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セサン川ダム>ベトナムがカンボジア領内に計画

メコン河開発メールニュース 2006年10月17日

最近は、中国の投資や融資による他の発展途上国での環境・社会問題が懸念されていますが、メコン河流域国で見ると、中国やタイと並んで、ベトナムの資金によるラオスやカンボジアでの破壊的な開発計画が目立っています。

以下、メコン河最大の支流であり、ベトナムからカンボジアに流れるセサン・スレポック川で、ベトナムが進めているダム計画について、メコン・ウォッチの後藤歩の解説と翻訳記事です。


ベトナムからカンボジアに流れるメコン河最大の支流であるセサン川とスレポック川の上流には、次々とダムが建設されています。セサン川のベトナム領内に建設された最初の大規模ダム、ヤリ滝ダムによる下流カンボジア、ラタナキリ州への被害は、完成から6年を経た今でも継続しているにも関わらず、影響の緩和や被害に苦しむ住民への補償などは一切おこなわれていません。

このような状況にも関わらず、ベトナム政府は、今度はベトナム領内だけでなく、カンボジア領内のセサン川に5つのダム建設を提案しました。発電される電力は全てベトナムへ輸出されることが計画されています。

6年以上被害を受けつづけている現地の住民や支援を行うNGOは、被害の更なる悪化に強い懸念を示しており、適切な環境社会配慮および事業の意思決定プロセスへの参加を求めていますが、依然それらは実現されていません。

カンボジアの川で計画されるベトナム融資のダム建設

Sam Rith記者、Cat Barton記者
プノンペンポスト、2006年9月21日-10月5日号

上空から見ると、セサン川は水でできたリボンのように、ベトナムから南へとうねりながらカンボジアの北東部を抜け、(カンボジアの)ストゥントレンでメコン河に合流する。

しかし地上では、現実は絵画のようではない。ベトナム政府は、セサン川のカンボジア領内に5つの新たなダム建設を提案した。そのうちの最初のダム、420メガワットの(Lower)Sesan 2水力発電ダムの建設は2008年に始まる予定だ。

ベトナム領内のセサン川上流では既に2つの水力発電ダムが建設されており、スレポック川では3つのダムが建設されている。スレポック川は、カンボジア領内のストゥントレンの東30km地点でセサン川と合流する川である。これらのダムが(下流の)コミュニティへ与えてきた影響は甚大であり、地元カンボジアの人々や環境NGOは、さらに多くのダム建設が起こす可能性のある問題(協議の場の確保から補償問題まで)を懸念している。

「スレポック川の水によって村、家、学校、寺院、道路がひどく浸水し、状況は日毎に悪化している」とセサン・スレポック・セコン保護ネットワーク(3SPN)は8月16日に出したプレスリリースで述べている。

ベトナムは発電を目的としてセサン川の利用可能性に関する数多くの調査をおこなってきた、と産業工業エネルギー省(MIME)のBun Narith副総局長は述べた。
これらの調査結果が最近カンボジア政府に渡された。

「私たちは、ベトナム政府が提案した5つのダム事業に関して詳細を調査しています」「ベトナムは、5つのダム建設の可能性を示しました。カンボジア−ベトナム国境における(Lower) Sesan 1(90MW)、ストゥントレン州における(Lower)Sesan 2(420MW)、ラタナキリ州における(Lower) Sesan 3(180MW)、そしてPreak Leang 1 (64MW) と Preak Leang 2 (180MW)です」。

10億ドル以上のコストがかかるダムはベトナム政府の資金によって建設され、発電された電気は全てベトナムへ送られる。カンボジアはその後、ベトナムから電力を輸入することになる、とMIMEのNarith副総局長は述べた。

専門家は、この取り決めでは環境社会被害はカンボジア側で起きるが、ダムの恩恵はベトナム側に生じることになると懸念を示している。利益の不公平な分配は、ダムに関する事業地どこにでも見られる悩ましい問題だ。専門家は、セサン川のカンボジア領内におけるダム建設は、大規模ダム建設の利益に関する国際的な論争にカンボジアを引き込むことになると述べた。

2000年の世界ダム委員会(WCD)の報告書は、「今日、大規模なダムを建設するか否かの決定が現地レベルまたは国レベルだけのものであることは稀である」と述べる。「論争は、ダムのコストベネフィットの評価というローカルなプロセスから一変し、ダム一般が開発の戦略また選択肢として国際的な議論の焦点となっている」。

