。
メコン河は、世界でもっとも素晴らしい川のひとつであり、チベットの氷河から中国の南部の山々や、ビルマ・タイ・ラオス・カンボジア・ベトナムの平原まで劇的に変化する景観の中を3,000マイル(約4800キロ)流れ、南シナ海へと注いでいる。
支流沿いでは、年間200万トンの魚が採れる。中国下流のコミュニティーでは人々の蛋白源の80パーセントを満たしている。
政府間機関のメコン河委員会は、約2000万人の人々が漁業に携わっていると見込んでいる。「人々はこの川に頼って生活しており、何が起きるか考えると本当に恐ろしい」と、同委員会の環境専門家Ian Campbell氏は語る。
「西欧諸国で、しばしば生物多様性について語るのは、種の保存がいいことだからである。しかし、ここではまず人間の生活が問題だ」。
委員会のデータを見ると、場所によっては川は底の岩近くを流れていることがわかる。以前、乾季にはほとんど見おられなかった砂洲が、多くの場所で現れた。
プノンペン近郊では、貨物船やフェリーがいつも動けなくなっている。
陸地からメコン河に浮かぶ島Koh Dachへフェリーを渡しているSe Chhuon氏は、「今までこんなに注意したことはない。川を渡るのがこれほど難しいかったことはない」と言う。多くの観測地点のデータによると、メコン河は記憶に残る限りもっとも水位が低かった1993年に記録されたレベルを下回っていることが明らかになっている。
プノンペンのメコン河委員会のPech Sokhem局長は、「洪水を防ぐには良いかも知れないが、農業や漁業には被害を与える。もし、水がうまく流れないなら、魚は産卵も移動もできなくなる」と述べている。
彼はさらに、ある意味で干ばつも原因だが、中国もいくばくかの責任をとるべきだと言う。なぜなら、電力需要の急な増加と減少によって、ダムが11インチ(約30センチ)の幅で水位の増減を引き起こすからである。
中国は1996年、初の漫湾ダムを完成し、2003年10月に、大朝山に2番目のダムを建設しており、問題は深刻化する一方だ。
さらに6つのダムの建設が雲南省に予定されている。次のダムは、小湾に建設され、2012年完成予定であるが、後方に105マイル(約170キロ)も伸びる貯水池を持つ揚子江の三峡ダムと比べてもひけをとらない規模となるだろう。
ダムは、中国の飽くなき電力需要と、東部と南部に遅れをとる西部地域開発戦略のシンボルである。環境活動家たちからその傲慢さを非難されながらも、メコン河下流国との協議を行わずにダムを建設している。表向きの説明ーめったに述べられないがーは、利益が悪影響をずっと上回るだろうと言うものだった。
援助と貿易を中国に頼っている小国は、あえて隣人(中国)を非難せず、はるかに小さい規模ならば、とにかく自国自身のダムを建設してきた。タイ、ベトナム、ラオスは、すべて支流に障害物を建設してきた。
1990年代まではほとんど開発されなかったメコン河は、大規模ダムの妥当性がますます疑問視されている今日、この地域の発電所になろうとしている。
さらに電力を供給すると人々の生活が改善され、140−180(原文まま)の平均収入しかない人々に極めて重大な発展をもたらすだろうと政府は述べている。だがそのことは、中国のダムのことを全く聞いたことにないKham Chhon氏や妻、その子供たちには、ほとんど何の安らぎも与えてくれない。