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パクムンダム>水門開放2005

メコン河開発メールニュース 2005年9月17日

世界銀行が融資して甚大な漁業被害を引き起こしたままになっているタイのパク ムンダム。粘り強い住民運動の結果、魚の回遊を取り戻すためのダムの水門開放 が2年前から行われています。

過去7年以上にわたってこの問題をモニタリングし、現地の住民運動を側面支援 しているメコン・ウォッチの木口が、今年の水門開放の状況を報告します。

パクムンダム:2005年の水門開放

木口由香(メコン・ウォッチ)

政府が委託した調査が5年間の試験的水門開放を提言したにもかかわらず、それ が無視され、年間4ヵ月の水門開放が2003年から実施されているパクムンダム。 2003年は7月から10月まで水門が開いていましたが、メコン河からの魚の回遊は6 月に終わってしまっており、ムン川での漁業は不振でした。また、2004年は「回 遊に合わせた開放を」という住民の要請で水門開放時期が5月からに変更になっ たのですが、実際に水門が開いたのは6月中旬でした。

今年、2005年、パクムンダムの水は灌漑にほとんど利用されていないにもかかわ らず、事業主体のタイ発電公社は旱魃を理由に水門解放を1ヶ月遅らせました。 しかし幸運なことに、回遊魚の多くがムン川をさかのぼることができたようです。 多くの村では漁業が再開し、村人の収入も向上しました。何よりも、魚が食卓に 上ることで、家計からの支出が抑えられることが人々の生活状況を改善していま す。

以下は、今年メコン・ウォッチのスタディツアーで訪れた村の様子です。


パクムンダムから約30キロ上流のコータイ村は、ダムができる前には農業ではな く漁業で生活をしていた村でした。サプー早瀬の直下にあるこの村ではトゥム・ ヤイまたは、トゥム・プラー・ヨンと呼ばれる竹で作られた大きな漁具を使うこ とで知られていました。トゥム・ヤイは全長5−7メートルの長さで作られ、円錐 形をしています。米を餌とするこの漁具で取れるのは、現地でプラー・ヨンと呼 ばれる数種類のPangasiusと呼ばれるナマズの仲間の回遊魚です。

ダムができる前は、毎日30−50キロの漁獲があったといいます。漁期はほぼ1ヶ 月で、100世帯以上がこの漁に従事していました。シーズンが終わった後、村人 の手には15年前でも2−3万バーツ(現在のレートで約6−9万円)の現金が残った といいます。しかしダムができてから、回遊魚であるプラー・ヨンはムン川には やってくることはできず、漁は人々の記憶の中に残るのみになっていました。

村人の粘り強い運動が実ったダムの水門開放時の2002年、約10世帯が漁を再開し ました。しかし、2003−2004年は水門開放が遅く、魚の回遊が少なかったため村 人は再び漁を断念していました。

今年、人々の運動が実って水門開放が早まり回遊魚もやってきたため、村人は再 び7月からトゥム・ヤイ漁を復活させました。

「村はこの漁があったために、皆非常に良く助け合ってきました。トゥム・ヤイ は個人のものですが、漁場で皆が協力しないと誰の漁具にも魚が入らないからで す。昔、この時期、村はとても賑やかでした」とコータイ村の村人は言います。 トゥム・ヤイ漁は村人の重要な収入源であっただけではありません。魚は村人の 手から手をわたり、ローカルな市場と村の中で消費されます。ここ2ヶ月、村の 食卓には毎日プラー・ヨンが並びました。このような形の食糧供給は村人の支出 を抑え、安定的にたんぱく質を供給します。また、漁は人々の関係を強める役割 も果たしています。この漁は、同じ場所で人々が一斉に作業をするため、さまざ まな協力関係を生みます。今年は特に、新しく漁を始めた人が10人近くもでて、 古くから作業をしている村人が指導をしていました。朝の作業は午前3時から始 まります。多くの村人が、寝不足で大変だといいながらも、川岸に集まって楽し そうに一日中夜遅くまで作業をしていました。「若いときはバンコクに出てみた くて働きにいったけれど、人に使われて大変な仕事だった。村で漁をしていたほ うが収入もいい」という人もいます。今年、最初にこの漁を始めた人は、2ヶ月 で2万バーツの利益を得ました。低学歴の村人がバンコクに出稼ぎに行っても、 月に1万バーツ稼ぐことは非常に難しいうえ、都市での生活費もかかります。村 にいて収入があることと経済状況は大きく異なります。

9月に入り、川の流れが激しくなったため、漁は終わろうとしています。人々は 来年に備えてトゥム・ヤイを軒先に片付けています。

パクムンダムの水門開放も、その期限を月末に迎えようとしています。

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