大きな不公正

世界各地における過去の事例からは、水力発電開発には必ずトレードオフがあることが分かる、と国際河川ネットワーク(IRN)のCarl Middleton氏は述べた。

「現地のコミュニティや影響を受ける人びととの協議なしに、あまりにも多くの水力発電開発がおこなわれ、事業の利益配分に大きな不公正を生む結果につながった。電力供給により電力会社や都市の消費者は得をしたが、現地のコミュニティは自分たちの土地、自然資源、そして生活の喪失に苦しんできた」。

ベトナム電力公社(EVN)やその取引先がベトナム領内のスレポック川に建設した3つの水力発電ダム建設によって得たであろう利益は、(スレポック川)下流に住むカンボジアの村人とは共有されていない。8月12日から村人の土地は水浸しとなり、9月中旬の今現在、ラタナキリ州の1000ヘクタール以上の稲作地が水 浸しとなっている。

「通常より降雨量が多かったことは確かですが、それでもこの洪水は不自然です」
「(この洪水は)上流のベトナムにつくられた3つのダムによる水流の変化によって引き起こされたのです」3SPNのコーディネーターKim Sangha氏は述べた。

ベトナム政府がセサン川にダムを作る許可を与えられるか否かは現在のところ分からないが、現地の住民は既に計画に憤慨している。

深刻な影響

「カンボジアの人々は、上流に既にできた3つのダムの被害に苦しんでいます」、Sangha氏は述べた。「カンボジア政府がベトナム政府のようにダムを建設すれば、この場所における環境社会影響はますます悪化します」。現地の住民と専門家は、セサン川におけるダム建設はこの地域の環境を変えてしまい、広い範囲で社会影響をもたらすと懸念している。

「もしこれ以上ダムができれば、この地域は完全に変ってしまうでしょう」
Sangha氏は言う。「もし政府がダム以外の選択肢が全くないと考えているのであれば、影響住民をまず家や道路、学校、病院、市場などがある安全な場所へ移転させるべきです」。

しかし、プノンペン周辺などにおける開発を目的としたカンボジア政府による住民移転の過去の実績は国際的に非難されている。

新しいダムの影響を受けるどんなコミュニティとも同じように、セサン川に住むコミュニティは事業が始まる前の意思決定への完全な参加を認められるべきである、と国際河川ネットワークのMiddleton氏は述べた。

「参加のプロセスは透明かつ包括的で、事業の損益の配分に関して全ての関係者が合意できるよう確保されているべきです」「残念ながら、世界的に大規模水力発電開発においては(影響を受ける)コミュニティはほとんど協議の機会を与えられず、公正に割り当てられるべき利益も受けないまま、土地、自然資源、生活の喪失などほとんどのリスクの負担を担うことになります」。

在カンボジアベトナム大使館のNguyen Son Thuy参事官は、9月5日、8月22日のNguyen Sinh Hung副首相の訪問以降、カンボジアにおけるダム建設に関する詳細情報は持っていないと述べた。

「水力発電ダムだけがベトナムとカンボジア間で話された議題ではありません」
「他にもたくさんの分野で話し会うべきことがあります」、と参事官は述べた。

Nguyen Sinh Hung副首相の訪問は両国の友好関係強化に焦点が当てられたと参事官は述べた。経済問題や貿易交渉、そして水力発電ダムなどのインフラ事業に関する協力の試みは、そのあとの優先事項だった。

「両国は共に発展するため、投資や工業・経済協力の主な原則に合意したに過ぎません」、とNguyen Son Thuy参事官は述べた。「ただ、現在両国は更なる詳細を詰めるために省庁レベルで会合をもたなければなりません」。

産業工業エネルギー省(MIME)は、セサン川のダムに関する交渉の詳細はベトナムとカンボジアの間で進むと述べた。影響を受ける住民を計画のプロセスに含めるか否かについては言及しなかった。

「両国は5つのダム事業に関して、影響やコストなど詳細を引き続き調査します」
「詳細調査が終了し、両国が合意に達してから、それぞれのダムの建設を始めます」とMIMEのNarith副総局長は述べた。

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