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怒江ダム開発>中国の市民グループがEIA公開を要求

一時は中国の市民社会の力で凍結に追い込んだ怒江(サルウィン川上流中国領 内)のダム開発に関する最新情報です。

メコン・ウォッチの大澤香織(雲南省・昆明)による、解説、及びアメリカのNGO が出した報道資料(英文)と中国のグループが出した公開書簡(中国語)の翻訳 ニュースです。


2004年2月の温家宝首相による計画の暫定停止命令以来、怒江ダム推進側もさま ざまな努力を重ね、昨年11月にはスケールダウンした計画を提出してきていまし た。こうした動きを受けて、来月にも中国政府によってこの改定された計画の承 認がされる見通しとなったことから、中国のNGOら61団体、99個人が政府に対し て怒江のEIA公開を求めるオープンレターを送りました。

以下はその動きについて報じる国際河川ネットワーク(IRN)のプレス・アドバ イザリー(原文は英語)及び、中国のグループによるオープン・レター(原文は 中国語)の翻訳です。

怒江ダム:来月にも承認か。中国政府に対してEIA公開を求めるオープン・レター

IRN プレス・アドバイザリー

2005年9月7日

8月31日中国の多数のグループが共同で、中国政府に対して政府がこのダムのな い川にダム建設承認の決定を下す前に、怒江水力発電所開発計画のEIAを公開す るよう求めるオープン・レターを送った。

レターのなかでは、中央政府はすでに改定された怒江水力発電所開発計画EIAに ついての審査を終え、来月にも計画を承認する見通しだということが明らかにさ れている。怒江は、中国国内でダムのない二つの河川のうちのひとつであり、こ れまで中国の環境保護活動家やメディア、一般の人々により巨大水力発電開発か ら川を守ろうという未曾有のキャンペーンが繰り広げられてきた。

2004年4月、温家宝首相によって怒江の13のダム計画が暫定停止にされてから、 雲南省政府はスケール・ダウンした計画を推進してきた。地元のメディアは中央 政府の承認は、第一フェ−ズの4つのダムに関するものだと報道している。この なかには馬吉(マチ)ダムという堤高が300メートルの世界最高のダムも含まれ る。

オープン・レターは61団体、99個人によって署名され、ステークホルダーに対す る負の影響が懸念される場合には、EIAの一般への情報公開と公聴会が必要であ る、と定めたいくつかの中国の法律について指摘している。

レターによれば、開発事業者および地元政府がどのように環境面での負の影響を 回避するつもりなのか、人々の移転はどうなるのか、ダムの安全性や経済的実現 可能性はどうなのか、についての計画を市民社会が知ることのできる手段は現在 まったく存在しない、という。主要なインフラ計画が、中国の法律で定める住民 参加なしに行われるのならば、それは法的要請を満たしていないことになるだろ う。

怒江(下流のビルマおよびタイではサルウィン川として知られる)は豊かな文 化的、生物学的多様性から、UNESCOの世界遺産エリアに指定されている。7月に は世界遺産委員会が、三江併流世界遺産エリアにおいて計画されているダムの影 響について深刻な懸念を表明しており、危機にさらされている世界遺産のリスト に入れることも検討している。委員会は、2006年にも状況を評価するためにモニ タリング・ミッションを派遣する予定だ。

計画されているダム・プロジェクトは5万人の少数民族を強制的に移転させる。 それに加え、ダムは下流において川での漁業、農業および多くの生計を依存して いる何百万人もの人々と彼らの生計に影響を与えるだろう。

(以下、中国語のオープンレターの翻訳文)

怒江水力発電開発に関する環境影響評価報告の法にもとづく情報公開の要請

2005年8月25日

2003年以来、怒江ダム計画は社会の各界から大きな注目を集めてきた。この遠く 離れた河川は、多くの人々の心を動かした。怒江にダムを建設すべきか否か、そ してダムがもたらす負の環境社会影響をどのように回避するのかについての議論 は、中国における大型インフラ・プロジェクトの政策決定の改善に影響を与えて きた。

