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ベトナム・ソンラーダム>10万人の移転急ぐ 

完成すれば東南アジア最大となるベトナムのソンラーダム事業は、10万人の住民 移転や広範な自然破壊をもたらすため、海外からの援助資金を受けることができ ず、ベトナム政府は自前の資金で準備を進めています。 以下、最近のタイ字新聞の報道について、メコン・ウォッチ(バンコク)の土井 利幸の報告と抄訳です。


規模の縮小で移転住民の数が減ったとも報じられていたベトナム北部のソンラー ダムですが、タイの経済紙『プージャッカーン』の最近の記事によりますと依然 として10万人規模の住民移転が実施されるようです。しかもベトナム政府は建設 工事を急いでいる様子で、大規模住民移転を伴うこれまでの数多くの開発事業の 例からみても、住民が立退き後にきちんと生活を再建できるとは考えられません。 以下は、『プージャッカーン』紙の記事の抄訳です。

べトナム政府、10万人規模の移転を急ぐ 北部の巨大ダムによる水没をさけて

タイ『プージャッカーン』紙2005年6月9日(抄訳、原文タイ語)

ベトナム国営通信社(VNA)/日刊プージャッカーン ベトナム当局はソンラーダ ムの貯水池建設予定地で10万人にのぼる大規模な住民移転を実施中である。同ダ ムはベトナム最大の水力発電所で、環境保護団体がベトナム北部の貴重な生態系 と生物多様性への影響に懸念を示す中で今年中に建設が開始されようとしている。

建設によって12万人以上もの住民が影響を受けるソンラーダムは、首都ハノイか ら135キロの地点にあるホアビン省のホアビンダムに次いで紅河にかかる2番目の 巨大ダムで、ソンラー省ムオンラー郡に位置する。ベトナム政府のグエン・タン ・ズン第一副首相は担当部局に住民の移転を早急に実施するよう指示したが、こ れは先週ファン・バイ・カイ首相が建設予定地で土木作業が開始されたと発言し たことを受けたものである。

ベトナム当局は農業農村開発省を担当部局としてソンラー省6郡の多数の場所に 影響住民が生活を再建するための移転地を建設した。移転は段階的に行われ、移 転住民の数は7万9000人から最終的には9万1000人ほどになる。ダム本体と、2万 ヘクタール(約12万ライ=200平方キロ)【訳注1】が水没するダム北側の貯水池 が建設される周辺から移転する影響住民は1万6000〜1万8000世帯にのぼり、その 大部分は多くの部族に分かれた少数民族である。

ソンラー省人民委員会のハ・フン議長は、政府が411世帯の移転住民を受容れる のに十分な土地を準備し、すでにタイ系民族83世帯が移転して生活基盤を築いた と述べた。各世帯には住居建設用として2ライ(約3200平方メートル)の土地が 支給される。またハ・フン委員長によれば、ベトナム当局が各世帯用に住居を建 設しているが、この住居は少数民族の生活習慣に適ったもので、各民族が独自性 を保てるようになっている。さらに公共サービスを十分に活用できるように移転 地につながる道路も建設しており、これらの事業に総額約260万米ドル(約2億 8000万円)の予算をあてている。住民移転は2002年3月から開始されているが、 食料補助として1人当り月30キロの白米と、自給のために米・サトウキビ・たけ のこを植える土地500平方メートルも支給することになっている。ダム建設地の 北側に住むライチャウ省の村民も影響を受けるが、同省当局も1200〜2500世帯の 住民を受容れる移転地を準備している。

ソンラーダムはダム本体・貯水池・発電能力のいずれをとってもホアビンダムを 上回る規模で、公式の発電能力は1970〜2400メガワット(年間75億5000万〜92億 キロワット時)にのぼる。建設費用は21〜25億米ドル(約2300〜2700億円)であ る。生態系への影響緩和を監視し融資リスクを保証するために世界銀行が参画し ているラオス中部のナムトゥン2ダムとは異なり、ベトナム政府はソンラーダム 建設費用の約71%を国内各所で調達する。

森林生物保護団体はソンラーダムの建設に憂慮を表明し、森林や森林生物におよ ぼす多大な影響をベトナム当局が十分に調査していないと主張している。そうし た懸念をよそに今年2005年に工事が着工され、2012年初頭にタービンを取り付け、 2015年中に完成の予定である。ソンラーダムは一般の水力発電所同様に多目的ダ ムとして設計されており、乾季には貯水池の水を農業用水として利用し、雨季に は下流での洪水を制御する。特に水深100メートルしかないホアビンダムと比べ ると、ソンラーダムの貯水池は水深205〜215メートルもある【訳注2】。現在ベ トナム最大のホアビンダムの発電能力は1920メガワットで、第2次世界大戦後に 旧ソビエト連邦の援助で建設された。ベトナム政府も、長期におよんだベトナム 戦争のおかげで人間の手が入ることを免れて(ソンラーダム建設地周辺で)森林 生物の多様性が保存されている点は認めている。

【訳注1】水没面積について、原文には「20万ヘクタール/120万ライ」(約2000 平方キロ)とあるがこれは明らかに間違い。

【訳注2】ダムの「水深」は堤体の高さを示す。 ソンラーダム建設計画の経緯についてはメコン河開発メールサービスのこれまで の配信をご覧下さい。

・01年3月25日 ベトナム・ソンラーダム>3600MW案を党に提出 http://www.mekongwatch.org/resource/news/20010325_01.html

・01年6月14日 ベトナム・ソンラーダム>政治局が承認 http://www.mekongwatch.org/resource/news/20010614_01.html

・01年10月14日 ベトナム・ソンラーダム>住民移転に早くも問題 http://www.mekongwatch.org/resource/news/20011014_01.html

・02年1月23日 ベトナム・ソンラーダム>ロシアが関心 http://www.mekongwatch.org/resource/news/20020123_01.htm

・02年11月13日 ベトナム・ソンラーダム>2400MW案で閣議承認 http://www.mekongwatch.org/resource/news/20021113_01.html

・03年3月14日 ベトナム・ソンラーダム>9万人立ち退きの試行 http://www.mekongwatch.org/resource/news/20030314_01.html

・03年5月29日 ベトナム・ソンラーダム>住民の立ち退き始まる http://www.mekongwatch.org/resource/news/20030529_01.html

・03年9月26日 ベトナム・ソンラーダム>建設準備進む http://www.mekongwatch.org/resource/news/20030926_01.html

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