ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > タイ・J-Power発電事業>住民がJ-Powerに抗議書簡
メコン河開発メールニュース2008年11月9日
タイ中部で進められている2つのガス火力発電所の建設計画をめぐって、住民たちが抗議行動を始めました。第1次産業に従事する住民が多く、環境悪化や風評被害による産業への打撃を懸念しています。発電所の1つ、チャチュンサオ県の事業に対する反対署名は1万2000人を超えています。
この計画を進めているのは、日本の電力卸会社大手のJ-Power(電源開発)。
J-Powerは国策会社を2004年に民営化して株式を上場しました。2008年4月には、イギリス投資ファンドがJ-Powerの株を買い増ししようとしたのに対して、日本政府が「公益」の名のもとに阻止した経緯があります。つまり、J-Powerは株式会社とはいっても、公益企業であり、公の秩序を守るべき立場にあります。外国投資家を排除するときだけ「公益」を楯にすることは許されません。タイの住民から起きている「No」の声に、公益企業として責任ある対応が求められます。
2008年10月27日、2地区の住民代表はラヨン県で石炭火力発電所に反対する住民と共にバンコクのJ-Power支店に出向きましたが、同社が入居するビルは住民の入館を拒否。約束の時間には雨となり、ビルの1階のコーヒーショップの屋外デッキでやり取りをするという顛末になりました。J-Powerのシニアマネージャー、ヒグチ・ジョウタロウ氏が対応、住民と約20分にわたり会談しました。住民側は書簡に記した懸念を説明した後、同社の現地視察を求めましたが、ヒグチ氏はビジネスパートナーのガルフ社と相談すると回答するにとどまりました。最後に住民は現地で取れたココナツの実を房ごとプレゼント、農業地帯である建設予定地の理解を求め、解散しています。
発電所の建設予定地は、(1)チャチュンサオ県バンクラ郡サメットタイ・タンボン行政区4区(サメットタイ村)と5区(サメットヌア村)[バンコク東方約80km]、(2)サラブリ県ノンセン郡ノンボック・タンボン行政区4区(ファイバー村)とアユタヤ県パーチー郡ノンナムサイ・タンボン行政区7区(タンマシン村)[バンコク北方約100km]の2ヶ所です。発電所の名称は未定です。
(1)の発電所周辺は果樹栽培、エビ養殖などが盛んな農業地帯、(2)は2年に5回稲作を行う米どころで、200年の歴史があります。両地区とも、土地利用区分で県から第一次産業地帯に割り当てられ、タイの内務省がそれを承認するプロセスの途上にあります。また、住民は環境アセスメント(EIA)が終了していないのに、事業者が既に発電所の建設地を決めているのは住民参加の観点から不当であると訴えています。
(文責 木口由香/メコン・ウォッチ)
【事業について:J-Powerウェッブサイトより】
出所:http://www.jpower.co.jp/news_release/news071210.html
▼サメッタイ地点
位置 チェチェンサオ県(J-Powerの表記どおり)
サメッタイ地区(バンコク東方約80km)
種別 ガス火力発電所
出力 1,600,000kW (800,000kW×2系列)
運転開始 2012年(目途)
事業会社 サイアム・エナジー社
▼ノンセン地点
位置 サラブリ県ノンセン地区(バンコク北方約100km)
種別 ガス火力発電所
出力 1,600,000kW (800,000kW×2系列)
運転開始 2013, 14年(目途)
事業会社 パワー・ジェネレーション・サプライ社