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ラオス・ダム>日本政府とADBが送電線事業に資金提供

メコン河開発メールニュース2009年2月13日

先のメールニュース(2009年2月10日配信)では、日本政府を最大の出資者とするアジア開発銀行(ADB)が、ダム本体の建設ではなくとも、送電線や変電所の建設に資金を提供することで、メコン圏のダム開発に深く関与している、という主張を紹介しました。

そうした事業の例として、2008年10月17日、ADBは、ラオス南部から隣国ベトナムへの電力輸出を可能にする送電線と変電所建設のための調査に100万ドルの無償資金を提供すると発表しました。この資金は、日本政府がADBに設けた「日本特別基金」から拠出され、これによってADBは各種の手続きや調査を終え、2010年頃には建設事業自体に対する融資を検討するものと思われます。総事業費の見積もりは2億7000万ドルで、送電線が完成すると、ラオス南部のセカマン1(488MW)、ナムコン1(229MW)、セコン4(464MW)、セコン5(388MW)などの水力発電所から、計1500 メガワット(MW)の電力がベトナムに輸出されることになります。

ところが、これらのダム事業は、非常にやっかいな環境問題を引き起こします。ムが位置するのはラオス南部を流れるセコン川の本流・支流で、セコン川はラオス領を出ると、カンボジア東北部のストゥントレン州を通って、やがてメコン河の本流に合流します。つまり、ラオスのダムが国内ばかりかカンボジアにも悪影響を及ぼす、「越境する環境問題」が発生し、その解決には、国内ダム問題にも増す困難がともないます。実際、ナムコン1、セコン4、セコン5などの影響が累積すると、カンボジア側も含めたセコン川流域の漁業生産が半分になるとの予測もあります【訳注】。

ADBは、送電線事業の環境影響評価(EIA)を実施する前段階で、事業の「関連施設」(associated facilities)にあたるこれらのダム事業の住民移転計画などに対して、ラオス政府やADBの環境基準に基づいた「適正評価手続き」(duediligence)を実施し、基準を満たしていない場合には、対策を講じるとしています。しかし、適性評価手続きの結果が公開されるのか、対策が実効力を持つのかなど、疑問は尽きません。すでに2008年12月15日、適性評価手続きなどを実施するコンサルタントとも契約が結ばれています。

本件についてはいくつかの報道がありましたが、以下ではラオスの現地英字紙『ビエンチャンタイムズ』の記事を日本語訳で紹介します。

日本政府とADBがラオス・ベトナム間の送電線敷設に経済援助

ビエンチャンタイムズ
エカポン・プートンシー(Ekaphone Phouthonesy)
2008年10月21日

日本政府とアジア開発銀行(ADB)は、ラオス政府が水力によって発電した電力をベトナムに輸出できるよう資金提供を開始した。

ラオス政府は送電線敷設によってベトナムに電気を輸出することができる。ADBラオス事務所が先週金曜日(2008年10月17日)、この事業を発表した。

ADBの記者発表によると、今回の資金提供では日本政府がADBを通して日本特別基金から85億キップ(100万ドル)の無償援助を提供し、ラオス・ベトナム両政府がそれぞれ12億キップ(15万ドル)を拠出する。

この資金提供は、計1000メガワット(MW)の電力を輸出目的で発電する11ヶ所の水力発電所の商業運転開始を視野に入れて実施される。

送電線施設の運転や維持に必要な段取りも、この資金提供の下で準備することになる。

ADB東南アジア局のサビエル・フンベルト(Xavier Humbert)エネルギー上級専門員によると、ADBはラオス・アタプー県からベトナム・ジャライ省までの送電線の敷設費用総額を2兆2000億キップ(2億7000万ドル)と見積もった。

同上級専門員は、敷設に必要な費用のうち約5500万ドルはADBの2010年の貸付計画に織り込み済みだが、最終的な貸付額は両国で協調融資に参加する可能性のある機関との協議の結果を待って決める必要があると述べた。

送電線敷設事業は4つの部分からなる。ラオス・アタプー県サンサイ郡ソック村からベトナム国境までの65キロ区間の送電線と同国境からベトナム・ジャライ省にあるプレイク変電所までの100キロ区間の送電線、さらに最終段階として、ソック村の変電所建設とプレイク変電所の改善が行われる。

ラオスには推定1万8000MWの潜在的水力発電能力があるが、これまでに663MWしか活用されていない。

ラオスの潜在的水力発電能力を最大活用するには財政上の制約が立ちはだかる。ラオス政府もその点を理解しているからこそ、水力発電部門への民間の参入を強力に推し進めていると、フンベルト氏は語った。

ラオス国内での電力需要は低く、ほとんどの電力は輸出される。輸出による収入で農村部を電化する事業への資金をまかない、社会開発や貧困削減の努力を支えようというわけである。

過去10年間の平均年間経済成長率が7.5%を記録したベトナムでは、電力不足がますます深刻である。ベトナムの第6次国家電力開発計画(2006年から2020年)では、国内の電力需要は2006年から2010年には毎年16%、2011年から2015年では11%、2020年まででは9%伸びると予測している。

ベトナムはこの電力需要の伸びに対応するため、近隣国からの電力供給に目を向けている。2008年3月にはラオスとの間で、2020年までに5000MWの電力を輸入する協約に調印した。

【訳注】これらのダムに関しては、メコン・ウォッチの近刊『水の声:ダムが脅かす村びとのいのちと暮らし』(56〜58ページ)を参照。同書は以下のサイトで閲覧可
水の声:ダムが脅かす村びとのいのちと暮らし

ビエンチャンタイムズの記事のもとになったADBの記者発表(英語)は、以下のサイトで閲覧可
http://www.adb.org/Media/Articles/2008/12666-lao-pdr-electricities-projects/

本事業(正式名称:Preparing the Ban Sok-Pleiku Power TransmissionProject in the Greater Mekong Subregion)に関するADBの情報は、以下のサイトで閲覧可
http://www.adb.org/projects/project.asp?id=41450

(文責・翻訳 土井利幸/メコン・ウォッチ)


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