過日お伝えした「開かぬパクムンダムの水門」のニュースのフォローアップです。 以下、メコン・ウォッチ(バンコク)の土井利幸による報告と翻訳記事です。
貧民フォーラム相談役のワニダーさんによると、パクムンダムの水門は先月(5月)31日に開放され、開放は9月末日までの4か月間だということです。
本来であれば開放が5月1日から8月31日に実施される予定だったわけですから、 ちょうど1か月分先送りになりました。
水門開放の決定が初めてなされた時から、4か月の限定開放という根本的な問題 とは別に、はたしてタイ発電公社(EGAT)が限定開放でさえきちんと守るのか、 という懸念がありましたが、その懸念が現実化した格好です。
5月1日はメコン河ームン川の魚の回遊ピーク時期に適ったものとして閣議で決定
された日程です(EGAT側は6月30日までに開放されれば閣議決定には反しないと
いう解釈のようですが)。
以下の翻訳記事では、水門開放決定について「2003年の閣議」に言及しています が、厳密には以下のような紆余曲折を経て現在に至っています。
▽02年9月24日:政府委員会が4か月水門開放を決定
▽03年1月14日:被害住民の抗議にもかかわらず政府閣議が委員会決定を追認し、 4か月(7月1日〜10月30日)開放を公式に発表
▽03年6月30日〜10月30日:水門開放 ▽04年6月8日:開放を魚の回遊のピーク時期にあわせるべきとの住民の要請にこ たえ、政府閣議が開放時期を5月1日〜8月31日に変更
▽04年6月21日:水門開放
▽05年5月31日:水門開放 パクムンダム問題の詳しい経緯については、以下のサイトをご覧下さい。 http://www.mekongwatch.org/env/thailand/pakmun/index.html
タイ『バンコク・ポスト』紙2005年6月1日(原文英語)
Piyaporn Wongruang記者 昨日(5月31日)
タイ発電公社(EGAT)は問題となっているパクムンダムの水 門を開放した。2003年の閣議で決定した条件から遅れること1か月である。
EGATによれば、開放を昨日まで延期したのは、今年になって周辺が異常渇水に見
舞われ公共の利用のために川に水をためておく必要があったからだ。
これは、メコン河から産卵に遡上する魚を通すために5月から8月までの4か月間
水門を開放するようEGATに指示した閣議決定にそむくものである。
開放が遅れたことで、被害住民は貧民連合から協力を受けバンコクで政府に対し
て抗議行動を行い、EGATが閣議決定を遵守するよう要請した。
発電能力136メガワットのパクムンダムは世界銀行の経済支援で1994年に完成し た。何万人もの住民が、ダムによって生計手段の漁業に壊滅的な打撃を受けたと 主張している。2003年に閣議で結論が出るまで10年にもおよぶ抗議運動が続いた。
住民代表のソンパーン・クンディーさんは、閣議決定をないがしろにされたこと で住民のEGATに対する信頼感が損なわれたと語った。