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メコン河開発メールニュース 2006年3月2日
昨日お送りした漫湾ダムの立ち退き問題に続き、瀾滄江ーメコン河本流ダムとして2番目に完成した大朝山ダム(中国雲南省)のニュースです。
中国領内の瀾滄江ーメコン河本流ダムは、タイなど下流国への越境的な影響ばかりが注目を浴びますが、中国国内でも大きな環境・社会問題であることにもっと目を向け、国内から変化をもたらす可能性を探ることも大切だと感じます。
以下、メコン・ウォッチの大澤香織の解説と翻訳記事です。
中国国家環境保護総局(SEPA)は中国全土への汚染危機を防止するため、新たな手続きと厳しい態度を約束、具体的措置として情報公開メカニズムの向上、汚染企業のブラックリスト化、全国的な調査キャンペーンなどを展開しています。
2005年11月以来、SEPAが行った127地点での環境影響が懸念される事業調査の結果、合計21の事業/企業がブラック・リスト化されました。この中にはメコン河上流の瀾滄江本流で2003年から発電をしている大朝山(ダチャオシャン)ダムも含まれています。
大朝山ダムの主な違法行為は、2003年10月から6基のユニットが発電しているにも関わらず、未だに国家環境保護総局の環境保護規定「三同時制度」の検査を申請していないというもので、SEPAの指導は命令期限内にこれを改善すること、期限に間に合わなければさらなる罰則が加えられる、とのことです。
「三同時制度」とは、投資プロジェクトの実施と同時に、環境汚染防止施設を計画、建設、操業するべきことを示したものです。生産施設の計画、建設、操業の三段階において環境保護施設が同時に計画、建設、操業されねばならず、中国特有にみられる環境保護制度のことです。
チャイナ・デイリーの2006年2月13日の記事によれば、SEPAは隠蔽工作を阻止するため、春節のすぐ翌日に突然、127事業に関するSEPAの報告書を一時間以内に公開する命令を下しました。このタイムリーな情報公開によって、2005年11月に黒竜江省の松花江で起きた環境事故以来、すでに45もの環境事故に関する報告書が国に受け取られ、精錬工場から河川へのカドミウム流出や、亜鉛の流出事故など深刻なケースもあったことが明るみになりました。
以下はSEPAのHPのニュースを抄訳したものです。
(中国国家保護総局のHP、2006年2月7日ニュース、抄訳)
国家環境保護総局(SEPA)の藩岳(ファン・ユエ)副局長のメディア発表によれば、SEPAは環境の安全を脅かす事件が多発する現状をかんがみ、2005年11月以来、松花江水汚染事件のような重大な環境事故の再発を防止をするため全国127地点で環境リスク調査を実施した。その結果、11企業が河川の水辺における重大な問題を抱えていることが判明し、SEPAの監督下におかれ、10事業が「三同時」制度に違反しているとされた。
松花江水汚染事件の発生以来、国務院とSEPAの決定により、SEPAは全国で大規模な調査を行った。その結果、多くの汚染や生態破壊の実態が明るみになり、SEPAは厳しい措置をとることを決定した。深刻な事故はSEPA、もしくは国務院に直接報告されなければならず、通知義務が強調される。情報公開メカニズムは人々の「知る権利」保護の改善を目指しており、調査の対象となった127企業の情報がすべて公開された。
またSEPAは11の「重大な違法汚染問題」を抱える企業を厳しい監視下に置き、改善を命じている。また個別に改善すべき内容を指導し、期限を区切って各省の環境保護局下での改善を要求、一ヶ月以内に改善案を提出、SEPAの承認後、実施するよう指導した。これに対して企業側の改善がなければ、生産停止や罰金が課される。
さらに10の「三同時」制度に違反した事業について改善を命じ、期限内に改善がなければ罰金や閉鎖などさらなる罰則が命じられる。
重大な環境汚染問題を抱える11企業は:
「三同時制度」に違反した10事業は:
(SEPA HPの大朝山ダム関連ページより)
大朝山(ダチャオシャン)水力発電所は2003年10月に建設が完成し、6基のユニットがすでに正式に発電している。
当事業は未だに環境保護の手続きを申請しておらず、『建設事業環境保護管理条例』と『間接事業竣工環境保護検査管理方法』の関連規定に違反している。2006年2月7日、国家環境保護総局は新聞メディアを通じて違法行為を通知した。
これを当局(訳注:雲南省環境保護局)はたいへん重視し、省環境監理所の環境監察員が当日、発電所の視察した。翌日、雲南省環境監理所と臨滄(リンツァン)市環境保護局、臨滄(リンツァン)市環境監察部が現場の視察を行い、調査の結果を環境保護局に伝えた。
2006年2月10日、省環境保護局指導部は雲南大朝山水力発電有限公司の主な指導者を呼び、関連する環境保護規定に違反していることを指摘、厳重な注意と改善を要求した。大朝山水力発電所の指導部は国家環境保護総局事務庁の『建設事業竣工環境保護検査限期改正通知書』の書類に従って業務を改善し、適切に環境保護検査を行うつもりであることを示した。
2006年2月13日、雲南環境保護総局は調査結果と大朝山水力発電有限会社が報告した『大朝山水力発電事業環境保護事業改善報告』に基づき、『雲南省環境保護局の大朝山水力発電有限会社が三同時』の違反情況を国家環境保護総局に報告した。