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ラオスにとっての危険なビジネス:ナムトゥン2水力発電プロジェクト

国際河川ネットワーク(IRN)

2004年9月

悪影響をもたらすダム事業を長年にわたって支援してきた世界銀行は、東南アジアのラオスにおいて物議をかもしている、ナムトゥン2水力発電プロジェクトの支援に向けた手筈を整えている。

13億ドルのダムプロジェクトは、隣国のタイに電力を輸出することによって、財政難のラオス政府に利益をもたらそうというものである。ナムトゥン2ダムは「貧困を削減する」と謳われているにも関わらず、このプロジェクトは何千人もの人々を貧しくし、ラオス政府にさらなる借金を背負わせ、多くの人々の生活の糧となっている熱帯の川の生態系を荒廃させるだろう。

このブリーフィング・ペーパーでは、ナムトゥン2ダムについての主な懸念と、その推進者たちの主張への反論を概説する。以下にそれらの懸念の要約を挙げる。

ナムトゥン2ダムの社会・環境・経済影響

ナムトゥン2水力発電プロジェクトは、ラオスの人々に莫大な社会・環境・経済上の脅威をもたらす。ラオス国内では、目に見える形では反対の声は挙がらない。政府の開発計画の利益に異議を唱えるような自由な報道機関も議論の場もないからである。そのため、海外の環境団体や人権団体は、このプロジェクトが提案された当初からモニタリングをしてきた。海外の団体は今、世界銀行がナムトゥン2ダムへの支援から撤退することを要求している。主な懸念を以下に概説する。

強制移転・生計手段の破壊

もともとナカイ高原に住んでいた約6,200人の人々がナムトゥン2ダムとその貯水池を作るために移転させられる。独立調査によれば、その他に120,000〜150,000人がセバンファイ川に依存して生計を立てている。彼らは漁業被害、川岸の畑の水没、その他のプロジェクトの影響に苦しむことになるだろう。彼らは適切なコンサルテーションを受けないまま、プロジェクトに賛成させられた。

環境影響

ナムトゥン2ダムは生物多様性に重大な影響を与える。プロジェクト地は、東南アジアの大陸部に残る最大の熱帯雨林の1つとそこに隣接する地域にある。450平方キロメートルの貯水池は、60種の鳥類と哺乳類の生息地を水没させ、移動ルートを乱す。この地域は、ハジロモリガモ、ラオスで残存する最後の野生象の個体群のうちの一つなど、絶滅が危惧される希少な動植物が非常に多く生息している。

プロジェクトはナムトゥン川とセバンファイ川の漁業に悪影響を与える。ナムトゥン川は、少なくとも16種類の固有種を含む80種類以上の魚の生息地となっている。プロジェクトはナムトゥン川の下流の流水量を著しく減少させ、セバンファイ川の水位を増加させる。このことは、魚の生息地を破壊し、回遊のパターンを妨害し、魚の在来種を絶滅に追い込むだろう。

タイで必要とされない電力

ラオスはすでに国内で必要以上の電力を発電している。ナムトゥン2ダムからの電力はもっぱらタイに輸出される。しかし、タイには現在のところ発電能力には余剰があり、将来の電力需要に対応するための方策もいろいろある。

1998年にタイの国家エネルギー政策局(NEPO)が行った調査では、バイオマス火力発電所で3,000MWの発電を行うことが経済的にも実行可能である。タイのエネルギー省のデータによると、天然ガスおよび再生可能エネルギーを使った小規模発電所により、4,000MW、すなわちナムトゥン2ダムによる計画発電量の4倍以上にあたる電力を生み出せるだろうとのことだ。しかし、これらのプロジェクトはタイの最新の電力開発計画から除外されている。

お粗末な実績、限られた政府の能力

今日までにラオスで作られた水力発電プロジェクトは、生計手段の破壊、漁業の破壊、自然破壊といった遺物を残してきた。ナムトゥン2ダムの50キロメートル下流に位置するトゥンヒンブン水力発電プロジェクトによって、25,000人もの人々が大ナマズの減少、畑の水没、飲料水の水源の喪失に苦しまされてきた。影響緩和策や補償策がとられているが、村人は損失を回復し、自給自足を達成することができずにいる。

ラオス南部のホアイホーダム建設のために強制的に立ち退かされた住民の場合、状況はもっとひどい。2,000人が過去5年間、絶望的な状況で移転地に生活している。そこには、耕作に適した十分な土地がなく、新鮮な飲み水や食糧となる米も足りていない。ラオス政府からの支援の約束は実現されていない。アジア開発銀行でさえ、2003年11月のプロジェクト文書の中で、「大規模で複雑な水力発電プロジェクトを実施するための政府の能力については、まだ大きな懸念が残されている」と認めている。

