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メコン河開発メールニュース 2006年3月18日
メコン河流域国では、大規模インフラへの中国からの投資や公的資金投入によって、様々な自然・社会環境問題が起きています。こうした問題を回避するための一つの糸口は、中国国内での制度改革です。
その意味では、以下のニュースにあるように、中国の環境アセスメント政策に、公衆参加(Public Participation)が盛り込まれたことは前進と言えます。一方で、日本の経験を考えると形式的な参加促進に終わる懸念も大きいです。
以下、メコン・ウォッチの大澤香織の解説と3つの翻訳記事です。
昨年末のパブリックコメント募集に引き続き、中国では今年2月、環境保護総局(SEPA)によりEIAにおける市民の参加を定めた規定と、効果的な参加がなされない現状とのギャップを埋めるための暫定法規が出されました。
この法律は市民がEIAのプロセスに効果的に参加することを確保するための措置として出されたもので、中国の各環境NGOグループもこの動きを歓迎するコメントを発表しています。
2本目の記事の最後の汪(ワン)氏のコメントにあるように、こうした積極的な北京の環境政策がいかに地方の大型インフラ事業の政策決定に影響を与えることができるのか、また中国の市民社会がこうした制度を今後、事業の監視に当たってどのように活用できるのかが注目されます。
(新華社ネット−北京、2006年2月22日)
中国の環境のウォッチ・ドッグ(訳注:中国環境保護総局、SEPAのこと)は、環境影響評価(EIA)に関するガイドラインを発行し、国の環境問題への市民の直接参加を促している。
これは環境分野における市民参加に関する初の政府文書だ。このガイドラインによって政府の意思決定はより透明で民主的になるだろう」とSEPAの潘岳(ファン・ユエ)副局長は言う。
文書によれば、建設管理者と環境保護局は、事業による潜在的影響について一般市民からの意見を考慮するよう義務付けると規定している。
公衆参加は「公開され、平等で、幅広く、便利な方法で」行われなければならないとガイドラインは述べる。
「事業管理者は承認を求める報告書の提出前に、少なくとも10日は一般市民からの意見のために時間をとらねばならない」。
中国の環境問題に関わりたいという人々の熱意にも関わらず、これまでこうした法規が欠けていたため無視されてきた、と言われる。
「政策決定における透明性の欠如は、環境影響についての論争を巻き起こし、多くの建設事業の完成後に社会不安さえ引き起こす」と潘(ファン)副局長は言う。
潘副局長は、SEPAがこの文書を環境情報の公開とより具体的で効果的な公衆参加システムを打ち立てるための包括的なガイドラインとして使用することを確約した。
中国における公衆参加は、全国的な議論を巻き起こした円明園の建設事業について2005年に最初に行われた。「この文書はわれわれが円明園の公聴会から得たことを制度化することも目的としている」と潘副局長は言う。
http://news.xinhuanet.com/english/2006-02/22/content_4213757.htmSun Xiaohua記者、チャイナ・デイリー
2006年2月23日
環境意識の向上と政策決定の改善を目指した新たな暫定措置によって中国の市民は何らかの事業が打ち出される前に、環境に何が起きるかを知らされ、環境影響評価(EIA)へのインプットを提案できる。これら二つのEIAへの公衆参加に関する暫定措置は昨日、北京の環境保護総局(SEPA)により発表され、最初の特別措置は3月18日に発効する。
新たな手続きによれば市民はEIAについてのアンケート、専門家とのコンサルティング、シンポジウムや公聴会への参加によりEIAに参加できる。事業契約者は、建設が環境にどのような影響をもたらし、どのような防止措置を採るのかについて一般市民への詳細な情報提供を求められる。またSEPAの報告書には複雑な言葉、専門用語が含まれることがあったが、一般市民向けの分かりやすいバージョンが配布される。
「現在、中国のEIAシステムは多くを行政手続に頼っているが、市民による監視が欠けている」とEIAに責任を持つSEPAの潘岳(ファン・ユエ)副局長は語る。「EIA法への参加についてはいくつか条項があるが、これらはあまりに野心的で現実的でない。この暫定手続きはそのギャップを埋めようとするものだ」。
昨年、SEPAは水の保全を意図して湖底を水が通らないよう覆う円明園の事業について公聴会を開いた。これまでのところ、これが中国全土における最初で唯一の公聴会だ。
「公聴会は市民の参加意識を高めるだけでなく、政府の政策決定と信用を高めるために重要だ」と潘(ファン)副局長は言う。「暫定措置の導入によりEIAに成功例をもたらしたい」。
緑家園の設立者である汪永晨(ワンヨンチェン)氏は言う。「私はこの手続きが中国のすみずみまで広がることを願っています。特に、北京から離れた場所で地元の人々の環境保護意識を覚ますために」。
汪(ワン)氏は怒江にダム建設が計画されている中国南西部におけるEIAへの公衆参加について調査している。彼女によれば地元の住民の大多数はダムの建設が自分たちの生活をどのように変えるのかについて知らず、ましてやEIA法についての知識など皆無だという。
「これは環境という重大事項への公衆参加を促進するための、大きな法的前進だ」と中国政治科学法大学のXu Kezhu 助教授は述べる。
全て中国環境報(2006年2月24日)より。(中国語)