カンボジアでは、国道一号線など援助資金を使った幹線道路の改修事業で立ち退 かされる住民への補償問題が深刻ですが、その背景には土地問題があります。 「植林」という一見良いことのように思われる事業が、カンボジアでは激しい土 地紛争を引き起こしています。 以下はそれを報じたカンボジア・デイリー紙の記事をメコン・ウォッチの後藤歩 が翻訳したものです。
2005年6月28日 カンボジアデイリー Kuch Naren記者
100名以上のクメール人農業労働者が月曜日(6月27日)、州当局がプノン族とそ
の中国人雇用者Wuzhishan LS Group(訳注1)との間の土地紛争を解決すること
を求めて、モンドルキリ州の州都で抗議をおこなった。抗議者は一時職を失って
いる。
製紙企業はモンドルキリ州のThou Son知事に訴えるため、Sen Monoromまで労働 者を連れて行った、とO'Reang郡のNham Pheng郡長は述べた。
中国企業が伝統的なプノンの農地、精霊林、そして墓地に松の木を植えるのを阻
止するため、O'Reangの Dak DamコミューンとSen Monoromコミューンのプノン族
の住民が村まで続く道を遮断したため、労働者は先週ずっと仕事がなかった。
月曜日(6月27日)、Thou Son知事はSen Monoromコミューンのプノン族の住民と
会った。知事とSen Monoromのコミューン評議会議員でもあり抗議者のHor Phlil
氏によれば、今日、知事はDak Damの住民と会う予定になっている。
政府当局は、この論争が数日のうちに暴力化することを懸念している。今月(6 月)始め、警察は、Sen Monorom市にあるWuzhishan社の事務所前でデモを行って いた約800人のプノン族住民を退散させるため、ホースで水を浴びせ掛けた。
Dak Damの住民によれば、Wuzhishanの社員と数人の警察官は、もしも住民が Wuzhishan社のトラックが労働者と松の木の苗を運ぶために2つの群を移動する
ことを妨害し続ける場合、暴力に訴えるぞと脅したという。しかし、土曜日と日
曜日にインタビューに応じたプノン族の住民は、脅しはあるが決心は堅いと述べ
ている。
「あの人たちは閣僚評議会の命令に背いているし、私たちの権利を侵害していま
す」とSen Monoromコミューンの住民Krang Sarath氏(30)は語った。「私た
ちにはあの企業に活動を停止して、労働者をどこかへ異動してもらう必要があり
ます」。
Krang Sarath氏によれば、警察と軍警察が何度かコミューンを訪問しており、銃 を持ちながら脅してきたという。「あの人たちは銃弾と一緒にライフル銃を見せ て、自分たちの命が好きか土地が好きかと聞いてきました。私たちには権力も武 器もありません。私たちは自分たちに属するものを要求するために、法の下で行 動しているだけです。政府の役人は自分たちの安全が気になるため、マイノリティ の問題には対処しようとしません」。
月曜日(6月27日)、州警察のNhem Vanny副署長は、警察官が脅迫めいた方法を
使ったかどうかという質問に対して、コメントを避けた。Wuzhinshan社の社員も、
Sen Monorom市で日曜日にあった質問へのコメントを避けている。
閣僚評議会は、Wuzhinshan社に対して、1万ヘクタールの土地利用権に関する徹
底的な調査が行われるまで、業務を延期するよう命じた。Wuzhishan社は、土地
利用権を19万9999ヘクタールまで拡大するオプションを持っている。
しかし、O'Reang郡のNham Pheng郡長によれば、Wuzhishan社は1月にThou Son州 知事によって承認された新しい地図を出してきて、プノンペンからの命令を無視 した。地図によれば、O'Reang郡、Pech Chhreada郡、Sen Monorom郡の土地8万ヘ クタールに植林して良いことになっている。「これまで(州全体で)何ヘクター ルの土地が植林されたかは分かりませんが、非常に広い土地です」とNham Pheng 氏は月曜日(6月27日)に述べた。
日曜日(6月26日)、Dak Damの住民は、警察はデモを解散させるためにホースに
よる放水以上のことをした、と6月16日にSen Monorom市で起こった抗議について
述べた。
Dak Damコミューンに住む18歳のNgach Narin氏は、警察官が妊娠している彼女の
お腹を2回蹴ったと語った。「その日からお腹がずっと痛いですが、医者は胎児
は健康だと言ってくれました」。また、Sen Monoromコミューンに住むNang Touch氏(37歳)によれは、彼女の20歳の息子がWuzhishan社の事務所へ入ろうと
したとして、警察官に左耳を2回殴られたという。彼女は、おそらく警察官が Wuzhishan社から賄賂をもらっていると信じているという。そして、Kay
Neang 氏(30歳)は、気絶するまで水をかけられたため、州の病院で一夜を明かしたと
いう。
人権NGO、ADHOCのNy Chakriya氏は今月(6月)始め、抗議者を解散させるために ホースを使うのは違法ではないが、住民らは警察がホースを使いはじめるまで、 平和的に抗議をしていた、と述べている。
Hor Phlil氏によれば、住民らは引き続き道路を封鎖している。住民たちは、
Wuzhishan社の手に任せてしまえば、農地以上のものをめぐって闘わなくてはな
らなくなることを懸念している。Ngach Narin氏は言う。「いつの日かあの人た
ちは私たちを村から追い出し、そこに松の木を植えることも可能かもしれません」。
訳注1:漢字表記では「五指山集団有限公司」。海南省にある木材企業グループ
(翻訳:後藤歩/メコン・ウォッチ)