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【ナムトゥン2ダム・キャンペーン】第3号 バンコクでの世界銀行ワークショップはダム批判で埋まった市民社会からの「広範な支持」とは程遠い現実

(特活)メコン・ウォッチ 2004年9月3日

ラオスの人々の生計手段を奪い、環境破壊を進めるプロジェクトに、世界銀行やアジア開発銀行の資金が使われないよう、皆さんの力を貸してください!

本日9月3日、世界銀行はナムトゥン2ダムについての「テクニカル・ワークショップ」を東京で開きます。8月31日のバンコクに次いで2か所目です。今後は、パリ、ワシントンDCと続きます。

さて、最初の「テクニカル・ワークショップ」となったバンコク会合では、出されたほとんどの意見が、ダムへの疑問・批判だったようです。世界銀行が10年前に支援し、今に至るまで大きな環境社会被害を起こし続けているパクムンダムの被害者たちが多数参加し、「世界銀行の甘言に騙されるな!」とラオスの「兄弟姉妹」にエールを送りました。

以下、ワークショップに出席したメコン・ウォッチの土井利幸からの報告です。

8月31日、バンコクのアジア工科大学でナムトゥン2をめぐる世界銀行(世銀)主催のワークショップが開催され、200名近くのNGO・住民団体メンバー、研究者、メディア関係者らが参加した。

終日にわたるワークショップでは、プロジェクト推進側の説明に対して、水没地の野生動物への被害、下流域の村々への影響、流域の魚類・漁業への被害、住民移転計画の不十分性、現地住民への情報提供の不徹底、電力需要予測の問題点、プロジェクトの経済性・持続性などをめぐって、数々の疑問・懸念・反対の声があがった。世銀とともにナムトゥン2に関与しているアジア開発銀行(ADB)の関係者も、「(プロジェクトに)前向きな発言は二・三しか聞かれなかった」と振りかえった。

世銀のIan Porter国別担当局長はワークショップの冒頭で、世銀などが作成した「決定の枠組み」について説明したが、この中にはナムトゥン2に融資を行なう要件の一つとして、「ラオス政府の開発戦略とナムトゥン2そのものに対する諸援助機関と市民社会からの広範な支持(broad-based support)」が明記されている。

今回のワークショップの結果を見ても、ナムトゥン2に対して「広範な支持」を得ることがいかに困難かは明らかだ。プロジェクトに内在する問題点を考えれば「広範な支持」など得られるわけはないが、これに加えて、経済分析などの調査が未完成で情報公開も不徹底なままワークショップが開催されたことで、「拙速」との批判も受けることになった。

ワークショップでは大規模ダム建設が生む問題点もあらためて浮き彫りになった。

タイ各地のダム被害住民、とりわけ世銀が融資をした東北タイのパクムンダムの被害住民ら十数名がワークショップ会場に姿を現し、自らの苦々しい直接経験をもとにダムが引き起こす多くの悲劇について証言した。パクムンダムの被害を引き起こし、その被害を未だに十分に解決することのできない世銀が、どうやってナムトゥン2を問題なく完成させられるというのだろうか(末尾の地元紙記事翻訳もご覧下さい)。

巨大ダムの被害やナムトゥン2への支持が得られないことが明らかになった今、世銀もADBも一刻も早くナムトゥン2から手を引くべきだ。かりにこのまま融資審査にでも進むようなことがあれば、プロジェクトの正当性によってではなく政治的な判断が下された、とのそしりを免れないだろう。そんなことになれば、両国際機関の説明責任能力は対外的に致命的なダメージを受ける。

(以下、ワークショップを報じたタイの英字紙の記事の翻訳です)

国境の向うの「兄弟姉妹」を案じる村民たち タイ『ネーション』紙2004年9月1日 Nantiya Tangwisutijit記者

これは話し合いだったのか?それとも仇敵同士の果し合いだったのか?世界銀行(世銀)が融資したパクムンダムをはじめとする東北タイのダム計画で影響を受けた村民たち十数人が会場に現れ、「ずさんな」移転計画を支えた世銀によって残された傷口を開いてみせた。

昨日(8月31日)世銀が開催したラオスのナムトゥン2ダムの「公開討論会」に姿を見せた村人たちは、招かれてもいないのにやって来たのはラオスの「兄弟姉妹」たちの身の上に同じ災禍がふりかかってほしくないからだ、と語った。【注参照】

