ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ウォーター・グリッド> タイ・ムン川の早瀬爆破
メコン河開発メールニュース 2004年6月15日
タイの全国送水網整備(ウォーター・グリッド)の一環として、東北タイの洪水対策が進められようとしています。灌漑局の委託調査は、そのためにパクムンダムで深刻な漁業被害が続いているムン川の早瀬を爆破することを提案しました。
以下、メコン・ウォッチの木口由香の解説と翻訳です。
メコンの上流浚渫で早瀬の爆破が大きな問題となっていますが、重要な回遊魚の生息地であるムン川でもダム開発に続いて、早瀬の爆破が検討されています。
灌漑局の調査では、東北タイの洪水対策として、早瀬の爆破が有力な選択肢としてあげられています。しかし、ウボンラチャタニ県市街地の洪水は人災の要素が強いと考えられます。現地を訪問すれば分かりますが、道路建設による排水路のブロック、氾濫原の商業地開発など、ここ数年で町に顕著な変化が起きています。
また、パクムンダムによる堆砂で、河床が上昇していることも地域住民から指摘されています。何よりも、地図を見れば一目瞭然ですが、ウボンラチャタニの町自体がムン川の氾濫原に位置しているのです。町の周囲は旧河川の名残である沼や三日月湖が多数残っています。雨季に水が溢れるのはある面、当然ともいえます。しかし、この記事から判断する限り、こういった要素は検討されず、河川を改修することに重点が置かれているようです。
調査を担当したのはウボンラチャタニ大学の土木工学のチームのようですが、同じ大学内でも環境・社会影響について懸念の声が上がっています。今後、最終的にどのような結果が出るのか、注視する必要があります。
灌漑局に委託された調査が、ウボンラチャタニ県の洪水緩和のため同県コンヂアム郡を流れるムン川にある約15ヶ所の早瀬の爆破を提案している。
しかしながら灌漑局の幹部は、爆破が環境に深刻な影響を与える可能性を認め、それは実施されないかもしれないという。
900万バーツをかけた調査は、灌漑局とウボンラチャタニ大学によって実施されており、9月終了の予定だ。同調査は、ムン川の洪水緩和策を提示することを目的としている。
メコン河、チー川(注:ムン川支流)、それにムン川を管轄する灌漑局7区のPrasong Siangchokyoo所長は、雨季に早瀬が水流を妨げることが、ムアン郡とワリンチャムラープ郡での深刻な洪水の原因となっているという。
Prasong氏は(国立公園となっている)有名なタナ早瀬を含む岩の爆破によって、ムン川の水は、より早くメコンに排出することになるだろうと語った。
メコンへの速やかな排水は、過去3年間に渡って深刻な洪水被害を受けているウボンラチャタニ県の住民にとって良いことだという。
調査によると、もしいくつかの早瀬が爆破されて水の排出が早くなれば、雨季におけるムン川の水位は1.6−1.9メートル下がるという。
「しかし、我々は岩の爆破による重大な環境影響を意識している。早瀬の除去は、乾季にもメコンに水を速く流してしまうだろう」「我々は公聴会を開き、また調査において影響の少ない代替案を示すつもりだ」とPrasong氏は語った。
この調査チームによって示されているその他の洪水予防策は、ムン川から自然水路(メコン河)へ排水するための90キロメートルに及ぶ排水運河の建設、ムン川の上流と支流における中規模ダムの建設、また水路を妨げる建物や道路の移動などを含む。だが、調査は、早瀬の爆破がウボンラチャタニの市街地から水を早く排出する最も効果的な方法だと提案している。
「これら全ての計画は環境や社会に対して大きな影響があり、多くの費用もかかるだろう。よって、当局は、計画が関係する全ての人々の合意得ることを保障するべきである」。
彼は事業の費用見積もりを明らかにすることを拒否した。
灌漑局La-iad Sanamkiew副局長は、この計画が生態系に重大な影響を及ぼし「望ましくない」もので、見込みはないだろうと語った。
東北の洪水問題に長期に取り組むために19県から集まった約60名の灌漑局スタッフによる昨日の会議をまとめたLa-iad氏は、「早瀬はあまりに重要であり、破壊することはできない」と言う。
同氏は、東北タイ各県の洪水防止計画が、政府が進める4000億バーツ規模のWater Grid(送水網)計画に含まれるだろうという。灌漑局は計画に備えて、水資源局と国家水資源委員会に助言を求めていくという。