ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ベトナム・セサン川ダム>ダムの放水 カンボジアで越境洪水
メコン河開発メールニュース 2005年11月8日
メコン河最大の国際支流の1つであるセサン川は、ベトナム中部高原からカンボジア北東部に流れています。この川のベトナム領内に90年代後半にヤリ滝ダム(720MW)が建設され、そのダムからの放水によって、カンボジア側では洪水など異常な水位変動が起き、多くの人命や家畜の命が奪われました。
ベトナム・カンボジア両国政府間の話し合いで、ダムから放水する場合は事前に通知することになっていますが、現地の住民に届くにはかなりの時間と周知徹底が必要です。そうした対応が不十分なまま、今年8月に再び大きな被害が生じています。
以下は、セサン川流域の住民とNGOで作るセサン・プロテクション・ネットワーク(SPN)が発表したプレスリリースを、メコン・ウォッチで越境的な環境問題を担当している大澤香織が翻訳しました。
(2005年9月1日、SPNプレスリリース)
ラタナキリ州―少数民族グループが暮らすベトナムのセサン川上のヤリ滝ダム下流で、今年8月、720MWの水力発電ダムからの放水により、大規模な洪水が引き起こされた。これにより1人が死亡、3人が大怪我をし、水田および他の耕作地が水につかった。この洪水は8月3日から13日にかけて発生し、セサン川沿いのラタナキリ州に住む60人が被害を受けた。
村人たちは水田、畑地の安全についての恐怖をセサン・プロテクション・ネットワークに表明した。「昔、われわれは洪水を恐れたりはしなかった。しかし今では恐れている」。Vuen Sai地方のある村人は、Vuen Sai のHat Pot コミューンで8月9日に舟に乗っている際に起きたこの災害の後、こう語った。舟はこの洪水によって河岸が浸食されたことにより木に激突し、1名の女性が死亡、他の3名が大怪我を負った。
他の地区もまた洪水にみまわれた。Ta Veng地区では、3人が洪水による飲料水の疾病により死亡している。またセサン川沿いの他の4地区も、多くの水田と作物が被害を受けた。「もしこの状況が変わらなければ、わたしたちはもう川の近くには暮らせない」と、村人は言う。「わたしたちはもはや川に頼れない」。
放水前、ベトナムはカンボジアに対し通知を行い、その通知はコミューンの委員会メンバーに伝えられた。しかしその情報が多くのコミュニティに伝達されるには時間が不十分だった。
放水が起こるという情報をもたなかったセサン川沿いの村人たちは、不規則で危険な水位変動にさらされた。この水位変動は、洪水、溺死、急激な水位変動、深刻な河岸侵食を引き起こし、また家屋、道具、家畜などを押し流した。
2003年以前、カンボジア・ナショナル・メコン委員会(CNMC)はベトナムに対してヤリ滝ダムによって引き起こされる災害を緩和するよう説得しようとした。これらの会談では、結局、ベトナムが大規模な洪水を行う際には事前に警告通知を行うという合意と、さらなる研究協力が約束されただけだった。しかし、た事前の警告通知は、遠く離れたコミュニティでありかつ、電子的なコミュニケーション・インフラのない場所では非常に非効率であった。下流への影響を軽減するためのヤリ滝の操業体制の見直しについての交渉は行き詰っている。
ヤリ滝ダムは9年以上、セサン川の水文と水質を変質させ、ベトナムとカンボジアにおける川沿いの何千人もの人々に大規模な環境、社会、経済的影響を与えてきた。これらの深刻な影響と、村人のベトナムおよびカンボジア政府への訴えにもかかわらず、何の緩和策あるいは補償は与えられず、川の上ではさらなるダム建設が継続中である。
より詳しい情報は以下:
Kim Sangha, Coordinator of the Sesan Protection Network
Tel: 855 (0) 11 942 621
Email: sesan@camintel.com