中央政府の計画及び環境部門はすでに怒江の水力発電開発計画の再検討を終えた と伝えられている。われわれはこうした現在および将来世代の利益に影響を与え、 世界中の注目を集め、また潜在的影響が巨大であるプロジェクトのEIAは関連す る法律と国務院の指導方針に従って情報公開がなされるべきだと考えている。

2003年8月にカスケード(連続式)ダムについての第一報が伝わった際、まずは 環境保護グループの懸念を引き起こした。当然ながら怒江のカスケード・ダム開 発は、天然河川の流れを水路化し、ダム化し、中国に最後に二本残された本流上 にダムのない生態河川の一つで、生物多様性が密集し、三江併流の自然遺産であ るこの地区の自然に環境影響を与えるのではないかという憂慮を引き起こした。 同時に、山が高く谷は深く、耕地資源が極端に少ないこの地域では、いったんダ ムを建設すれば数万の移転住民が行き場を行い、最低限の生活保障さえも懸念さ れる。怒江州の少数民族は総人口の92%を占め、さまざまな宗教が共存し、独特 の豊かな民族文化を形成してきた。ひとたび大規模な移転が行われれば、文化の 多様性が失われることは避けられない。同時にここは地震、地滑り及び土石流の 多発地帯であり、さらなるダム建設は必然的にダム建設の安全性および経済合理 性への疑問をを呼ぶ。

怒江は大きな環境、科学研究及び景観的価値を有しており、多くのメディア報道 によって、水力発電開発による潜在的な深刻な環境社会影響が人々の知るところ となった。もともとはそれほど知名度の高くない遠くの河川の運命が人々の注目 を集めたのだ。人々はさらに多くの情報を理解し、水力発電開発における重大な 環境社会影響を回避したいと望んだ。

この大型水力発電プロジェクトがすでに高い社会的関心をよんでいるという事実 にかんがみて、また環境保護の面で異なる意見がある(環境保護総局〔SEPA〕が 懸念を表明した)ことから、中央政府は2004年2月、このプロジェクトの暫定停 止という英断を下した。温家宝総理みずから慎重な研究および科学的な政策決定 を要求した。その後、開発事業者および関連部門はさらに全面的かつ詳細な環境 影響評価の実施を求められた。

われわれは怒江開発の論証過程において、メディアが十分な報道を行い、住民の 広範な参加が確保され、環境保護部門があえて圧力を引き受け、中央政府が責任 をもって行動したことに対して心からの賛同を表明する。われわれはこうした議 論によって、中国の水力発電開発とその他の大型建設プロジェクトの政策決定が 公開性、透明性かつ住民参加の面で新たな局面を切り開くことを望んでいる。

しかし、怒江プロジェクトが停止された後、関連する怒江水力発電開発計画の論 証および環境影響評価の文書と内容は未だ一般には公開されておらず、市民が開 発事業者及び地方政府がどのように環境面での損害を回避し、どのように(5万 人の)住民移転を行い、どのようにダムの安全性と経済性が確保するのかについ て理解する手段はまったく存在しない。数ヶ月の沈黙の後、一部のメディア報道 によって、われわれは第二段階の怒江流域計画環境アセスメント専門家審議会が 2004年11月13日に北京において行われたという情報を知った。『南方週末(サザ ン・ウィークエンド)』は審議会参加者の証言を引用し、彼は突然の会議召集の 通知により北京にやって来て会議に参加したが、会議上では国電公司北京勘測設 計研究院と華東勘測設計研究院が行った環境影響報告とその他の関連資料が示さ れ、会の終了後にはそれらはすべて回収されたため、この審議会の全貌について 振り返ることすらできなかった、と語ったと報じている。

