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メコンNGO>雲南のNGOリーダーがゴールドマン環境賞受賞

メコン河開発メールニュース 2006年4月26日

昨年のラオスのNGO代表ソンバット氏のマグサイサイ賞受賞に続いて、またまた嬉しいニュースです。

中国・雲南省で環境保護や政策提言活動を続けているNGOグリーン・ウォーターシェッドの干暁剛代表が、環境分野のノーベル賞と呼ばれるゴールドマン環境賞を受賞しました。中国では三峡ダムに異議を唱えた戴晴(ダイ・チン)氏以来の受賞となります。

以下の記事にあるように、干氏らの拉市海での活動は、住民が政策決定に参加できるようにした点で国内外で高く評価されています。一方で、干氏は、メコン河本流(瀾滄江)やサルウィン川(怒江)のダムによる社会影響を調査して対応を訴えたため、当局から睨まれて活動が困難な部分もあると聞いています。

今回の受賞が、干氏らの活動に対する政府当局の理解と評価を高め、住民主体の自然資源利用の尊重につながることを期待したいと思います。

以下、メコン・ウォッチの大澤香織(昆明駐在)による翻訳記事です。

環境保護活動家、危機に瀕した流域を守る

(2006年4月25日、チャイナ・デイリー、Liu Jun記者)

玉龍雪山は、中国西南の雲南省、麗江で、もっとも観光客を惹きつける場所だ。

しかし観光業の成長は予想外の副作用をもたらした。大量の乗用車と、観光客の騒音が、かつては玉龍雪山の奥深くに暮らしていた多くのクマを、麗江から20kmほどの拉市海(ラシハイ)にしばしばやって来させたのだ。

生息域が狭くなり、食糧が足りなくなったため、クマは現地のイ族の生活に影響を与え始めている。一度、クマは100頭もの家畜の山羊を襲ったことがあった。

イ族の人々はかつて、熊狩りにプライドをもっていた。しかし今ではクマを追いかけるかわりに、地元政府と座って話し合わなければならない。クマは国の保護と拉市海自然保護区のもとにあるからだ。1998年以降、自然保護区での漁業と狩猟は禁止された。

地元政府は補償を支払うだけの資金がなかった。しかし交渉により政府は村人と家畜の飲み水の問題を解決するためのパイプライン・ネットワーク建設費用として10000元(1233ドル)を捻出した。

一方で、村人は、村人であろうが外部者であろうが、クマを獲ってはいけないと決めた。

毎年、40頭以上の山羊がクマに食べられるが、しかし現地の人々はクマの生存は彼らの保護の努力によるものだし、それ以上、クマは人々に被害をもたらさない、と言う。

「地元の人々が決定をしたため、彼らはそれを実行するのに熱心なのです」と、雲南省昆明市の環境NGO代表、于暁剛(ユ・シャオガン)氏は言う。

住民の声が聞き入れられる

しかし1998年には情況はまったく違っていた。この年、于氏は博士論文の調査のため拉市海を訪れ、住民たちが夜間に鳥を獲り、漁業をしているのに気がついた。

冬には魚が大きくなり、麗江で高く売れる。住民たち、主にナシ族とイ族などの少数民族は、伝統的に冬に漁業をしていた。

この地域はまた、冬にはズグロカモメ、インドガン、アカツクシガモなど10万羽以上、165種類の渡り鳥の飛来地として重要であった。

1998年、雲南省政府は湿地のエコシステム保護のため、麗江拉市海高原湿地自然保護区を設立した。

しかしこの65平方kmの自然保護区には、30万人もの住民が暮らしていた。

渡り鳥のエサを確保するため、冬の漁業は禁止された。かわりに春の漁業は許可された。しかしすぐに問題があらわれた。鳥が去っても、春は魚の産卵期なのだ。

さらに悪いことに1998年、湖から麗江の古城と新しい都市へ導水する事業が完成した。このダムは地元の農地を水没させ、わずかな補償金は新たな生計手段を確保するのに十分ではなかった。

「この地域は、国の流域開発によって押し付けられる典型的問題に直面しました」と于氏は言う。大部分が農民である上流のコミュニティの利益は、下流の都市の経済的利益のために犠牲にされた。

于氏は、ダム建設や自然保護区設立のための政策決定プロセスが、地元の人々の声を聞いていない、と言う。実行可能性(FS)調査には地元の人々の生活や環境、エコロジーへの影響分析はまったく含まれていなかった。

2000年、グリーン・ウォーターシェッド(参加型流域管理研究推進センター)は、地元政府と住民とともに拉市海における持続可能な開発を探る活動を始めた。

政府と村民委員会、個人の村人の責任で拉市海地区管理協会が作られた。会議や書面により、住民は政策決定プロセスに含まれ、地元の開発について自分たちで決定するプロセスに含まれるようになった。

