ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ベトナム・ソンラーダム>300人が移転地から逆戻り
メコン河開発メールニュース 2006年4月1日
ベトナム北部に建設が進められているソンラーダム(2400メガワット)は、9万1000人の少数民族を強制的に立ち退かせる、東南アジア最大のダム事業です。
すでに立ち退きは始まっていますが、早くも移転地での生活が立ち行かなくなって戻ってくる住民たちが出ています。以下の記事にあるように、その理由の1つが、移転先には水牛や牛の放牧地がないという問題です。
折りしも昨日お送りした「ナムトゥン2ダム融資から一年(1)>遅れる社会・環境影響への対応」で指摘していた問題と同じです。ナムトゥン2はソンラーで起きているのと同じ問題を繰り返そうとしています。
『貧困削減』に逆行するこのダムの事業費は約3,000億円。それだけの資金を投じる余裕のある国に、日本政府は2006年3月29日に883億円を限度とする円借款ODAを供与することを決めました。援助によって浮いた国内資金が山岳少数民族の強制立ち退きに使われているとすれば、『貧困削減』や『人間の安全保障』ということばは空しい響きに聞こえてきます。
以下、AFP通信の記事です。
2006年3月31日
AFP通信(ハノイ発)
地元の行政官が金曜日(3月31日)に語ったところによると、ベトナム最大のダムプロジェクトで昨年立ち退かされたおよそ300人の少数民族の村人たちが、元の村に戻ってきた。
タイ族や他の民族グループの約100世帯が、ソンラー水力発電ダムによって水没する山間の先祖代々の土地に戻ってきたと、住民移転の責任者である地元の行政官であるLo Mai Kien氏は語った。
「水牛や牛を放牧する場所があまりない新しい環境に適応することは難しい」Kien氏はそう述べるとともに、家畜を供犠することはこの民族にとって重要な儀礼的な役割があると付け加えた。
「こうした習慣を変えなければならない」、Kien氏はAFP通信にそう話した。
ソンラーダムはハノイの西およそ300キロに建設されており、総工費は26億ドル(約3,000億円)、電力不足のベトナム国内に2012年から電気を供給する。最終的な発電能力は2400メガワットである。
ベトナム政府は、ソンラーダム事業は、東南アジアで最も高い経済成長を遂げているベトナムにとって死活的に重要だと捉えている。電力需要の60パーセントが水力発電に依存しているからである。
しかしながら、このプロジェクトは、地震が起きやすい場所にあること、環境や9万1000人の生計に害をもたらすとして批判にさらされ論議を呼んでいる。9万1000人の住民たちは2010年に貯水されるダム湖によって立ち退かされる。
これまでのところ8,500人が新しい村に移ったが、村人たちに、長年続いている習慣を変えさせ、先祖の埋葬地を放棄させ、経済活動を変化させることを強いることに懸念が持ち上がっている。
政府系新聞のラオドン紙は、村人の1人であるQuang Phu Khu氏のインタビューを引用して、「新しい土地には農業のための水がなく、私たちの生活を困難にしている」と書いている。
しかし、Kein氏は、この100世帯に移転地に戻るよう働きかけ、畜産のための土地をもっと与えると語った。「それは困難なことではある。しかし、我々はベストを尽くし、人々が幸せになることを信じている」。