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中国とメコン>拡大する援助と投資

メコン河開発メールニュース 2006年10月28日

メコン河流域国を含むアジア地域への中国からの援助や投資が拡大しています。以下のニューヨーク・タイムズの記事にあるように、中国はこれまでの援助国と違って、環境だの人権だのうるさいことを言わずにお金をくれるという発展途上国政府の声がマスメディアにしばしば紹介されます。しかし、実際に環境破壊を受け、人権を侵害されている人たちの声は報道されません。そのことによって、「我々も環境だの人権だのうるさいことは言わずに援助すべきだ」などという短絡的な発想につながることの方が、中国の脅威よりも、もっと脅威だと思います。

以下、メコン・ウォッチの大澤香織の翻訳です。

中国、アジア向け援助の主要プレーヤーへ

2006年9月17日、ニューヨーク・タイムズ

深い湿気に包まれたカンボジア北部、ストゥントレンではカヌーが主な交通手段だ。完成間近の橋へと建設資材を運ぶため、中国の建設会社が現地の労働者に指示を出している。

近くでは中国上海建設グループが雄大なメコン河へコンクリート製のパイロン(橋梁工事用の目印となる三角コーン)を次々に沈めている。ここは中国昆明市からラオスを通ってタイ湾岸に位置するカンボジアのシハヌークビル港までを繋ぐ1900キロメートルのルートだ。

中国からアジア貧困国にむけての海外援助の新しいシンボルとして、辺境地域でのこの困難な建設作業は被援助国と中国、双方のためになるとされている。

「これはわが国(中国)政府がカンボジア人のためにやっていることだ」と、26歳のGe Zhenさんは答える。彼はこの4年がかりの事業に携わる、中国人技術者50人と労働者250人の1人だ。

中国は1兆ドル近い外貨準備高と東南アジアとの結びつきを強めようとする熱意を背景に、巨大プロジェクトのための巨額の援助を始めている。かつてこうした援助はすべて旧西側諸国(訳注:原文はWestern)―世界銀行、アジア開発銀行、アメリカ、日本によって占められてきた。

今週、世界銀行はシンガポールで会合を開くが、かつて主要な顧客だった中国は、お株を奪い、世銀のアジア向け援助ビジネスを揺るがし始めている。

カンボジア、ラオス、ビルマのような貧困国やフィリピンのような中程度貧困国にとって、中国からの借款は旧西側諸国の複雑な借款よりも魅力的だ。

大型プロジェクトに与えられる中国からの開発資金が環境水準やコミュニティの移転などの条件(コンディショナリティ)に縛られることはきわめてまれだ。

さらに中国の援助は現在、シンガポールで熱い議論の的になっている世銀総裁のポール・ウォルフォリッツの高まる圧力による罰則を受けることもない。中国の資金援助は、世銀と違って高くつくコンサルテーションなどを要求することもほとんどない。

中国は、低開発地域におけるインフラ建設――道路、港湾、橋――から利益を得ている。こうした低開発地域は同時に成長地域でもあり、中国の辺境から中央へと天然資源を運び、貿易を拡大するのに欠かせない。

アジア開発銀行の金立群(Jin Liqun)副総裁、中国財務部の前副大臣はマニラ本部でのインタビューに対して、中国は豊かになるに従い、資本をひきつけ、地域開発を助けるようになるだろうと答えた。

「中国は外部資金をひきつけ、同時に地域の途上国におけるインフラ事業に資金を出すことでバランスをとっている。隣人の成長を助けることは悪いことではない」と金副総裁は言う。

援助は中国自身の利益にもなる、と副総裁は言う。「中国は自国経済の発展のため安定した隣人を望んでいる」とためらわずに言う。

中国経済の成長に従い、その海外援助も伸びるだろう、金副総裁は言う。

アジア開発銀行のフィリピン担当課長(カントリー・ディレクター)のTomCrouch氏は「途上国開発援助の風景を一変させる新たな根本的なプレーヤーが現れ始めている」と述べる。

カンボジアは、昨年(2005年)春のフンセン首相による中国の温家宝首相訪問によって『何の条件もつかない』6億ドルの借款を得た。

中国からの資金は首都プノンペン附近の2本の主要な橋の建設に使用され、橋は道路網や水力発電所、カンボジアをベトナムやタイと繋ぐ光ファイバー・ネットワークなどに組み込まれる計画である。

対照的に、フンセン首相は伝統的な他の主要ドナーは今年、合計で中国よりわずかに多い6億100万ドルの支払いを約束しただけだ、と指摘した。

そしてその6億100万ドルは世銀の反汚職条項を含む条件つきだ。

世銀からカンボジアに向けた約7000万ドル相当の4つのプログラムは最近、入札での談合が明らかになったことで、棚上げされた。

フィリピンでも中国は派手な振る舞いをしている。

グロリア・マカバガル・アロヨ大統領は先月、今後3年間にわたって毎年、中国輸出入銀行から20億ドルの借款が与えられることを発表した。

これは世界銀行とアジア開発銀行からのそれぞれ2億ドルのオファーを色褪せさせ、日本と交渉中の10億ドルを軽くしのぐ。

表向き、世界銀行は中国からの拡大する援助プログラムに対して何の懸念も表していない。

「中国からこれらの国々に対するより重要な影響は、援助よりむしろ貿易だ」と世銀の東アジア・太平洋チーフ・エコノミスト、Homi Kharas氏は言う。中国が主要ターゲットとしている援助の性質、主にインフラストラクチャーは地域のより統合された貿易を助け、貧困国のためになる、という。

