ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ラオス・ダム>大型水力発電事業への投資、次々と延期
メコン河開発メールニュース2009年1月21日
ここ数年のラオスでの水力発電所建設ラッシュが、現下の世界同時不況でどのような影響を受けるか、メコン圏の大規模開発を注視する者であれば気になるところですが、2008年12月17日、ラオスの英字紙『ビエンチャンタイムズ』がラオス政府高官の談話として、年内に建設開始が予定されていた数件の開発計画が延期されたと報じました。以下、『ビエンチャンタイムズ』の報道を日本語訳でご紹介します。
ビエンチャンタイムズ
2008年12月17日
国際的な金融危機の結果、ラオス国内の大型発電事業への投資を見合わせる企業が続出している。ラオス政府投資計画省の高官の話である。
先週、投資推進部のフムペン・スラライ(Houmpheng Souralay)部長が語ったところによると、サイヤブリ県でホンサー褐炭火力発電所を計画していた企業が国際的な不況を理由に計画の中断を決定した。
また、ビエンチャン県のナムグム3ダム、カンムアン県のナムトゥン1ダム、ビエンチャン県のナムニエップ1ダム、ルアンパバン県のナムウーダムを計画していた企業もそれぞれ計画の延期を発表した。フムペン部長によれば、これらの計画はいずれも今年の年末までに開始される予定であった。
同部長は、これらの延期決定によりラオスが海外からの資金を多額に獲得することが難しくなるだろうと述べた。外資の獲得はラオスの経済成長を牽引する重要な手段である。
また、同部長によると、2008年のラオスへの海外からの投資総額は10億ドルに迫っており、政府目標の6億ドルを大きく上回った。
エネルギー鉱山省電力部のウィラポン・ウィラウォン(Viraphone Viravong)部長は、企業側が投資を延期した理由のひとつは、ラオス政府にタイ政府との売電契約の見直しを期待しているからであると述べた。
「年初の契約締結後に建設費用が高騰したため、売電価格が安すぎるという不満がある」とウィラポン部長は語った。
同部長によると、今年半ば以降原油価格が半分以下に下落し建設費用が大幅に減ったと思ったら、今度は不況により銀行からの融資が受けにくくなっている。
銀行側は、不況によってタイでの生産と投資が減少し、この先数年電力需要が落ち込むものと確信し、水力発電を計画する企業に貸し渋りをしていると同部長は語った。
企業側も、電力消費量が落ち込めば、電気を安い価格で販売せざるをえなくなると考え、景気が常態に回復するまで投資を控えようとしている。
ウィラポン部長は、水力発電計画が始まれば、将来的にラオス経済に約20億ドルの資金が注入される可能性があると語った。
同部長によれば、すでに建設中の水力発電所が不況の影響を受けることはない。
プービアとセポンで鉱山を運営する企業も事業拡大への投資を控える意向を示している。
経済専門家は、これら大規模開発計画の延期でラオス経済が打撃を受け、政府が目標としている来年の成長率8%は達成できないだろうと見ている。失業率の増加を懸念する声も多い。
原文(英語)は以下のサイトで閲覧可
http://www.probeinternational.org/mekong-utility-watch/news-and-opinion/developers-suspend-major-hydro-investments-lao-pdr
(翻訳・文責 土井利幸/メコン・ウォッチ)