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メコン河開発メールニュース 2007年1月26日
昨年12月に中国のNGO三団体と『中国の金融、環境、協調社会』と題したワークショップを開催して以来、中国の公的・民間金融機関の環境社会配慮政策改善についてニュースを流しています。
以下の記事は、昨年12月のワークショップでリソースパーソンだった、地球の友USのミッシェル・チャン・フィシェル氏によるものです。メコン河流域国については、ラオスのダムとビルマの森林について若干の言及があるだけですが、カンボジアやラオスで中国の資金を使って進められているインフラ事業に伴う悪影響を考えると非常に重要な指摘です。
メコン・ウォッチの大澤香織による翻訳ニュースです。
2006年12月22日
ミッシェル・チャン・フィシェル氏
チャイナ・ダイアログ
国際的な銀行は現在、世界基準の環境融資政策を持っている、とミシェル・チャン・フィシェル氏は語る。もし北京政府が、国際的な良い行動を尊重するつもりがあるのなら、中国の金融機関も同じことをしなければならない。
「もし北京政府の一番必要なものが資源へのアクセスだとすれば、国際的な良い行動を尊重し、協調社会を促進することは非常に重要である」。
北京政府の「走出去」政策のもと、中国企業は現在、活発に世界中から木材、鉱山資源、石油、ガスなどを購入している。しかし西側企業はすでに世界で利潤率の高くアクセスのよいほとんどの天然資源採掘権を獲得してしまっている。中国企業の多くはよりリスクの高く、政治的に不安定であったり、未開な土地に入っていかなければならない。その結果として中国企業は現在、世界でもっとも環境、社会的に問題のある事業に関わっている。
中国企業はよく言われるような環境破壊を生み出しているだけではなく、かつて先進国の企業が生み出してきた地域からの反発をも引き起こしている。例えば、ザンビアでの最近の選挙では、主要な反対勢力の候補が中国の所有する鉱山での危険な労働環境に対する地元の怒りを政治要綱に利用した。
過去、数年間にわたり国際的なNGOは企業に圧力をかけるだけでなく、事業を支える銀行にも圧力をかけてきた。その結果、国際的な銀行は例えばダム、パイプライン、石油事業など特に大型事業の環境社会について融資基準を設けるようになった。
こうした基準の実施は理想とは程遠い。だが基準があることで最低限、問題事業が融資を得るのは困難、あるいは不可能になってきた。基準は、企業が社会的、環境的に無害な事業を計画するための強いインセンティブでもある。いくつかの銀行の基準は、企業に対してコミュニティから懸念を聞くことを融資受け取りの条件にしている。たとえば40以上の銀行により批准されたプロジェクト・ファイナンスの基準である赤道原則は、企業が事業実施の前に影響を受けるコミュニティに対してコンサルテーションを行い、事業実施後に影響を受けた人々が懸念を表明できるよう異議申し立てメカニズムをもうけることを要求している。
赤道原則が大いに支持されたとは言え、彼らは中国の金融機関を引き付けてはいないようだ。さらにいくつかの国際的な銀行とは違い、中国の金融機関は鉱山開発、森林、気候変動などの問題に対しても現在、基準を欠いたままだ。
一般に入手可能なデータによれば、中国の銀行では唯一、中国開発銀行が自行の環境融資基準を設けている。中国輸出入銀行(Chexim)は環境政策を持っていると言われているが、公開されていない。上海銀行のみがUNEP(国連環境計画)の金融機関の環境と持続可能な開発に関する宣言を承認しており、上海浦東銀行が企業責任に関する報告書を発行している。中国の銀行のなかでプロジェクト・ファイナンスに関する赤道原則を採用しているところはない。
しかし中国の銀行は依然として環境リスクの高い取引に関わっている。例えば、中国輸銀(Chexim)は国の海外融資に関する最大の貸し手のひとつであるが、スーダンのメロウェ(Merowe)ダムに融資を行い、現地の5万人の農民を肥沃な河川沿いから不毛の砂漠に移転させた。中国輸銀はラオスのナム・マン3ダムにも融資を行い、1万5000人を移転させる。中国輸銀はさらにパプア・ニューギニアのラム・ニッケル鉱山のマタラジカル(Matallurgical)建設会社に融資を行っており、海への廃棄など環境に多大な悪影響を与える行動を含んでいる。ここでは海洋への重金属砂など人体や環境に有害な物質を含んだ鉱山廃棄物の廃棄が行われている。この鉱山はニューギニア国家漁業局により社会的、経済的、環境的にその進行を認めることのできない非持続可能な事業だと言われている。