ウボン・ラチャタニ県からやって来たSompong Viengchanさんによると、パクムンダムのせいで一家は離散し、子どもたちは家を出てタイ最南部のヤラ県ベトン郡で労働者として働かざるをえなくなっている。ダム建設後の魚類の減少で若者が村に残ることができなくなってしまった。

「ラオスの人たちは、ダムができればどういうことになるかまったく分かっていないと思う」とSompongさんは語った。「私はラオスの人たちにパクムンを見に来てもらって、私たちの体験を聞かせてあげたい。ラオスの人たちは兄弟姉妹のようなもの。私も民族上は半分ラオス人なんですから。」

世銀はダム建設にともなう過去の住民移転計画が失敗したことを認めつつも、今回のナムトゥン2ダムについてはうまくやれると自信をみせている。

「今回の住民移転計画には、これまで見たこともない多くの要素が盛り込まれています」と、世銀のChaohua Zhang社会部門担当は語った。「過去二・三十年を振りかえると、あまりうまくできてきませんでした。しかし今や事態は大きく変化しています」。

ナムトゥン2ダムの出力は1070メガワットで、うち995メガワットがタイに売却され、企業と結んだ25年契約の期間中に約18億米ドル(750億タイ・バーツ、2300億円)の収入をもたらし、これがラオスの貧困削減に活用される計画である。

ラオス政府産業手工業省のSomboune Manolom事務次官は、Sompongさんがナムトゥン2ダムの被影響住民に対して出したパクムンダムの現場への招待に応じた。

タイ北部環境保護ネットワークのChakapong Thanaworapolさんは、ラオスがタイから教訓を学び、貧困削減が巨大な成長神話であることを悟るべきだ、と語った。

「ダムを建設しさえすれば貧困が削減できる、と安易な夢を見てしまうのです」「そうでもなければ、タイだってとっくに貧困を脱却しているはずでしょう。タイには30基以上もダムがあるんですよ」と、Chakapongさんは述べた。

Sompongさんは、ラオスで環境破壊が起これば東北タイにも及ぶ、と付け加えた。両地域はメコン河で一衣帯水の関係にあるからだ。例えば、ナムトゥン2ダムの貯水池で森林を伐採すれば、メコン河の両岸で降水量が減少する可能性がある。

反ダム運動家として活躍するWanida Tantiwittapitakさんは、タイばかりでなく世界中で人々がダムの被害を受けており、世銀も違った開発の仕方を考える時期に来ている、と語った。

「これだけ失敗しておきながら、世銀が依然としてダムを有効な開発手段だと考えているとは信じがたいです」「世銀はダム建設以外にラオス経済を成長させる手段を考えられないのでしょうか」と、Wanidaさんは述べた。

【訳者注】:記事では今回の世銀主催の会合を「公開討論会」(publicconsultation forum)と記述しているが、主催者側は「技術ワークショップ」(technical workshop)として、「公開討論会」や「公聴会」とは呼んでいない。多くのNGOは今回の会合が公聴会だとは考えていない。

ナムトゥン2ダムとは・・・

ラオスのナムトゥン2ダム計画は、日本が第2の出資国となっている世界銀行が支援をするかどうかで、国際的に最も論議を呼んでいる大規模インフラ事業です。約6000人の立ち退き住民を含め10万人を超える農村住民に被害をもたらし、アジア象など貴重な野生動物の生息地を破壊します。総事業費は、ラオスのGDPの70パーセントに相当する12億ドルで、そのうち70パーセント以上を海外からの借金でまかなうことになります。計画の実現は資金が集まるかどうかにかかっており、そのカギを握っているのが世界銀行の支援です。もし世界銀行が協力を約束すれば、それが「お墨付き」となって民間銀行団の金利の高い融資が、重債務貧困国のラオスに流れ込むでしょう。経済的にもリスクが高いプロジェクトなのです。

キャンペーンの呼びかけ

ナムトゥン2ダムが地域住民の生活やそれを支える生態系に及ぼす影響に懸念を抱いてきた私たちメコン・ウォッチは、世界銀行とADBに巨額の資金を提供している日本の市民社会に向けて、この事業の概要や懸念される問題について情報を共有し、公的国際金融機関の融資を阻止するべく、このキャンペーンを始めました。是非、世界銀行、ADB、財務省国際局に対してナムトゥン2ダムへの資金協力を行わないよう働きかけにご協力下さい。

キャンペーンのサイト

http://www.mekongwatch.org/issues/namthuen2.html#SEC1

現在、以下のペーパーが日本語で読めます。

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(特活)メコン・ウォッチ 松本・東
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