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怒江ダム開発>三江併流が再び重点観察保護事業に

メコン河開発メールニュース 2006年8月7日

2006年7月8日に発信しましたメールニュース『怒江ダム開発>世界遺産委員会(日本政府)に申し入れ』の続報です。

7月8日のメールニュースでお伝えしましたように、リトアニアで開催された世界遺産委員会年次会議を前に、メコン・ウォッチは、同委員会のメンバーである日本政府に対して、怒江連続ダム計画が進む中国西部の「三江併流」世界自然遺産を、「危機にさらされている世界遺産リスト」に指定するなどして、適切な措置を採るよう要望書を提出致しました。

リトアニアでの年次会議で、世界遺産委員会は上記リストへの指定は見送りましたが、怒江ダム計画が三江併流世界自然遺産の生態系を脅かしかねないと引き続き懸念を表明しました。

以下は、リトアニアの世界遺産委員会を受けた中国青年報の記事を、メコン・ウォッチの大澤香織が翻訳したものです。

三江併流が世界遺産委員会の重点観察保護事業に―水力発電が生態系を脅かす

(2006年7月18日、中国青年報
張可佳記者―北京)

数日前、リトアニアで開かれた第30回世界遺産委員会の年次会において、中国については四川省にあるパンダ生息地の自然遺産としての登録が決まり、国中が喜びに沸いた。しかし、会議のもうひとつ別のニュースは人々を緊張させた。3年前にようやく世界自然遺産に登録された三江併流が、重点観察保護事業に挙げられたのだ。世界自然保護連盟(IUCN)と世界遺産委員会が派遣した三江併流遺産の専門家グループの報告書は、三江併流世界自然遺産が直面している主要な脅威には以下が含まれると指摘する。現在、計画されている水力発電開発、鉱山開発、ダム建設などの経済発展の需要に応えるため境界変更の計画があること、観光業の発展。

【水力発電開発は生態環境の変化を生む可能性がある】

三江併流は2003年に『世界遺産リスト』に挙げられた後、連続して3回世界遺産委員会の場で重点観察保護事業になっている。会議では中国政府に対して2007年2月1日以前に十分な報告を提供することが求められ、今後、年次会における更なる審議を経て、三江併流を危機に瀕している世界遺産リストに列挙するかどうかが決定される。

2006年4月5日から14日、世界自然保護連盟(IUCN)と世界遺産委員会は、専門家グループを雲南省に派遣し、ダム建設が世界遺産地域に与える影響の可能性について評価を行った。専門家グループが提出した報告書は、三江併流世界自然遺産が直面している主要な脅威には以下が含まれると指摘する。現在、計画中の水力発電開発、鉱山開発、ダム建設など経済発展の需要に応えるた境界変更の計画があること、観光業の発展である。「これらの提案によれば、もとの世界遺産地域の面積は20%も減少する。またこれは将来、直接に世界自然遺産の内実と完全性に影響を与えるだろう」。

世界遺産委員会年次会の書類によれば、第29回世界遺産年次会での関連決議に応えるため、2006年1月25日、中国の関連機関は三江併流地域で行われている大規模計画と建設の現状についての報告書を提出し、この地域内でのダム建設は行わず、近隣区域で水力発電開発を準備する計画であることを明らかにした。

金沙江下流には9基のダムが建設予定で、2003年に三江併流が世界遺産として申請された際は、11基が建設される予定であったが、そのうち2基は世界遺産への影響を懸念されて取り消された。また瀾滄江には11基のダムがあり、うち5基は取り消されている。さらに怒江には中流に3基の水力発電所が計画中だ。現在、これらの計画はすべて環境影響評価を準備中であり、中央政府はこれらの水力発電計画を承認しておらず、また建設もされていない。

専門家グループは、水力発電開発の探索活動が怒江に与える影響は明らかだと指摘する。もしダムが建設、運行されれば、必ずその美的価値に重大な影響を与え、この自然の河川は一連のダム湖になるだろう、と。

専門家グループは、丙中洛(ビンジョンルオ)における鉱山開発の暫定停止を含め、現地で遺産を保護するための一連の措置が採られていると述べる一方、もし、水力発電開発に関する環境影響評価報告が提出されなければ、水没地域住民の移転、道路の拡張、魚類や他の生物種の移転後の生息地、生態系の変化、水文システムの改変がもたらす生態系の変化、現地の地震活動への影響など、世界遺産にとっての脅威になるか、あるいは間接的な影響をもたらすかどうかについての要素を確定することはできない、と指摘している。

【境界変更は保護地域の分裂を引き起こす】

現地調査の終了前、専門家グループは雲南省の関連政府職員から、三江併流世界遺産の現在の境界と、将来、境界変更後の対照図を示された。記者が計画にある境界変更後の地図から見たところでは、三江併流遺産地域は8地域のうち7地域に調整が及んでいた。この調整は現在、提案し、承認を待っている段階だという。

