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ラオス・ダム>アジア開発銀行の関与

メコン河開発メールニュース2009年2月10日

メコン・ウォッチが1993年に誕生した背景には、日本政府を最大の出資者とするアジア開発銀行(ADB)が「大メコン圏(GMS)経済協力構想」の下、水力発電所をはじめとする大規模基盤整備事業への資金提供を強化することに対する市民社会の懸念がありました。それから15年、ビルマ(ミャンマー)、カンボジア、ラオスでの水力発電事業には、同じメコン圏内の中国、タイ、ベトナムからの資金提供が格段に増加しました。しかしADBも依然としてメコン圏での水力発電事業には深く関与しています。今回のメールニュースでは、米国の環境NGO「国際河川(IR)」が、ラオスのダム開発事業へのADBの関与について簡潔にまとめた文章を日本語訳で紹介いたします。

国際河川(IR)によると、ADBの関与には以下の問題点があります。
1) これまでにADBが資金提供したダムの起こした問題が未解決である。
2) ADBの関与によって個別のダム事業が改善された証拠がない。
3) ADBの関与によってラオスの環境社会保全政策が改善された証拠がない。
4) ADBが送電線整備に資金提供することでダム建設が助長される。
5) ADBは送電線整備に資金提供しながら、その送電線を使うダム本体に対して自らの環境社会基準を遵守させようとしない。

このうち2)と3)の点については、メコン・ウォッチもラオスのナムトゥン2ダムを例にあげて、NGO財務省定期協議などの席でADBや日本政府に対して指摘してきたところです。この件をめぐるメコン・ウォッチと日本政府・財務省のやりとりについては、以下のサイトの記録をご覧下さい。

第32回定期協議議事録(2006年6月19日、議題1)
第34回定期協議議事録(2007年2月2日、議題2)
第35回定期協議議事録(2007年6月22日、議題1、2)
第38回定期協議議事録(2008年6月26日、議題8)

ラオスの水力発電事業を資金面で支えるADB

国際河川

現在、ラオスの水力発電開発はメコン圏内の国々からの投資や開発の独壇場の観であるが、多国間開発銀行の活動も健在である。特にアジア開発銀行(ADB)は、依然としてラオスのエネルギー部門の重要な担い手で、数多くの発電事業や送電線建設に対して技術援助・融資・保証を提供している。ADBが支援する事業はADBの環境社会政策を遵守し、貧困削減に寄与することになっているが、ADBの関与によってラオスの水力発電事業のレベルが改善された証拠はほとんどない。

過去15年間ADBはラオスの水力発電開発に多大な支援を提供し、ナムソン、ナムルック、トゥンヒンブン発電所などを援助してきた。ところが、これらのADB支援事業には幾多の未解決問題が存在し、ADBの関与によって事業の設計が改善され、自然環境や地域社会への悪影響が最小限に抑えされたという証拠はほとんど見られない。またADBが援助国や投資家に対して、ナムトゥン2ダムの建設によってラオスの水力発電部門の環境社会面での対応が改善されるとした約束も守られていない。

ほどなくADBは、ナムグム3とナムニエップ1の両水力発電事業への経済援助、およびラオス北部・タイ間のナボン・ウドンタニ送電線やラオス南部・ベトナム間のバンソック・プレイク送電線をはじめとする多くの送電線・変電所建設事業への融資や技術援助の検討に入る。また、ADBが送電線網に資金を提供することで、ラオスではナムトゥン1、セカマン1、セカマン3など数多くの水力発電事業の建設を加速することになるが、これらの事業はラオスの規制の水準もADBのセーフガード政策も満たしてはいない。ADBは2007年から2011年のラオスの国別戦略計画で、「ADBの環境社会セーフガード政策の適用によって引続きあらゆるADB事業に健全な環境管理を導入し、政策対話を通してラオス政府が自然資源を集中的に利用するすべての大型事業に同様の基準を適用するよう働きかける」と明言した。ところがADBは、検討中の送電線が経由する水力発電所事業に対して自らのセーフガード政策の遵守を義務付けるといったことは考えていないようである。

ADBは、資金を注ぎ込む送電線や変電所を利用するすべての関連事業に対して、ADBの基準を満たすよう要求すべきである。またADBは、ラオスの水力発電セクターにこれ以上資金を提供する前に、これまで援助してきた水力発電所事業の未解決問題を解決すべきである。さらにADBは、新規のダムや送電線に資金提供する前に、ラオス政府に国家水力発電政策をきちんと実施させるべきである。こうした働きかけをしなければ、ラオス政府やダム建設業界に対して、ADBの水準が堅持されようがされまいが、あるいは影響住民への約束が守られようが守られまいが、ADBは今後も水力発電部門への経済援助を続けるといったメッセージを伝えてしまうことになる。

原文(英語)は、Shannon Lawrence. 2008. Power Surge: The Impacts of Rapid Dam Development in Laos所収の”The ADB: Bankrolling Lao Hydropower”(16ページ)。Power Surgeは以下のURLで閲覧可能
http://internationalrivers.org/en/node/3343

(文責・翻訳 土井利幸/メコン・ウォッチ)

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