このような政策決定のプロセスは重大な政策決定における住民参加を定めた中国 の法規定にそぐわないのみならず、国際的な政策決定プロセスにもそぐわない。 さらに『行政許可法』の規定、国務院の『前面推進依法行政実施綱要』で提唱さ れている情報公開の全面的実施の原則にもそぐわない。2003年9月1日に発効した 『環境影響評価法』では「国家は環境影響評価における関連機関、専門家及び住 民の適切な参加を奨励する」、「負の環境影響を与え、住民の環境権に直接的に 関わる可能性のあるプロジェクトに対しては、専門プロジェクト計画の編制機関 は、評価会議、公聴会、その他の会議によってEIA報告の草稿に対して草稿の提 出前に、関連する意見を専門家および市民から集めなければならない」さらに、 「(関連機関は)関連する機関、専門家及び市民のEIA法の草稿に関する意見を 真剣に考慮し、EIAレポートを提出する際にはそうした意見の採用、不採用につ いての説明を添付しなければならない」と明確に規定している。

2004年8月10日、国家環境保護総局が出した『環境保護行政許可公聴会暫定方案』 のなかでは、二種類の建設プロジェクトと十種類の専門プロジェクト計画におい て環境保護公聴会を実施することが定められている。二種類の建設プロジェクト とは:環境へ重大な影響を及ぼす可能性があり、環境影響評価報告書を編制する 必要がある大中型の建設プロジェクト;油煙、悪臭、騒音あるいはその他の汚染 を生み出し、プロジェクト地の住民生活環境の質に重大な影響を及ぼす小型の建 設プロジェクトである。十種類のプロジェクト計画とは:環境への負の影響によ り住民の環境権益に直接影響を及ぼす可能性のある工業、農業、牧畜業、林業、 エネルギー、水利、交通、都市建設、観光、自然資源開発の関連専門プロジェク ト計画である。明らかに怒江水力発電開発計画は、環境保護公聴会を行う規定の リストに属している。

2004年7月1日に施行された『行政許可法』では、行政機関が行政許可申請の行政 審査を行う際には、行政許可プロジェクトが直接他人の重大な利益に関わること が分かった際には、その事業のステークホルダーに通知することが規定されてい る。また申請人、ステークホルダーは陳述および申し立てを行う権利を有する。 行政機関は申請人およびステークホルダーの意見を聞かなくてはならない。この 法律では同時に、行政許可が、直接申請人と他人とのあいだの重大な利害関係に およぶ場合には、行政機関が行政許可を決定する前に、公聴会を要求する権利を 有する申請人やステークホルダーに、告知を行うことを規定している;申請人や ステークホルダーが公聴会の権利を告知された日から5日以内に公聴会の申請を おこなった際には、行政機関は20日以内に公聴会を組織するべきであるというこ とも規定している。

2004年3月22日、国務院が公表した『全面推進依法行政実施綱要』では、政府の 情報公開を推進し、国家機密および法により保護されている商業機密、個人のプ ライバシーなどの事柄の他は、行政機関は政府の情報を公開し、市民が政府の情 報にアクセス可能となるようにすべきだとしている。どのように全面的かつ科学 的で民主的な政策決定メカニズムを打ち立てるのかについてのガイドラインは、 政府に対して「明確に各レベル行政機関の政策決定の権限を規定し、内部の政策 決定の秩序を向上させること」を要求している。また「住民参加、専門家による 審議、政府による決定を組み合わせた行政の意思決定プロセスを打ち立てるべき である。法律にもとづいた科学的、かつ民主的政策決定を実施すべきである。」 としている。

一方で、ガイドラインは「行政の意思決定手続きは向上されるべきである。国家 の機密のほかに政策決定の項目、議論およびその結果については情報公開される べきで、市民がアクセス可能なものであるべきだ・・・情報はセミナー、公聴会、 評価会議などを通じて一般に公開されるべきである。プロジェクトについての意 見を集め、より広範な市民の参加と人々の利益に深く関わるべきである」として いる。意思決定プロセスにおける法的アセスメントは、主要な行政意思決定のた めに行われるべきである。

伝えられるところによれば、最近までに怒江水力発電開発計画はすでに計画と環 境保護部門の審査を終えている。しかしこれまでのところ、怒江水力発電開発計 画についての論証と環境影響評価報告書の内容はいまだ市民に公開されておらず、 市民は開発事業者および地方政府が、どのように環境面での損害を回避し、どの ように住民移転を行い、どのようにダムの安全性と経済性を確保する計画なのか を理解する手段がまったく存在しない。われわれはこうした重大な政策決定が住 民参加と法律規定の不遵守という状況下で行われるのであれば、その政策決定は 民意を欠いており、歴史の経験から学んでいないと認識する。