会議の書類によれば、三江併流が世界遺産リストに入った時、世界自然保護連盟(IUCN)はきわめて重要な生態的価値のあるコアゾーンから明確に境界を定めた。
このため専門家グループは特にこうした境界変更に注意を払っている。

専門家は「境界調整のなかで、高黎貢山国家級保護地区の分割がもっとも重大な問題である。」と指摘する。高黎貢山は中国ビルマ国境の山沿いに広がり、自然風景名勝区の重要なエコロジー回廊である。だが、現在、この保護地域は中国―ビルマ国境に沿って縮小されようとしており、このまま北高黎貢山と南部の保護区、西側のビルマ領内に分割されれば、野生動物の生息環境の破壊に繋がる。

別の重大な変更は、世界遺産に含まれる紅山地区の縮水から云嶺地域までの境界変更である。世界遺産委員会の資料には、専門家グループは二つの新たな地域(南騰衝の高黎貢山自然保護地区と大理蒼山自然保護区)が世界遺産内に加えられることについて疑問を呈している。これらはすべて「これまで持続的に利用され、人の居住地域であり、さらなる審査によって世界自然保護連盟に規定される一類か二類保護区(もっとも注意すべき保護区)であるか否かを判断しなければならない」と示す。

どうやらこれらの境界調整は、鉱山開発とダム建設が世界遺産の範囲内に含まれないようにするための措置であるようだ。専門家グループは現地で比較的大規模な銅と鉛と亜鉛の鉱山が開発されると知らされており、すでに計画と環境影響評価が準備中だと示している。現地の政府職員は、すべての開発は世界遺産保護の承諾と国家の法律を遵守している、と強調するが、専門家グループは「これと実状は矛盾している」と認識している。

委員会では、境界変更の問題をたいへん重視しており、中国政府に対して2007年2月1日までに報告書を提出し、世界遺産地域の調整を明確にし、地質学的な地図の提供を含め、現地の鉱山開発の情況についての詳細な情報を提供し、最終的にダムが世界遺産保護の水準を批准しているか、特に三江併流の傑出し、世界的に普遍的な完全性に影響を与えないか、次の年次会でさらなる審議を行う予定だ。

【中国政府は世界遺産地域ではいかなる大型事業も行わないと表明】

専門家グループは、関連企業がまだ怒江ダム計画と環境影響評価報告を公開していない上、遺産地域の範囲が確定されていないことから、今回の現地調査では、ダムが世界遺産に影響をもたらすか判断するのは困難だと示した。

世界遺産委員会の第30回年次会の文書には、第一歩の決議として「委員会はこの報告書を審査し、第29回年次会の決議も考慮した。中国が世界遺産を保護するために行っている努力を称賛すると共に、中国政府に対し、資金提供を含めた遺産地域の保護と管理を行うよう要請した。また世界遺産委員会が今後も三江併流に重大な関心を払い、水力発電開発が遺産、及び下流のコミュニティに与える潜在的影響を考慮すると延べ、世界遺産内へ影響を及ぼすダム建設について考慮し、この遺産が危機に瀕している遺産リストに加えられる可能性があることを示唆した」。

新華社の報道によれば、国家建設部城建司の副司長で、第30回世界遺産大会の中国代表団メンバーである王鳳武氏は、三江併流がこれほど広範な関心を集めているのは、まず三江併流遺産の価値が世界的に重要であり、国際社会が三江併流に注目しているからである、と述べた。さらに三江併流の面積は比較的広い地域にまたがり、怒江、瀾滄江、金沙江の3つの大河にまたがる。三江併流遺産地域の周囲、及び3本の大河上のいかなる大型事業建設も、遺産に対して直接的な影響をもたらす可能性がある、と述べた。

王鳳武氏は、中国はこうした大型事業建設プロジェクトに厳格な審査プロセスを定めている、と述べる。世界遺産委員会年次会の前に、中国代表団は世界遺産センターに説明書を提出し、「境界変更」については国は何の認可もしておらず、金沙江、怒江上のいかなる水力発電プロジェクトもまだ国家の承認を得ていない、と説明した。これは中国が三江併流遺産地域あるいは周辺地域にはいかなる大型事業も建設しないと明確に表示したものだ。中国代表団のメンバーのひとりは、地方政府は世界遺産地域に対するいかなる改変の権力も持たない、と示した。
世界遺産委員会は今回、はっきりした「イエローカード」を出したわけではないが、わずかな希望は、次の年次会では三江併流に関する良いニュースが聞かれるであろう期待をもたらしたことだ。

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