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タイ石炭火力>市民活動家の 1周忌を悼む  

日本企業と国際協力銀行(JBIC)、それに在タイ日本大使館が協力に推し進めたタイのプラチュアップキリカン県の石炭火力発電所計画への反対運動の中心にいたチャルーン・ワットアクソンさんが刺客に襲われ命を落としてから1年が過ぎました。

以下は、1周忌の行事に出席したメコン・ウォッチの土井利幸(バンコク)の報告 と現地英字新聞の翻訳記事です。


6月19日から三度にわたり、チャルーン・ワットアクソンさん殺害事件1周年に関連する活動・行事がタイの首都バンコクおよびチャルーンさんの地元南部プラチュアップキリカン県ボーノークで行われました。

チャルーンさんは、プラチュアップキリカン県に計画された石炭火力発電所(日本企業が出資し国際協力銀行(JBIC)への融資要請が取沙汰された)建設反対運動のリーダーであり、ボーノークの環境を保全することに精力を傾けていました。ところが、昨年(2004年)6月21日、上院委員会で地元の土地が何者かによって不正取得される事件に関する証言を行った帰路、自宅近くのバス停付近で刺客によって射殺されました。


(※)事件後のメコン開発メールニュースもあわせてご覧下さい。
タイ石炭火力>住民リーダーの暗殺(2004.9.17)


今年6月19日、バンコクのチュラロンコン大学には早朝からプラチュアップキリカン県火力発電所反対運動の象徴グリーンカラーをまとった人々約200名が集まり、「資源戦争−あと何人の遺体が?あと何人のチャルーンが?」と題する公開セミナーが開催されました。セミナーには、タイ−マレーシア・ガスパイプライン建設(南部ソンクラー県)、カリウム採掘(東北部ウドンタニ県)、ヴィンヘン石炭採掘(北部チェンマイ県)、ゲンコイ2天然ガス火力発電所(中部サラブリ県)など環境を破壊する開発事業に反対する運動を担うリーダーたちが駆けつけ、追悼の辞を述べるとともに、こうした運動を沈黙させようとする暴力への警鐘が打ち鳴らされました。現タクシン政権が成立してからチャルーンさんのように環境保護をうったえて殺害された人々は19人にのぼると言われています。チャルーン夫人のコーンウマさんはチャルーンさん殺害事件真相追究に対する政府の消極的な態度がこうした暴力を助長すると指摘しました。

私はボーノークにチャルーンさんをお訪ねしたことがあります。「かっこいい」人でした。村を歩いていて質問すると、撮影を意識しているかのような抜群のポジショニングで村の様子を説明してくれました。バイクにまたがり愛犬とたわむれる写真が新聞に掲載されることもありました。死後、サングラスをかけて壇上から語りかける映像がテレビに流れ、バンダナを頭に巻いたアップの映像はボーノークの人々によってTシャツのデザインになっています。個人としての死を越えて、この国を本当の意味で守ろうとする人々に永く記憶されていくことでしょう。

3日にわたる活動・行事は地元メディア各社でも報道されましたが、ここでは6月24日のボーノークでの追悼集会にからめて殺害事件の詳細をはじめタイ社会の現状との関連をまとめたバンコクポスト紙の記事(日本語訳)を紹介します。

市民活動家たちがチャルーンさんの追悼集会を
殺害された英雄を偲んでボーノークで

ピヤポーン・ウォンルアン記者
タイ・バンコクポスト紙
2005年6月25日(原文英語)


【プラチュアップキリカン県】昨日(6月24日)100名を越す市民活動家や環境保護団体関係者が、地元クイブリ郡ボーノークの住民とともに、環境保護活動で知られるチャルーン・ワットアクソンさんがちょうど1年前に殺害されたペットカセム通りの現場に集まった。

