メコン・ウォッチのメコン河開発メールニュースでも何度かお知らせしてきまし た
(http://www.mekongwatch.org/resource/news%20index.html)カンボジアの 森林セクターにおける世界銀行の関与をめぐって大きな動きがありました。 自然・社会環境面での世界銀行の政策遵守を問う独立委員会(インスペクション パネル)に対して、現地住民が政策違反の申し立てを行い、このほど資格審査を 通過して本格調査に入りました。 90年代における国際援助機関の環境社会配慮政策改善の旗頭だった世界銀行のイ ンスペクションパネルには、過去12年間で30件ほどの申し立てが行われています が、メコン河流域国ではこれが初めてです。
以下、この問題の監視に長く関わっているイギリスのNGOグローバル・ウットネス のプレスリリースをメコン・ウォッチの後藤歩が翻訳しました。
グローバル・ウィットネス プレスリリース
2005年5月4日
カンボジアにおける世界銀行の「森林伐採権管理・規制パイロットプロジェクト」 (FCMCPP)を、インスペクションパネルが調査することを許可する、という世界 銀行理事会の最近の決断を、グローバル・ウィットネス(訳者注:森林問題を中心 に活動するイギリスを拠点とする国際NGO)は喜んで歓迎する。
世界銀行は5年間にわたって、カンボジアを経済的、社会的、そして環境面から
明らかに弱らせた伐採権制度を推進するためにFCMCPPを使った。完全な証拠があ
るにも関わらず、世界銀行は、カンボジアの森林を荒廃させた暴力団的な伐採シ
ンジケートは改革できる、という考えにしがみついていた。
2004年には、国際援助機関とカンボジア政府の委託を受けて行われた森林セクター
の独立レビューが、この伐採権システムは中止されるべきだとの結論を出してい
る。しかし、その2ヶ月後にFCMCPPは、長年にわたり違法伐採や契約違反を行っ
てきた6つの企業の森林管理計画を認めるよう、カンボジア政府へ忠言した。
これらの企業のせいで苦しめられた経験をもつカンボジアの住民グループは、今 年の2月、世界銀行のインスペクションパネルへ、FCMCPPに対する異議申し立て を行った。そして、インスペクションパネルは3月、世界銀行の理事へFCMCPPの 調査を行うことを勧めた。
「インスペクションパネルのプロセスは、世界銀行が、カンボジアにおける5年
間の失敗について説明する機会を提供する」、とグローバル・ウィットネスのサイ
モン・テイラーは言う。「世界銀行は、最低でも持続的な森林管理を下手に模倣
している企業への支援を止めるべきだ。さらに、世界銀行は、この調査を紛争後
の国々における森林管理アプローチの根本的な見直しのベースとして使うべきだ」。
カンボジアにおけるインスペクションパネルの調査は、現在国際援助コミュニティ
が、特にコンゴ民主共和国など他の紛争後の国々で直面している課題を考慮すれ
ば、いっそう妥当であるといえる。コンゴ民主共和国には、世界で2番目に大き
い熱帯雨林があり、全人口5800万人のうち4000万人が、生きるためにこの熱帯雨
林に頼っている。コンゴ民主共和国での世界銀行の活動の最初の段階からは、カ
ンボジアでの教訓が活かされていないことが分かる。
「木材からの収入についての世界銀行の予測は野心的すぎる。世界銀行は商業伐
採がコンゴ民主共和国における森林の最適な使用方法だということを基本的な仮
定としている。また、世界銀行は、政策とコミットメントは政治的意志とグッド
ガバナンスによって調和され、これは内戦から立ち直ったばかりの多くの国々に
当てはまる、という非現実的な期待を持っている。これはまさしくカンボジアに
おいて、世界銀行がとったアプローチである。しかし、コミットメントと必要な
資源、そして何よりオリジナルな考えがあれば、コンゴ民主共和国の状況を救う
のに遅すぎるということはない」、とグローバル・ウィットネスのパトリック・ア
リーは述べた。
Simon Taylor (tel. 44 (0)20 7272 6731; 44 (0)7957 142 121, staylor@globalwitness.org);
Mike Davis (tel. 855 (0)12 527 523, mdavis@globalwitness.org).
●世界銀行の「森林伐採権管理・規制パイロットプロジェクト」は2000年に始ま
り、Learning and Innovation Loan (LIL)により500万ドルの融資を受けた。
●インスペクションパネルには3人のメンバーがいる。世界銀行によって融資を
受けたプロジェクトにより自分たち、もしくは自分たちの関心事が直接被害を受
けた・受ける可能性があると信じる市民へ、独立したフォーラムを提供するとい
う目的で1993年につくられた。詳細は下記を参照のこと: http://web.worldbank.org/WBSITE/EXTERNAL/EXTINSPECTIONPANEL/0,,menuPK:64132057
~pagePK:64130364~piPK:64132056~theSitePK:380794,00.html.
●FCMCPPに関するインスペクションの要請は、2005年の2月に申し立て者が自分
たちの代表として指名したカンボジアNGOフォーラムにより、インスペクション
パネルへ提出された。この要請文は、世界銀行事務局からの返答およびインスペ
クションパネルによる要請への評価と勧告とともに、インスペクションパネルの
ウェブサイトからダウンロードできる:
●FCMCPPの詳細について書かれたグローバル・ウィットネスによるブリーフィング
文書は、インスペクションを要請する文書の一部として、2005年2月にインスペ
クションパネルへ提出された。この文書は下記からダウンロード可能: http://www.globalwitness.org/campaigns/forests/cambodia/briefing.php.
●カンボジアの森林セクターにおける世界銀行の取り組みの短いまとめは、2005
年4月にいくつかのNGOが合同で出したレポートの中の、グローバル・ウィットネスの原稿'Broken bomises'で見ることができる:
http://www.rainforestfoundationuk.org/s-Broken%20bomises%20-%20The%20World%20Bank%20and%20Forests.
●世界銀行総裁(当時)のジェームズ・ウォルフェンソンは、2005年2月にプノ
ンペンを訪れた際、記者に「我々が失敗したかどうか、(世界銀行の森林セクター
への活動について)他の見方をしている」と述べ、カンボジアにおける世界銀行
のアプローチの再評価に賛同する立場を示した。