われわれは政策決定機関に対して、EIAレポートの公開を行うよう強く要請する。

先日行われた円明園における「防滲」プロジェクトの環境影響評価のプロセスに おいて、国家環境保護総局は互いのネットワークを通じて、環境影響評価草案の 全文公表を行い、社会各界からの好評を得た。われわれは怒江開発の環境影響評 価は円明園の前例にのっとり、環境影響評価報告の情報を公開し、その後、市民 が十分に情報を与えられた状態で、公聴会などの形式により公開評議を行うべき だと考える。このようにしてはじめて法にもとづいた行政と情報公開の要求を満 たすことができ、本当に市民の知る権利、参加の権利および監督権を保障するこ とができる。またそうしてはじめて水力発電開発計画の民主的政策決定および科 学的政策決定を実現することができ、水力発電開発が引き起こす取り返しのつか ない環境の損失を最大限回避し、移転住民の利益を保障し、国有資産の投資の安 全を保障することができる。

怒江水力発電開発はなにも唯一の計画ではない。われわれはこの政策決定プロセ スが科学的、民主的政策決定のプロセスを打ちたて、中国が現在直面している過 熱して無秩序な水力発電開発の潮流に対処することを望む。2004年の中国の水力 発電総容量はすでに1億キロワットに達し、世界第一位を記録している。また中 国の水力発電容量は2020年までに2.5億kW増加する計画である。金沙江、岷江、 大渡河、雅?江、嘉陵江、鳥江、紅水河、瀾滄江などすべての大型河川の本流上 にはすべて少なくてとも数個、多くて二十数個のカスケード・ダム開発計画が存 在している。なかでも高いダムは、アジアでも有数であるにとどまらず、その中 のいくつかは世界的にみてもトップレベルである。これらの河川の大小の支流上 でもまた、大量の発電所が計画され、総数は300基以上に達する。このように大 規模かつ急速な水力発電開発建設は、もし総合的で各方面の利益を考慮するよう な適当なプロセスをふまなければ、こうした資源収奪性の開発が現地の住民の利 益を損なうことは避けられない。またこれは中国の原生河川の景観を取り戻せな くするにとどまらず、中国西南山区の生み出す深刻な移転住民の貧困および、社 会の不安定をもたらすことに繋がる。

今日の中国はすでに市場経済の時代にはいった。水力発電開発は中国のエネルギー 戦略の重要な部分のうちのひとつである。しかし今日の水力発電開発は基本的に は商業行為に属しており、われわれは一部のグループや個人が投資建設および運 転をするプロセスにおいて、廉価、時には無償で公共資源と公共の環境を占有し、 暴利を貪り、ダムのリスクがもたらす巨額のコストをすべて外部化し、移転住民 や社会にそれらをうけ負わせ、子々孫々にそれをうけ負わせることを容認するこ とはできない。

われわれは国務院および国家発展改革委員会及び各地方政府がすでに行動を開始 し、水力発電の無秩序な開発の整理に手をつけ始めたことを大変喜ばしく感じて いる。しかし、根本的にこうした現状を変えるには、かならずや新たな水力発電 開発の政策決定プロセスを打ちたて、ステークホルダーが効果的に情報を与えら れ、参加が可能となるようにすることが必要である。各ステークホルダーがすべ て知る権利と参加する権利を与えられるという情況のもとで、はじめて水力発電 開発における多くの社会目標がすべて考慮され、利害が合理的に均衡し、損害を 受けるグループおよび環境が利益を受けるグループから十分な補償を与えられ、 本当の代替案を考慮することができるようになるのだろう。こうしてはじめて、 河川資源の公平、公開、科学、理性、持続可能な利用を実現することができる。 これはまた科学発展観を貫徹し、人と自然が協調して発展することを統一して計 画案配する必然の選択なのである。

団体署名:以下の61団体

個人署名:99人(省略)

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