ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > タイ電力計画 > 市民グループが抗議
メコン河開発メールニュース2007年3月28日
メコン河流域国の電源開発では、タイ側の電力開発計画やそのもととなる電力需要予測が大きな影響を与えています。このため、新たな電力計画策定に対して、タイの市民が抗議の声を挙げています。
以下、メコン・ウォッチの木口由香の解説とタイ字新聞の翻訳です。
タイのエネルギー省は、電力発電計画を策定中です。この計画に従い、新規の発電所の建設や既存の発電所の改善などが決定されています。今まではこれが策定前に公開されることはありませんでした。
タイ発電公社(EGAT)の民営化問題に伴うエネルギー問題への関心の高まり、発電所建設がもたらす地域への顕著な影響から、NGOや一部研究者の間から計画全体の見直し、特に経済成長予測に比例した右肩上がりの電力需要予測に対し、再検討の余地があると声が上がっていました。
軍事クーデターで発足した現政権は、自らの正当性をアピールするために市民社会の声を無視することはできません。
このような政治状況下、エネルギー省は計画の策定に初めて市民の声を聞く場を用意した模様です。しかし、会合に大臣が現れないなど市民側の反発を買い、最後には石炭火力発電所の建設が進められているプラチュアップキリカン県の住民によってセミナー自体が中止に追い込まれました。
現エネルギー大臣のピヤサワット氏は、タイの発電エネルギー源が天然ガスに偏っていることに強い懸念を持っており、特に石炭火力発電所建設推進に積極的だといわれています。一方、ダムや発電所の建設に反対するNGOだけでなく、消費者グループからも、国民の代表とはいえない現政権が新規の発電所建設を急ぐより、関連法の整備をすべきだという声が上がっています。
2007年2月8日マティチョン紙
記者の報告によると、タイ・エネルギー政策計画室主催で政府、投資家、NGOと一般市民の参加によって2月7日に実施されるはずであったPDP2007(タイ電力開発計画2007-2021年)セミナーが突然中止となった。理由は、揃いの緑のシャツを着用したNGOとプラチュアップキリカン県の住民200名以上が、同県で建設予定の発電所、特に石炭火力発電所構想に反対するため、会場となったサイヤムシティ・ホテル前で抗議集会を開いたためである。住民リーダーたちは、計画反対の横断幕を掲げ拡声器を使い交代に車上から演説を行ったため、外国人客への影響を懸念したホテル側がエネルギー政策計画室にセミナーの中止を求めた。
10時半、反対グループはホテルを出て工業省に移動し、コーシット・パンピヤムラット副大臣兼工業大臣宛に発電所建設と南部工業地帯に反対を表明する書簡を提出した。その後、エネルギー省に移動して抗議を続けた。
発電所反対のリーダー、ヂンタナー・ゲオカーオ氏は大型の発電所、特に石炭を燃料とするものに反対し続けるという。また、大型発電所をシステムに組み込むよう推進する動きが、大臣やその近親者の民間企業との権益から来ているかどうか社会が協力してチェックすることが必要だと述べた。
一方、ピヤサワット・アムラナンエネルギー大臣は、意見聴取のためエネルギー省は新しい場を探すと述べた。また、石炭であっても原子力であっても、新しいオルタナティブであるエネルギーを買うことは国のエネルギー安全保障と電力料金にとって良いことだと主張している。
大臣は、「全てのグループが参加を容認し、他の意見を聞くべきだ。もし地域の住民がどの発電所の建設も認めないのであれば、PTT社(国営の石油会社、タイ石油公団がその前身)にビルマからガスを買わせるか、近隣国からの売電を増さなければならない」という。
記者の報告によると、反対者たちはピヤサワット大臣にプラチュアップキリカン県で予定されているタプサケー石炭火力発電所の建設を行わないという書類にサインをすることを求めていた。しかし、大臣は反対者がいるということを了解したというサインをすると主張、住民側は了解しなかったので、部屋に戻ろうとした。しかし、反対者たちは大臣の腕をつかみ引き止めたため、警官が割って入り人々を引き離そうとするなど混乱した。最終的にピヤサワット大臣はタプサケー発電所を建設しない旨サインをしたため、反対者たちは解散した。
2007年2月9日マティチョン紙
サーイルン・トーンプロン消費者グループ連合事務局長は、エネルギー省が仏暦2550−2564年(西暦2007-2021年)のタイ電力開発計画(PDP2007)を策定している件で記者会見を行った。サーイルン事務局長は、同省は拙速な決定を避け独立発電事業者(IPP)からの売電に関する情報を公開し、運営を監督する機関を設置するためのエネルギー事業法を施行すべきだと指摘している。また、現政権はあと8ヶ月の任期しかなく、利権に関わるPDPやIPPよりも法の整備を優先すべきで、そうでなければ利益誘導を行ったと非難されるだろうと述べ、ピヤサワット・エネルギー大臣が石炭火力発電所(訳注:具体的にはプラチュアップキリカン県に予定されているタプサケー発電所をさす模様)を建設しないと明言するようけん制した。