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メコン下流本流ダム>(1)計画復活の背景

メコン河開発メールニュース2007年9月25日

メコン河下流の本流ダム計画が、カンボジアとラオスにおいて、民間投資によって急ピッチで進められています。2007年9月12日から14日まで、カンボジア中部のクラチエ州で、メコン河流域のダム問題に関わってきたNGOが集まって、情報分析と今後の活動戦略などを話し合いました。その中で、自然環境や社会面での深刻な悪影響にもかかわらず、建設の一歩手前まで来ている本流ダム計画があることに参加者の間で強い懸念が共有されました。

そこで、クラチエでの『メコン河下流本流ダムに関する市民会議』に出席したメコン・ウォッチの大澤香織が、これから4回にわたって、この会議で共有された情報を翻訳してお伝えします。

第1回は、「メコン河下流本流ダムー計画復活の背景」です。


メコン河下流本流ダム(1)計画復活の背景

2007年9月12〜14日
メコン河下流本流ダムに関する市民会議(於:カンボジア・クラチエ)

メコン河流域国の増え続けるエネルギー需要によってメコン河下流における大型水力発電開発への圧力が強まっている。メコン河の支流上で計画/建設中である多くの大型ダムが近年、復活の動きを見せ、本流(中国を除く下流域)での4つの流し込み式ダム―ラオスのサイヤブリ、パクレイ、ドンサホンとカンボジアのサンボー―の調査に関する契約が結ばれ始めている。

メコン河下流域の本流ダム建設計画は新しい話ではない。1950年代末からメコン河委員会(MRC)の前身であるメコン委員会は、メコン河流域での水力発電や灌漑用のダムを推進するための調査を行ってきた。1960年代までにメコン委員会は水力発電、洪水制御、灌漑、航行推進などの目的のため、7基の大型「多目的」ダム計画を作成し、1980年のメコン委員会の流域計画(Indicative Plan)の中で提案された。発電総容量23,300MWのいわゆるメコン河連続ダムは、メコン河下流においてメコン河の年間流量の3分の1以上を貯水できる連続巨大ダムである。

メコン河連続ダムの目玉はパモン・ダムであった。発電能力4,800MW、3,700平方キロメートルを水没させ、約25万人を移転させると見込まれた。メコン委員会はパモン・ダムの調査のために数百万ドルものお金を費やしたが、インドシナ内戦や、ダムの多大な環境社会影響などから、初期計画段階より先に進むことはなかった。

最初の計画の深刻な移転の影響への対応から、メコン委員会の改定流域計画(1987年)では、多くの「より小さな」本流ダムにする計画が提出された。これらの総発電容量は23,250MWである。1994年には、メコン河委員会への組織再編につながった「メコン協定」に署名する数ヶ月前に、暫定メコン委員会事務局が11の大型ダム計画に関する報告書を出版した。1970年の流域計画で示されたより大きなダムへの代替案として、1994年の調査では高さ30メートルから60メートルの連続流れ込み式ダムが提案された。貯水池は川の中で総延長600キロメートルにわたり、約57,000人を移転させる。暫定メコン委員会事務局時代に収集されたダム計画についての情報を使って、1994年の報告書では潜在的なダムサイトを特定し、優先順位をつけ、合計13,350MW(その多くはタイに輸出される)にのぼる9つのダム計画が提案された。

水力発電開発と健全な漁業との高まる対立への懸念から、暫定メコン委員会事務局は、メコン河での漁業と本流ダムの潜在的な影響のレビューを委託した。不十分なデータや優先順位の信頼性、計画の優先順位などが指摘され、「総合的に、影響は多大であろうと予測される。生息地の深刻な消失と、歴史的な生息地からの魚の隔離はより低い漁獲量につながり、生物多様性の減少につながる…」、さらに、魚の回遊の阻害は、「メコン河下流全体における漁獲高減少に繋がる」としている。

幸い1990年代後半には、本流(下流域)での水力発電計画が実現されることはなかった。2001年にメコン河委員会(MRC)の水力発電開発戦略が、こうした本流でのメコン河ダム計画がこれまで実現してこなかった原因として、4つの要素を挙げている。流域国がそれぞれ国境内の支流上の事業に焦点をあててきたこと、地域の政治状況、事業の高いコスト、そして本流ダムの漁業と移転影響に関する「重大な」影響である。

しかしメコン河委員会(MRC)の水力発電開発戦略は、状況の変化も示唆している。タイとベトナムにおいて増大する電力需要と地熱発電所からの撤退、民間の開発業者だけでなく財政的にも管理能力的にも「余力」が生まれた国営電力公社の関心の再燃、それに代替エネルギー価格の上昇など---これらのため、沿岸国はふたたびメコン河下流の本流ダム実現を考え始めている。2007年半ばまでに、ラオスとカンボジアでは4つ(ないしは5つ)の本流ダムに関する契約が結ばれた。

 

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