昨年(2004年)6月21日の夜、チャルーンさんは政府の上院委員会で地元の海岸沿いの土地が不法に占拠されている疑惑について証言を行い、帰宅のためペットカセム通りを横切ろうとした。しかし、チャルーンさんが通りを渡りきることは なかった。人数不明の刺客が身を伏せて待ちかまえていたのである。刺客はチャルーンさんに向かって数回発砲し、チャルーンさんは通りの真ん中で息絶えた。

警察が5人の容疑者を逮捕した。裁判は来年1月に開廷する。容疑者のうち2人は個人的な恨みでチャルーンさんを殺害したと自供している。残りの3人は容疑を全面的に否認し、保釈された。しかしチャルーンさんの妻コーンウマ・ポンノイさんと友人たちは、殺害の背後で糸を操った者たちがまだ捕まっていないと確信している。そして、警察当局が殺害の動機は個人的な怨恨でチャルーンさんの環境保護活動とは無関係とすることで事件の幕引きを図っていると非難している。

チャルーンさんの1周忌をむかえてコーンウマさんたちは警察当局に事件を再調査し真犯人を突き止めるよう要請した。真犯人は政治家にコネのある地域ボスだと確信している。コーンウマさんはチャルーンさんの火葬を済ませておらず、真犯人を法廷に引きずり出すまで遺体をボーノーク寺院に安置すると言い切った。遺族と友人たちは線香を手にチャルーンさんが亡くなった場所におもむき、チャルーンさんも真犯人の追及に手をかしてくれるよう祈った。

チャルーンさんはボーノークに計画された石炭火力発電所建設に反対する運動で反対住民たちの陣頭指揮を取りその名をはせた。激烈な反対運動の結果、建設計画は白紙撤回された。【訳注1】

南部ソンクラー県チャナ郡から駆けつけたスライダ・トクリさんは地元でタイ−マレーシア・ガスパイプライン建設計画に反対する運動に加わっているが、チャルーンさんの死をタイ社会にとっての不幸な損失だと言って悔やんだ。そして「チャルーンさんみたいにいい人がこんな死に方をするなんて」と語った。

国家人権委員会のサネ・チャムリック委員長は、チャルーンさんの殺害は現政権が野放しにしている数々の社会的不正義の投影だと指摘した。「チャルーンさんはボーノークの人々だけでなく全国民の利益のために環境を守ったのだ。チャルーンさんは政府を攻撃したのではない。すべての人々のために環境を守ろうとしたのだ。政府はこの点を理解して事件にきちんと対処すべきだ」とサネ委員長は述べた。

コーンウマさんは、環境保護運動を担う人々が相次いで殺害されている以上、政府の地域ボス撲滅キャンペーンは成果をあげていないと指摘した。最近ではチェンマイ県のメッタダンマ仏教センター長を務めていた僧侶のスポイ・スヴァチャナさんが刺殺され、センター所有の森林を不正に利用しようとした者との衝突に関係があると考えられている。コーンウマさんは、チャルーンさんの時と同様に警察が殺害事件を怨恨による犯行として矮小化しようとしていると述べた。また、政府に対して、地域で暗躍する者たちを厳重に取締り、地元住民の身の安全を守るべきだと要請した。

【訳注1】この建設計画は、その後も建設地と発電燃料を変更して中部サラブリ県ゲンコイ2「天然ガス焚き複合火力発電所」建設計画として進行中である。ゲンコイ2の事業主体はガルフ・パワー社。ガルフ・パワー社の株の100%をガルフ・エレクトリック社が所有。ガルフ・エレクトリック社には日本のJ Power(電源開発)が49%、Mit-Power(三井物産のタイ 現地関連会社)が1%をそれぞれ出資しており、建設計画には国際協力銀行(JBIC)も融資を検討中である。地元では取水・排水の河川への影響など懸念の声が高まっている。


J Power HP:
http://www.jpower.co.jp/news_release/news041029.html

JBIC HP:
http://www.jbic.go.jp/japanese/environ/joho/project/4227karyoku.php\

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