先日、中国輸銀は中国機械設備輸出入総公司(the China National Machinery &Equipment Import &
Export Corporation, CMEC)への融資に合意した。この会社はガボンのベリンガ地区の開発を計画している。この地域は世界で2番目に大きな中央アフリカの熱帯雨林に位置し、グリーン・ピースによれば、今後5年から10年という短いあいだにアフリカのサル、ゴリラ、チンパンジーは森林生息地の消失や悪化により、絶滅するだろうとみられている。ベリンガ地区は赤道近くの西アフリカにおいて、チンパンジーやゴリラ保護の地域活動計画における「優先重要地域」だ。かつてはインフラが不整備であることなどからも、商業的な鉱山開発は不可能でありこの地域が脅威にさらされているとは考えられていなかった。
しかし中国輸銀の支えでCMECは港湾や鉄道、2基のダムの建設を計画中だ。
もうひとつの主要な中国の銀行である中国開発銀行(China Development Bank、CDB)は、これまで国内融資のみを行ってきた。しかし現在ではその資産の国際化を目指している。中国開発銀行は公開された環境融資政策を持つ極めて稀な銀行のひとつだ。しかし中国で環境法の遵守を行うのは難しそうだ。中国開発銀行はボルネオ(インドネシア)のオイルパーム・プランテーションに融資を行っている。ここは世界で生物学的にもっとも重要な熱帯雨林で絶滅の危機に瀕しているオラウータンの生息地である。さらに中国とロシアによって進められる環境的に脆弱な極東ロシアにおけるダム、製紙工場、石油パイプライン建設取引の主役である。
国際的にこの問題に関心を持つ人々はすでに中国の銀行に対して警告を鳴らし始めている。
例えば、多くの赤道原則に批准をした銀行は、中国の環境融資基準の欠如により公平さを欠いていることに懸念を表明している。しかし同時に多くの銀行は中国の銀行の株の大部分を購入しており、こうした企業の理事にさえなっている。スコットランドのロイヤル・バンクは中国銀行の20%近い株を、またアメリカ銀行は中国建設銀行の19%もの株を保有している。これほど密接な関わりを持っているのであれば、彼らはただ不満を表明するだけでなく、中国の銀行が環境融資政策を導入するのを促進することができるはずだ。
世界銀行のポール・ウォルフォビッツ総裁は最近、アフリカへの中国からの融資が世銀の融資を上回りはじめ、アフリカの債務を悪化させているなど中国からの融資について懸念を表明した。総裁は、こうした債務がほとんど世銀によって生み出された(西側の企業にとってたいへん利益となるため)ものであるということを認めていない。ウォルフォビッツ総裁は、アフリカが中国からの援助を期待し始めていることに驚くべきではない。なぜなら、旧西側諸国の政府は、自らの債務救済の約束も守らず、アフリカに対するさらなる援助や譲渡的融資を行っているのだから。
NGOは中国企業や銀行がより良い環境社会の実施を行うよう働きかけていくべきである(特に、中国内外の影響を受けるコミュニティのために)一方、彼らは先進諸国の消費についてはあまり意識していない。例えば、カメルーン、ビルマ(ミャンマー)、ロシアなどから輸入される木材の大部分は本立て、家具、写真立てその他の製品になって世界中に輸出されている。
だが、結局のところ国際社会からの要求はそれほど重要ではないのかも知れない。中国の銀行は、世界レベルの環境社会融資政策を採用するのが彼らの利益にかなうと認識するであろう。これは、融資のリスクを管理し、より良い融資を行うのに役立つのみならず、中国企業がより責任をもって操業するための社会的ライセンスを保有するのに役立つであろうからだ。北京政府の優先事項が、自然資源へのアクセスなのだとしたら、国際的な取り決めを守り、協調社会を促進していくことが最善であるはずだ。
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筆者のミッシェル・チャン・フィシェル氏は、サンフランシスコにある地球の友USのグリーン投資プログラムのマネージャー。