2年後、冬の間の漁業禁止が撤回され漁業資源も徐々に回復した。そして2003年、ふたたび新たな導水計画が提案された際、地元政府は住民の強い懸念の声により、計画を拒否した。

拉市海のプロジェクトは、中国のトップ10の持続可能な開発プロジェクトとされている。

「地元住民はさまざまな意味で参加を実現しています」と于氏は説明する。「労働しかしていなかった時には、住民は事業についてほとんど何もできないと感じていました。しかし知的に参加するようになると、住民は金銭的補償をもらわずとも、最終決定を守るようになるでしょう」。

住民が、拉市海や他の流域で、政策決定プロセスに発言できるように助けた彼の努力により、于氏は昨日(4月24日)、カルフォルニア州サンフランシスコで、ゴールドマン環境賞を受賞した。

1990年にリチャード N ゴールドマンによって設立されたゴールドマン環境賞は、草の根の環境活動家を表彰する世界最大の賞だ。

「于氏は弱い立場にある人々とともに働き、彼らに開発プロセスにおける“声”を与えた。彼のアプローチは中国が、自然資源や人々を犠牲にしない経済発展を達成するのを助けるだろう」と、ワールドウォッチ研究所(WWI)のクリストファー・フラヴィン氏は語る。WWIは地球規模の環境情況に着目した最初のシンクタンクのひとつで、于氏をこの賞に推した。

1974年、レスターブラウン氏に設立された独立した研究組織として、ワールドウォッチ研究所は、環境と社会問題について地球規模かつ学際的な視点から分析を行い、議論を提供している。

楽観的な男

于氏は北京に生まれ、幼い頃に新華社のジャーナリストである両親とともに雲南に越してきた。

雲南で暮らした歳月により、彼は軽い訛りと真っ黒な日焼けをしているが、各5000人以上の人口をもつ25の少数民族の故郷、雲南への愛情もまた育まれた。

雲南大学では中国文学を専攻したが、雲南省社会科学院民族学研究所での仕事を通じ、于氏は多くの少数民族地区に足を運んだ。

「多くの地域では地元の住民の伝統的なエコシステム保護によって自然が保たれている」と于氏はアメリカに発つ前日の晩、チャイナ・デイリーに語った。対照的に、多くの発展した地域では自然資源は枯渇している。

于氏は1991年に修士号と博士号取得のためタイのアジア工科大学(AIT)に学び、こうした負の側面の発見に当惑した。10年間にわたる東南アジア諸国と中国西南での行き来によって、彼は自然資源と流域管理計画についての修士号と博士号を終えた。

「この10年は、わたしのキャリアを決定的に方向づけました」と于氏は語る。「研究から、少数民族の伝統的文化はわれわれの開発や保護のオルタナティブとなる可能性があることが示されました。生物多様性と文化は、どちらも大切なのです」。

ゴールドマン環境賞によって与えられた12万5000ドルをどのように使うつもりかと尋ねると、于氏は、仕事によってもたらされるリスクに適切に対処する方法を探したい、と応えた。

グリーン・ウォーターシェッドには8名のスタッフがいて、うち3名は退職者で、1名がボランティア、4名が正式なスタッフだ。

スタッフはしばしば崖崩れの危険のある道をともに車で移動する。道がなければ、于氏とスタッフはケーブルでつながれて険しい峡谷を渡る。自然保護区の中心に入れば、簡単に迷ってしまいそうになり、迷えば助かる望みはない。

仕事上の慰めと満足は、彼が助けた現地の住民からの感謝と友情だという。

2002年、于氏とスタッフは瀾滄江中流に1993年に最初に完成した漫湾水力発電所で調査を行った。

彼の漫湾ダム社会影響についての報告書は、中国の朱鎔基前首相の知るところとなり、前首相は、地元政府にすぐに地元住民の貧困問題に対処するよう命じた。

その結果、雲南政府は7000万元(860万米ドル)を追加的な住民ための移転費用として捻出した。

「現地の住民は今も、今日でさえ私に電話をくれ、新しい家に招いてくれるのです」と于氏は言う。

2002年、于氏は日本の湖沼保全管理の会議に出席した。彼は会議の開かれた琵琶湖畔で、住民の情熱に深い印象を受けた。湖が地元の工場により汚染されたとき、地元の僧でさえ抗議に参加したという。ミュージシャンは湖のための歌をつくり、子供たちに教えた。あるアメリカ人の画家も会議に参加し、彼が過去3年間、湖のために描いた絵を見せた。

「こうした情熱は中国ではまれなことです」と于氏は言う。「だからこそ、わたしたちは、地元のコミュニティがより効果的に流域管理に参加できるように、政府と草の根、両方のレベルで総合的な流域管理を推進しているのです」。

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