8月13日のメールニュースでもお伝えしましたが、日本がODAを供与したタイのラムタコン揚水式発電所工事が原因と見られる住民の健康被害に対して、寄付のための仏教儀式が現地で行われました。本来は貧困削減や人間の安全保障をうたっているODAを出した側がこうした健康被害に対策を練るべきです。
以下は、タイの邦字紙バンコク週報の記事です。
バンコク週報 1175号、2005年7月18日
ナコンラチャシマ県クロンパイ郡カオヤイティアン村で7月9日、「パーパー」と呼ばれる仏教儀式が行われた。
同村はラムタコン揚水式発電所に隣接しているが、住民によると1995年末から2年7カ月、ほぼ毎日行われた爆破作業の粉塵が村に降り注ぎ、農作物や家畜に大きな被害が出たという。また、工事が終了したころから村
人に呼吸器系疾患が増え始め、癌で亡くなる人も出るなど、工事との関連が疑われている。
爆破にはTNT(爆薬、トリニトロトルエン)のほか、爆破を効果的にするための添加剤が加えられたとみられている。しかし、発電所を所有するタイ発電公社は使用した爆発物の詳細を明らかにしていない。
通常「パーパー」は寺に寄進するお金を集めるものだが、この日は重度の呼吸器系疾患に苦しむ住民の治療にあてるため、ジャーナリスト協会やNGO関係者から寄付が集められた。寄付は僧侶に供えられた後、村人基金に入金される手続きが取られた。
住民はこのお金で症状の重い人から順番にバンコクの専門病院に行くという。寄付は5万バーツほど集まったが、重症者の医療費は1万バーツ以上になるとみられており、状況を改善するにはほど遠い。
この事業は日本の国際協力機構(JICA)が91年に事前の開発調査を、また94年に国際協力銀行(JBIC)が182億4200万円、世界銀行が1億米ドルの協調融資を行っている。また、日本の電源開発株式会社(現・J-POWER社)が工事の施行管理を行うなど、日本にゆかりの深いプロジェクトだ。