だが旧西側諸国の援助官僚は先月マニラでの昼食時に国家経済開発局(NationalEconomic and Development Authority)のRomulo Neri氏が中国からの20億ドルの援助パッケージを他の援助と比較するプレゼンテーションをした際に、皆あっけにとられた、と述べる。

中国の援助規模はその場に衝撃を与えた。理由の一部はそのプレゼンテーションが日本、アメリカ、そして中国も株主であるアジア開発銀行の本部を置いている国で行われたからだ。

Neri氏は100以上の援助国・機関が集まった昼食会で、旧西側援助国にとっては常識である高額のコンサルタント料が、中国からの資金援助にはつかないことに惹かれている、と述べた。

これまでアメリカにひいきされてきたフィリピンは、2004年イラクからの軍隊をアロヨ大統領が撤退させたことで、この地位から転落している。

中国はその隙間をあっという間に埋め、Nari氏の事務所に保管されている援助覚書によれば多くのプロジェクトが12月の温家宝首相によるマニラ訪問で締結されるとみられている。これには2本の長距離道路とマニラへの水供給、マニラ北部と4つの県(provinces)を結ぶ鉄道事業へのさらなる資金援助を含んでいる。

カンボジアのような国での中国の建設事業は、中国が自然資源へのアクセスを確保するという目的にもかなうようだ。

カンボジアの首都、プノンペンにいる旧西側諸国の外交官や援助官僚は、カンボジアは最近、中国に年間7億ドルから10億ドル相当を産出する5つの沿岸石油田の使用権を与えたとみている。Chevronはすでにカンボジアの油田のひとつで探査掘削を行う合意に達している。

中国の隣人である資源豊かなビルマでは、北京政府はやりたい放題だ。援助における中国の唯一の競争相手はインドである。中国は、ダムと中国の南側とビルマ国内を結ぶ道路を建設しており、現在、ビルマ西岸に大型外洋船が停泊できる港湾も建設していると言われている。

ビルマはかつて世界銀行から多くの借款を行ったが、現在、世銀はこの国で何の借款プログラムももっていない、と世銀エコノミストのKharas氏は述べる。アメリカはビルマが抑圧的な軍事政権をもつため一切、政府援助は提供していない。

ラオスでは、中国は国の背骨となる幹線道路を建設しており、実際、成し遂げたこと以上の影響力を持っている。

昨年、世界銀行は長年にわたって論争を引き起こしてきた環境への影響調査を経て、ラオスのナムトゥン2ダムへの融資を決定した。背景には、中国がかわりに援助をする準備があることを知っていたからだ、と今では世銀職員は述べる。

中国が貧困国のドナーとして有難がられているのは、何のコンディショナリティもつけないというアプローチだけにとどまらない。別の理由は、他のドナーがやりたがらない辺境地域での複雑な事業にも進んで手をつけるからだ。

Geさんとその仲間たちが4年間、汗をかいて建設してきた橋は、4月には気温が摂氏42度、華氏106度にまで上昇する東南アジアの片隅で行われてきた。この地域はクメール・ルージュが最初に権力を握った場所である。橋から伸びるのは南のカラテという村、北はラオス国境に続く、真新しい208キロメートルの道路であ
る。

「わたしが最初に4年前ここに来た時は朝、クラティエで朝食をとり、だいたい夕飯の頃かな?ここにたどり着いたものだ。8時間だ」とGeさんは言う。「今では2時間で着く」。

旧西側諸国のドナーは中国がプロジェクトに関する情報を何も出さず、世界銀行が貧困国のために援助を調整する伝統的な場に出席することを拒んでいることについて不満を述べる。ドナーは中国が約束どおり事業を完全に履行できるかについて不信感をもっている。

「現在のところ、われわれは中国がこの国でどのようなプロジェクトやプログラムを行っているのかはっきりとは知らない」と、在カンボジア日本大使、高橋文明氏は、最近、プノンペンでのスピーチのなかで述べた。

「われわれは中国がドナー間の調整枠組みのなかに積極的に参加することを望んでいる」。

中国のカンボジアへの気前の良さはワシントンの注目をひいている。アメリカ合衆国海軍は、来年はじめにもシハヌークビルを訪問する計画をたてており、これはクメール・ルージュ(ポルポト派)が1975年に政権を握って以来初の出来事である。

ワシントンがまだ知らず、知りたいと願っていることは、中国がシハヌークビルの議論になっている大型外洋船が停泊できる港湾に借款を提供するかどうかである。それによって、中国は中東からの石油の輸入が容易になる。

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