ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > タイ・ゲンコイ第2複合火力発電所>地元抗議行動で一触即発
メコン河開発メールニュース 2006年1月7日
2005年11月に国際協力銀行(JBIC)が融資決定をした、タイのゲンコイ2複合火力発電所に関するニュースの第2弾。発電所の取水に伴う水不足への懸念です。
以下、メコン・ウォッチの後藤歩の解説と翻訳記事です。
環境影響評価(EIA)報告書は、2004年12月に既に承認されていますが、タイの灌漑局は、発電所が取水する予定のパサック川の水への需要が急増していることを考慮し、また被影響住民が合意するまで許可を保留する考えに基づき、2005年初めに、事業者の水使用許可にいったん「待った」をかけました。
また、強まる抗議の声を受けて、タイの工業局は環境影響に関する追加調査をおこなうとを決め、県知事へ工事中止の指示をおこなうよう要請しましたが、県知事は拒否しています。これに不満をもった住民が2005年5月、抗議のデモをおこないました。
以下、バンコクポストの翻訳です。
(その後、灌漑局は、「農民と住民が優先的に水を利用すること」を条件にして、再度事業者へ水利用許可を出していますが、住民はこの約束が実行に移されるかには懐疑的であり、パサック川の水不足への強い懸念は、依然残されたままです。)
バンコクポスト 2005年5月15日
Kultida Samabuddhi記者
サラブリ県ゲンコイ郡にある、ガルフパワー社の1,468メガワットの発電所建設をめぐる論争は、賛成派と反対派が対峙したことから一触即発の状況となった。
ゲンコイ2事業の約200名の反対者は県議会前を行進し、強まる抗議を受けて事業を中断するようにという工業省工業局による要求をThaweep Thewinサラブリ県知事は無視した、と非難した。
数百人の賛成派も論争に参加するため外に集結した結果、押し合いが起こったが、警察の介入でそれは終わった。怪我の報告はなされていない。
「ゲンコイ保全グループ」によって率いられている被影響住民は、330億バーツの事業の建設を阻止するため「最後まで闘う」ことを誓った声明を発表した。住民は、県知事の不在は自分たちや論議を避けていることの表れだ、と述べた。住民は、Thaweep知事がガルフパワー社に発電所建設を中止するよう命令することを要求した。
Thaweep知事は、チョンブリ県への出張のため不在にしていた、と主張している。
天然ガスが燃料のゲンコイ2は、物議をかもしたプラチュアップキリカン県のボーノーク石炭発電所の代わりとなる。ボーノークは、現地住民および環境活動家からの激しい反対に会い、中止となった。
ゲンコイの住民は、事業が(サラブリ)県住民の生命線であるパサック川の水不足を悪化させ、水質汚染も引き起こすのではないかと懸念している。
2004年12月に天然資源環境政策計画室に承認された事業の環境影響評価(EIA)報告書によれば、発電所は130万立法メートル貯えられる貯水池へ貯水するため、パサック川から1日54,413立方メートルを取水する。発電所からの廃水は、処理されパサック川へ戻される。
増えつづける抗議の声は、工業局のIssra Shoatburakarn局長を促し、3月29日にThaweep知事に「抗議が暴力的になる前に」事業者が発電所建設を中止することを要請するよう求めた。
工業局は、反対者の要求に応え、考えられる環境影響に関して追加調査を行う。
議論を呼んでいるもうひとつの要因に、サラブリ県灌漑事務所が事業者に許可した水使用許可を、灌漑局が取り消したことがある。
3月28日に灌漑局の副局長La-iad Sainamkeaw氏によって書かれたメモには、「パサックダムとパサック川の水への需要の増加があるため、灌漑局は流域における水管理計画を見直す必要がある」と書いてある。
「事業者の水利用計画に被影響住民が合意するまで、許可を保留する」とメモにはある。
Thaweep知事は、金曜日(5月13日)に怒りをこめて返答し、「悪い意図を持った活動家に洗脳されたほんのわずかな住民」のものだとして、反対派の要求を退けた。
「事業者は法に反することは何もしておらず、法的に適切な方法でEIAや建設許可、水利用許可を含む全ての必要な許可を得ており、私は事業を中止する権限を持たない」と述べた。
知事は、工業局が発電所建設を止められる唯一の機関だと述べた。「とりわけ」と知事は続ける。「なぜ私が賛成者よりもはるかに少ない数の反対者を気にしなくてはならないのだ」。