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怒江(サルウィン川上流)ダム開発>暫定的に中止

メコン河開発メールニュース 2004年11月15日

四川省のダム補償をめぐる被害農民の大規模な抗議行動などが報道されていますが、中国における大規模開発は様々な面でひとつの岐路に立たされています。

少し古いニュースですが、メコン河と並ぶ東南アジアの国際河川であるサルウィン川上流(中国名は怒江)のダム開発が暫定的に中止になったというニュースを、イギリスのガーディアン紙が報じました。ただし、最近になって、一部のダム計画が再開されたという報道もあり、今後も注意深くフォローする必要があります。

以下、メコン・ウォッチの大澤香織の解説と翻訳です。


昨年8月、中国政府はメコン河と並ぶ雲南省の国際河川で、ビルマ、タイ北部に流れ込む怒江(サルウィン川上流)上における13ものダム建設計画を発表しました。しかし、その直後から今年にかけての国内からの激しい抗議が全国的な関心を集め、ついに今年2月、温家宝首相によってダム計画の暫定的中止が命じられました。この抗議活動には、北京の緑家園というNGO代表で中央人民ラジオ局の女性記者でもある汪永晨(ワンヨンチェン)氏、雲南省の研究者何大明(ヘダミン)氏、同じく雲南省のNGO代表于暁剛(ユシャオガン)氏、そして各地の多くのジャーナリストらが大きな役割を果たしました。中国国内のメディアは環境保護や市民活動の歴史上に足跡を残す大きな成果だと報じています。その一方、この決定はあくまで暫定的なものであり、今後の動きが注目されます。

中国首相、東洋のグランドキャニオンを一時的に救済
生態河川のダム計画中止される

(英国『ガーディアン』紙、2004年4月10日)

原文: Chinese premier reprieves Grand Canyon of the Orient

中国の温家宝(ウェンヂアバオ)首相が中国で最も壮大な渓谷の巨大ダム計画を中止したということが、昨日報じられた。

このニュースは、世界最速の経済成長を誇る発展途上国でもその爆発的経済成長によってもたらされる環境破壊を考慮して、立ち止まることがあるのだという希望をもたらす。全く開発の行われていない河川、怒江――中国で全くダムのない二つの河川のうちのひとつ――は北京の政策には具体的な変化がほとんど見られないことを考えれば一時的なものに過ぎないのかも知れない。しかし、たとえほんの少しの躊躇いであったとしても、それはこれまで政府に対し新たなエネルギー源が自然に与える影響について考慮するよう働きかけてきた環境保護活動家らを勇気づけるものであった。

中国のメディアは、温首相による怒江上の複数のダム計画見直し命令を、社会環境に関する懸念として引用し報じている。怒江はメコン河とならび東南アジアで最も大きな二つの河川のうちの一つである。

チベットのヒマラヤ山脈に源流を持ち、怒江は雲南省―民族と生物多様性に恵まれた地域―を1,750マイル(訳者注:約2800キロメートル)流れ、ビルマとタイ北部に入ってからはサルウィン川として知られている。

この大河は人里離れた地域に位置し、国連世界遺産の中心として「東洋のグランド・キャニオン」と呼ばれてきた。雪ヒョウや雲南しし鼻アンテロープ、野生の象、牛など80以上もの絶滅の危機に瀕した生物の宝庫である。

昨年、北京はエネルギー不足を満たすため怒江の開発を行うことを発表した。これまでで最大の中国における水力発電事業として、雲南省の六庫(リウク)では今年、建設会社が13のダムのうちの皮切りとして2130キロワットの電力を生み出すダム建設作業を開始するところであった。

この20年にもおよぶプロジェクトは、中国の華電、中国の五大公共事業者によって計画が行われていた。水位の上昇によって、5万人もの?(イ)族、リス族、苗(ミャオ)族など、何世紀にもわたって渓谷での変わらぬ暮らしをしてきた少数民族を移転させる必要があると見積もられてきた。

昨年から操業を開始した揚子江(長江)上の三峡ダムほどは強い国際的抗議を受けなかったものの、怒江の計画は国内での激しい抵抗にあった。昨年、国家環境保護局は計画に対する率直な反対を表明し、怒江を開発されていない河川のままに残すよう主張した。

下流のコミュニティ、特にタイなども計画を批判してきている。昨年、80もの環境保護団体が連合して北京にこの計画を白紙に戻すよう求めて抗議文を送った。

驚いたことに、一年前に役職に就き、人民主義者で「人民第一」の政策をとる温首相は聞く耳を持っているように見える。「我々は社会的な懸念と、環境面での異なる意見が存在するような主要水力発電プロジェクトに対しては、慎重に考慮し、科学的な決定を下さなければならない。」、彼は香港の政府系新聞、タ・クン報の中で述べている。

しかし、この延期がどれくらい続くのかに関しては全く不透明である。大気汚染や水質汚濁など中国の成長に伴う恐ろしい環境影響はますます明らかになってきているが、国家の計画者が急成長中毒をやめるのは今後も難しいであろう。

温首相は環境社会へのマイナス影響を最小化したバランスのとれた開発を求めている。しかし、政府は依然として中国の巨大かつ一層短気になってきている労働力に仕事を提供するためには、少なくとも年間7%の経済成長を達成しなければ

ならないと信じている。結果として、昨年の電力需要15%、1兆8000億kWhの急増に繋がった。

三峡ダムでの発電開始と増加する石油輸入にも係らず、中国はこうした需要を満たすことが出来ない。昨年、多くの地方では13億人のうちの富かな層がエアコンのスイッチを入れたために停電に苦しめられた。怒江の計画停止も長くは続かないだろう。

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