世界ダム委員会(WCD)のガイドライン違反

世界銀行は、2000年の11月に出された世界ダム委員会の報告書のなかで、大規模なダムに融資し、ダム建設を促進していることについて、強い批判を受けた。世界ダム委員会は、過去の大規模なダムの実績を評価するために政府、産業界、市民社会を集め、ダムやエネルギー、水資源開発についての意思決定に関する提言を出した。

これらの提言では、ダムによって影響を受けるコミュニティの基本的人権を認めた上で開発を行うための新しいアプローチが求められている。世界銀行は新しいダムプロジェクトを評価するときには、これらのガイドラインを取り入れると言っている。しかし、国際河川ネットワーク(IRN)が行った分析では、ナムトゥン2ダムは、市民の支持や代替案の調査など、世界ダム委員会の7つの戦略的優先事項のうち6つに違反している。

欺瞞に満ちた約束

世界銀行やナムトゥン2電力会社(NTPC)のようなナムトゥン2ダムの推進者は、ダム建設によって環境が保護され、ラオスの貧困が削減されると主張している。しかし、このプロジェクトはどちらもうまくいかないだろうという批判が挙がっている。ここにプロジェクトの推進者の主な主張に対する反論を挙げる。

主張:ダムは、生計手段がほとんどなく非常に貧しい状況で生活するナカイ高原の住民を移住させるために、建設されるべきである。

反論:貯水予定地に住んでいる人々は、ナムトゥン2ダムの建設を見越して行われたナカイ高原の無秩序な伐採の結果、生活や健康に深刻な影響を受けて苦しんでいる。彼らの生計を元に戻すための取り組みは、もっぱらダム建設に結び付けられてきた。ナカイ高原の人々は、プロジェクトを見越した開発の結果として受けた損失に対する補償を受ける権利がある。しかし、ナカイ高原の人々に支払われるべき補償には、数万人の人々の生活に甚大な影響を与える巨大なダムは必要ではない。

主張:ナムトゥン2ダムは「貧困削減」プロジェクトであり、売電による収入はラオスの貧困削減に使われる。

反論:ナムトゥン2ダムの収益が「貧困削減」に使われるという保証はない。世界銀行は、ラオスの市民が適切に生計手段の喪失を補償されるようにし、ラオス政府とNTPCに貧困削減や環境保全の約束を守らせるような強制力は持っていない。ラオスにおける過去の水力発電プロジェクトの経験を見れば、ナムトゥン2ダムは貧困を削減するのではなく、何千人ものラオス人をより貧しくすると考えられる。

主張:ダムは生態学的に重要な流域を保全するために建設されるべきである。NTPCは30年間にわたって、毎年ラオス政府に100万ドルを流域管理プログラムのために提供すると約束している。

反論:貯水池ができることで流域へのアクセスが向上し、絶滅寸前の種の狩猟と取引の増加につながってしまうことは、プロジェクト開発者も認めている。5年の建設期間の間に少なくとも2万人の建設労働者と、その家族が流域に移住することで、保護区に狩猟・密猟のさらなる波が押し寄せてくるであろう。プロジェクトは流域を守るどころか、破壊してしまうかもしれない。

さらに、ナムトゥン2ダムは、ナムトゥン川とセバンファイ川の生態系に、ただ単に貯水池を保護しただけでは避けられないほどの広範囲な影響を与える。プロジェクトは動物の生息地を沈め、何種類かの絶滅の危機にある哺乳類の伝統的な移動ルートを切断する。漁業への影響はダムの下流と上流、そしてセバンファイ川沿いでも起こるだろう。ナムトゥン2ダムは、緩和できないほどの全面的で破壊的な環境影響を与える。

主張:ナムトゥン2ダムは、1997年に世界銀行が推進した住民参加プログラムを通じて、ラオスの市民の賛同を得た。

反論:1990年代半ばにラオスの指導者がナムトゥン2ダムを進める政治的な決定を行ってから、全ての議論は沈静化させられた。多くの人々が、政府の報復を恐れて、懸念を表明することができなくなった。ラオスには独立したメディアや機関や表現の自由がないので、プロジェクトについて公開の調査が行われることはない。さらに、ラオスの市民は、プロジェクトがもたらすリスクと利益についての正確でバランスの取れた情報は与えられていない。この状況では、1990年半ばから行われた住民参加型のワークショップで、正当なかたちでのコンサルテーションや参加が行われたと見なすことはできない。

世界銀行にナムトゥン2ダムからの撤退を求めよう

ナムトゥン2ダムは、社会的にも環境的にも大きな被害を引き起こす。このプロジェクトは貧困を削減し、生物多様性を守るのではなく、何万人ものラオスの人々を貧しくする。ラオス政府の借金を増やし、タイの納税者に不必要で競争力の無い電力の購入を押し付ける。

世界銀行は、ナムトゥン2ダムを拒否すべきであるし、流域保全とナカイ高原に生活する6,200人の人々が適切な生活手段を持てるような代替案を検討すべきである。

このページは、International Rivers NetworkRiskey Business for Laos: The Nam Theun 2 Hydropower Project(PDFファイル)を翻訳したものです。

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