中国企業の存在感はメコン河流域国で高まっています。かつて戦火にまみれたタ イーカンボジア国境を、中国企業が中心になって経済産業拠点にしようという話 が持ち上がっています。 メコン・ウォッチの土井利幸(バンコク)の解説とタイ字新聞記事の抄訳です。
メコン・ウォッチでは2003年から今年にかけて、ADBの融資によりカンボジア・ トンレサップ湖に近代的港湾施設を建設するプロジェクトに対して問題を提起し てきました。 (この件については、04年11月03日配信メールニュース「トンレサップ港計画> ADBの暴挙」http://www.mekongwatch.org/resource/news/20041103_01.htmlをご 覧下さい)。
これは、港湾建設がもたらす環境影響などを懸念する湖周辺のNGOや住民の声に 呼応した活動でしたが、ADBの融資はカンボジア政府の都合により検討が中断さ れたままになっています。
しかし港湾建設自体が白紙撤回されたわけではありません。計画の背景には、港 湾設備の近代化によって漁業を輸出指向産業にしようとするシナリオがあるから でしょう。今後は、漁業の産業化といった視野からもトンレサップ湖開発や住民 への影響を監視していく必要を感じています。
この点に関して、タイの経済紙『プージャッカーン』に興味深い記事が掲載され ていましたので、二度にわたって抄訳をご紹介します。今回は、中国企業がカン ボジア企業と共同でカンボジア国内に経済産業区域を建設するといった内容の記 事です。建設予定地の一つポイペトは、上記の港湾建設予定地シェムリアップか ら国道6号線(後に国道5号線に合流)が開通しており、トンレサップ湖の魚が輸 出される際の中継基地になっています。ポイペトの開発がトンレサップ湖漁業の 産業化の引き要因となっていくのか、今後の動きが注目されます。
この記事はまた、メコン圏内で中国がカンボジアなどの国々に対して開発資金を 提供する側に立ちつつあることも示しています。
プージャッカーン紙
2005年1月27日
(抄訳=原文タイ語) (プノンペン発)
マカオのトラスト・コンストラクション・アンド・インベスト メント(Trust Construction & Investment)社とカンボジアのチアイ・チアイ ・インベストメント(Chhay Chhay Investment)社は共同でカンボジア−タイ国 境のポイペに経済産業区域を建設することで合意した。
先週、チアイ・チアイ・インベストメント社のオク・ニャー・オム・チアイ代表 取締役に対して経済産業区域建設の権限を付与する式典の席で、カンボジアのフ ンセン首相は「戦場だった地域を大きく発展させる好機になる」と語った。
チアイ・チアイ・インベストメント社は中国のトラスト・コンストラクション・ アンド・インベストメント社と共同で総額7000万米ドル(約75億円)を投資して、 この計画を実施する。かつて戦闘が勃発し、地雷や塹壕が残るバンティアイ・ミィ アンチェイ州のポイペが経済区域に様変わりするわけである。
オク・ニャー・オム・チアイ代表取締役によれば、今回の投資は、全長13キロの 道路(1100万米ドル=約11億8000万円)、面積51ライ(約8万2000平方メートル) の貿易区域(600万米ドル=約6億4000万円)、面積243ライ(約38万9000平方メー トル)の貿易区域(1300万米ドル=約14億円)、面積17.5ライ(約2万8000平方 メートル)の交易所(ドライ・ポート=1600万米ドル=約17億円)の四つの建設 計画に対するものである。
これに先立ちカンボジアAKP通信の報道によれば、中国の石油大手ペトロ・チャ イナ社がカンボジア国内で新たな経済区域の建設を計画している。2004年12月15 日、同建設計画に合意するためにプノンペンで開催された会合の席でフンセン首 相は中国最大の石油生産量を誇るペトロ・チャイナ社の代表と会見し、「今のカ ンボジアは国の発展と貧困の削減のために豊富な天然資源を活用する機会に恵ま れるべきだ」と語った。
さらにスリ・タムマロン首相顧問が明らかにしたところによると、この席でペト ロ・チャイナ社は、港湾設備のあるシアヌークビルのプレイ・ヌップ郡に第一段 階で面積1875ライ(3平方キロ)、第二段階で面積4375ライ(7平方キロ)の産業 区域を建設するにあたって共同出資するカンボジア企業を2社探していると発表 した。
この中国側の発表を受けてフンセン首相は、カンボジア企業と協力してできる限 り早期に産業区域の建設を開始するよう要請した。スリ氏も、同地域には石油精 製施設・発電所・絨毯や服飾をはじめとする多くの産業がそろっていると述べた。 フンセン首相は今年3度中国を公式訪問しており、そのたびに中国企業に対カン ボジア投資の増加を呼びかけている。