ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ODAの抜本見直し>「外部に開かれた議論の場」要請へ
メコン河開発メールニュース2010年2月16日
岡田外相が、ODAの抜本的な見直しに向けたプロセスに着手しました。夏までに一定の成果を出す予定とのことです。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201002/2010020200929
しかし、検討方法を見てみますと、外務省内に設置されたタスクフォースが検討の実質的な部分を担うようであり、NGOなどの外部意見のインプットが、いつどのようにして行われるかということが曖昧です。また、議論の公開も確保されていません。
過去ODAの見直しに関しては、今まで多くの議論が行われてきました。しかし、そのほとんどがODAや外務省の政策や体制に関する批判的な視点を欠いており、過去のODAに関する問題の分析が不十分であったように感じられます。
私たちは、今回設置された外務省内およびJICAのみで構成されるタスクフォースでは、「抜本的」見直しを行う体制としては不足しており、外部に開かれた議論の場を確保することが必要だと考えています。
今までJBIC、JICAの環境社会配慮ガイドラインの改訂においては、NGO側からの強い働きかけもあり、徹底した公開と参加促進、論点整理の段階からの十分な議論プロセスが確保されてきており、これらが質の高いガイドラインの改訂に結びついてきたという実績があります。
http://www.jbic.go.jp/ja/about/environment/guideline/business/index.html
http://www.jica.go.jp/environment/guideline/iinkai.html
このプロセスに参加してきたNGO関係者の一人としては、日本省庁独特の閉ざされた「審議会」「委員会」による形式的な議論に比べ、実質的な議論が確保できた点、多様な立場の関係者からの意見が整理され、バランスよく反映された点を高く評価しています。これらはODA改革の議論においても十分活用可能なプロセスでしょう。
このような認識にたち、メコン・ウォッチはFoE Japan等他のNGOとも協力して、急遽、検討プロセスに焦点をしぼった要請書案をとりまとめました。
要請書案は下記で参照することができます。
http://www.foejapan.org/aid/doc/100215_ODA_reform_request.pdf
(下記にも同様のものを掲載しています。)
本要請書は、2月22日(月)の提出をめざし、現在、この趣旨に賛同し、連名していただける団体を募集しています。
ご連名いただける団体は、22日の朝10:00までに、finance@foejapan.orgまでに、
@団体名、Aご担当者のお名前−−をご連絡いただけますと幸いです。
皆さまのご協力をよろしくお願いいたします。
(文責:満田)
2010年2月XX日
「ODAの見直し」検討プロセスに関する要請(案)
http://www.foejapan.org/aid/doc/100215_ODA_reform_request.pdf
私たち開発援助事業の環境社会影響の回避やODA の質の向上に関心を有する日本のNGOは、岡田外務大臣がODAの抜本的な見直しに着手されたことは、ODAをめぐるさまざまな問題を解決するための重要な一歩として高く評価しております。
一方、2月2日の記者会見において示されました検討体制については、下記の点で課題があると考えております。
・実質的に議論の中核を担うのが、外務省の省内およびJICAのみで形成されたタスクフォースとなっている。これでは、ゼロベースからの抜本的な改革に結びつけることは困難である。
・ODAは外務省以外の管轄する分も大きい。この機会に日本政府全体のODA見直しをすべきである。そのためにも省内のみの議論では不足である。
・すでにタスクフォースのテーマが決まっているが、まずは、議論すべきポイントについて、外部の意見をきくプロセスを設けるべきである。
・過去のODAの問題を分析するプロセスが踏まれていない。議論すべきポイントは過去のODAの問題点の包括的レビューに基づくべきである。
このような問題意識に基づき、ODAの見直しに関する検討プロセスに関しまして、下記を要請させて頂きます。
1.ODAの見直しの論点整理のため、過去のODAの問題を分析するプロセスを設けること。
2.ODAの見直しの論点整理から、実際の議論、取りまとめの各段階を通して、ODA改革に関心を有するNGO等が参加できるコンサルテーション会合(注1)、または、NGOを含むステークホルダーからなる委員会(注2)を設置し、そこで主要な議論を行うこと(注3)。議論はすべて公開とすること(注4)。また、文書による意見の提出も受け付けること。
3.委員会方式で実施する場合は、下記に留意すること。
@委員は、ODAに対して批判的な見解を有するステークホルダーも含めること。
A委員会は公開で行い、傍聴者の発言も許可すること。
4.重点的に議論をするべき論点の一つに海外投融資の再開の可否を含めること。
この議論の前に、JICAが実施した、過去の海外投融資に関する調査結果を公開すること(注5)。
以上、ご検討いただければ幸いです。
(注1)関心を有する者がすべて参加し、発言できる形式の会合。議事録も公開。国際協力銀行(JBIC)環境社会配慮ガイドライン改訂プロセスなどで取り入れられた。
(注2)多様なステークホルダーからの委員で構成し、一般公開で議事録も公開することを想定。このような委員会は、JICAの環境社会配慮ガイドライン改訂プロセスで取り入れられ、傍聴者の発言も許可された。
(注3)現在立ち上げられている外務省内部のタスクフォースにおける内部検討も踏まえた議論を行うことを想定。
(注4)アカウンタビリティの確保および発言者が自らの発言に責任を持つことを確保するために重要である。省益や業界の利益の誘導の場とならないために必要とされる。
(注5)海外投融資は、2001 年12 月、「特殊法人等整理合理化計画」でいったん廃止となった。2009年6月2日、「第22回海外経済協力会議の結果」で、再開に向けた検討の一貫として、過去の実施案件の研究・評価の実施が決定した。しかし、この研究・評価の終了を待たず、6月23日、「経済財政改革の基本方針2009について」で、海外投融資の再開が閣議決定した。
なお、過去の海外投融資は、特定業界へ偏った支援が行われたこと、商業的秘密に配慮したため通常のODAに比してすべてが不透明となったこと、このため利権や問題の温床となったことなど、批判を招き、国会でも議論となった。