ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > 【ナムトゥン2ダム・キャンペーン】第8号 海外ゲストが来日、スピーキング・ツアーを開催
世界最大の公的金融機関の世界銀行が支援を検討しているラオスのナムトゥン2ダム計画。経済、社会、環境面で多くの問題を抱えながら、世界銀行は早ければ3月中にも支援するかどうかの理事会を開きます。出資額が多い日本は、理事会での結果に大きな影響力を持っています。私はこの計画を13年間モニターしてきましたが、ラオスのGDPの7割近い巨大プロジェクトを推し進めることは、リスクが大き過ぎ、貧困削減につながるとは到底思えません。
以下は、今月半ばに、東京、京都、広島、それに国会で行った連続セミナー・意見交換会の報告です。
ラオスの人々の生計手段を奪い、環境破壊を進めるプロジェクトに、世界銀行やアジア開発銀行の資金が使われないよう、皆さんの力を貸してください!
世界銀行やアジア開発銀行が支援を検討しているラオスのナムトゥン2ダムの問題を伝えるため、日本国際ボランティアセンター(JVC)のラオス現地代表の名村隆行さん、タイの環境NGO・TERRAの共同代表でタイの97年憲法で設置された国家経済社会諮問委員会のウィトゥーン・パームポンサチャロンさん、アメリカのNGO・国際河川ネットワーク(IRN)の東南アジア担当のアビバ・イムホフさんが来日し、与野党の国会議員との意見交換会、東京・京都・広島で連続セミナーに出席した。名村さんが現地の活動の中で直接耳にしてきたナカイの人々の声、アビバさんがこのプロジェクトの環境社会面の問題、ウィトゥーンさんがタイの電力需要から見た経済面の問題とナカイ高原のアジア象への影響を訴えた。
2月9日に民主党の国会議員と海外ゲストとの意見交換会が参議院議員会館で、翌10日には自民党・公明党の国会議員主催のナムトゥン2ダム・セミナーが衆議院議員会館でそれぞれ開催された。
9日の民主党議員との意見交換会で、岡崎トミ子参議院議員は、同計画は経済的なリスクも環境社会影響も大きいことから、ラオスの人々の利益につながるのかには疑問があるとし、「このようなやり方のダム建設はもう終わりにしなければならない」と、計画推進への強い懸念を表明した。
10日の自民党・公明党議員主催のセミナーには、日本の財務省、世界銀行、アジア開発銀行も出席し、NGOからの発表後それぞれコメントした。これを受け、自民党の河野太郎衆議院議員は、日本政府は、同計画の環境社会配慮を世界銀行に任せるだけではなく、出資国としての日本政府の役割を検討すべきだと発言した。また、公明党の加藤修一参議院議員からも、同事業の準備のプロセスを見ると、国際機関が満たすべき環境社会配慮の基準からは程遠いという懸念の声が挙げられた。
開会中の通常国会に日本政府が世界銀行のうち貧困国向けの無利子融資を行うIDA(国際開発協会)へ約2800億円を増資するのに必要な法案が提出されていることからも、ナムトゥン2ダム計画に関心を持つ国会議員が多かった。ナムトゥン2ダムに世界銀行が融資することになれば、このIDAの資金使われることになる。ナムトゥン2ダムのように様々な問題を抱えたプロジェクトが推進されるようでは、IDAに2800億円もの日本の資金を出資することは疑問視されるだろう。
意見交換会やセミナーに参加した国会議員は、ナムトゥン2ダム計画の問題を引き続き追い、世界銀行や日本の財務省に懸念の声を伝えていくとしている。
2月11日に東京で開催されたシンポジウムには、100人を超える聴衆が集まった。
翌日、京都では、アジア・太平洋各国の環境や平和を重視する政治家・市民らが集まった「アジア太平洋みどりの京都会議」の中で、メコン・ウォッチもメンバーとなっている東・東南アジア河川ウォッチ(RWESA)日本が、日本の公的資金を使った国内外のダム問題を考える分科会を主催した。そこでは、アビバさんとメコン・ウォッチの松本悟がナムトゥン2ダムについての講演を行った。それに続いて、ODA改革ネットワーク関西とSAGEが共催したセミナーが開かれ、30人程度の参加者が集まった。翌13日には、広島でグローバリゼーションを問う広島ネットワークの主催でセミナーが開催され、20人の参加者があり、セミナーの様子は毎日新聞(広島版)に掲載された。
東京・京都・広島で開催された、ラオスという東南アジアの一国の中の一つのプロジェクトについてのセミナーに、延べ150名(アジア太平洋みどりの京都会議の分科会を含めれば240名を超える)の人々が集まったのは、実施企業や世界銀行が掲げる「貧困削減」という看板と現実の環境社会影響のギャップの大きさ、日本が第二の出資国である世界銀行や、アメリカと並んで最大の出資国であるアジア開発銀行による大規模インフラ事業支援の是非について、関心を持つ市民が多かったということではないだろうか。 どの会場でもパネリストと参加者との間で、このプロジェクトの問題点とNGOの役割、ラオスの開発のあり方をめぐって活発な議論が交わされた。また、京都と広島のセミナーの参加者からは、セミナー後に、谷垣財務大臣に向けて、ナムトゥン2ダムを世界銀行やアジア開発銀行が支援することの懸念を伝える手紙を書こうという声が挙がり、具体的なアクションにつながっている。
(※東京で開催されたシンポジウムの報告は、近日中にキャンペーンのウェブサイトに掲載予定です。)
ラオスのナムトゥン2ダム計画は、日本が第2の出資国となっている世界銀行が支援をするかどうかで、国際的に最も論議を呼んでいる大規模インフラ事業です。約6000人の立ち退き住民を含め10万人を超える農村住民に被害をもたらし、アジア象など貴重な野生動物の生息地を破壊します。総事業費は、ラオスのGDPの70パーセントに相当する12億ドルで、そのうち70パーセント以上を海外からの借金でまかなうことになります。計画の実現は資金が集まるかどうかにかかっており、そのカギを握っているのが世界銀行の支援です。もし世界銀行が協力を約束すれば、それが「お墨付き」となって民間銀行団の金利の高い融資が、重債務貧困国のラオスに流れ込むでしょう。経済的にもリスクが高いプロジェクトなのです。
ナムトゥン2ダムが地域住民の生活やそれを支える生態系に及ぼす影響に懸念を抱いてきた私たちメコン・ウォッチは、世界銀行とADBに巨額の資金を提供している日本の市民社会に向けて、この事業の概要や懸念される問題について情報を共有し、公的国際金融機関の融資を阻止するべく、このキャンペーンを始めました。是非、世界銀行、ADB、財務省国際局に対してナムトゥン2ダムへの資金協力を行わないよう働きかけにご協力下さい。
http://www.mekongwatch.org/env/laos/nt2/index.html
現在、以下のペーパーが日本語で読めます。
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