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メコン河の水位低下>地域経済に大きな打撃

メコン河開発メールニュース2010年3月3日

今年、メコン河では例年にないほど水位が低下し、観光・運輸業をはじめ地域経済に深刻な影響を与えています。2月下旬にラオス北部ウドムサイ県と南部チャンパサック県を訪問したスタッフの報告と、ラオスの英字紙の報道をお伝えします。また、タイの英字紙では、この深刻な水不足を受けて、タイ政府がメコン河委員会(MRC)を通じ、中国の発電ダムからの放水量を増やすよう求めるのではという報道もされています。

北部ウドムサイ県のパクベン郡は、その名の通りBeng川のPak(河口)に位置し、ボケオ県ホアイサイ(対岸はタイのチェンライ県チェンコン)とルアンパバーンを結ぶ水上交通の要所となっている町です。メコン河の船着場で観光客相手に菓子や雑貨を売る商店主は、「この数日、ホアイサイとパクベンの間で、ゲーン(早瀬)が水上に出てしまい、大型ボートが通れなくなっている。観光客が減ってしまい、商売にならない」(インタビュー、2月17日)と嘆いていました。

また、観光客を乗せる大型ボートを2隻所有する船主の女性によれば、「この数日は、1隻に観光客などを乗せて、ゲーンの手前まで運行し、いったん客を降ろして、歩いてゲーンを迂回させ、もう1隻に乗り換えるという方法で運行している」(インタビュー、2月17日)とのことです。彼女は、水位の低下の原因について、「今年は雨が少なかったこともあるが、中国のダムが水を溜めていることが原因だ」と話していました。中国のダムと水位低下との因果関係は明らかにされていませんが、今年の記録的な水不足は、メコン河の観光や流通にも大きな影響を与えています。

南部チャンパサック県のコーン島はカンボジア国境から数キロの場所にあります。この場所は、メコン河が広い面積で島の間を分流している場所でシーパンドン(四千の島)と呼ばれているところです。ここでも、2月のメコンの水位は非常に低くなっています。コーン島は観光地になっていますが、22日には荷物や観光客を運ぶ小船が島の船着場まで着けない状況でした。ゲストハウスのオーナーも、これほど水位が下がるのは中国のダムの影響では、と話していました。普段は水から頭を出している程度の、フランス統治時代に建設された堰などの建造物が、水位が下がったため構造を全て見て取れるほどです。一昨年も訪問していますが、その時には見られなかった光景です。4月まで乾季が続くなか、どれほど水位が下がるのか心配されます。

こうした水不足の影響がラオスで見られるなか、同じくメコン河の水位低下の影響を受けている隣国タイが、メコン河委員会(MRC)を通じ、中国のダムからの放水を増やすよう要求するのではと報道されています。

現在、メコン河の本流上流の中国では、4基のダムが操業され、さらに11基のダムが計画されています。また、下流のラオス、タイ、カンボジアでも、合わせて11のダム建設計画があります。今後、メコン河本流に新たにダムが建設されることになれば、環境・社会影響はさらに深刻化することになるでしょう。

以下、ラオスとタイの英字紙の報道です。

メコン河の水位低下によって北部の観光と貨物船がストップ

ビエンチャン・タイムズ紙、Phonesavanh Sangsomboun記者
2010年3月2日

ルアンパバーン県のボート協会は、メコン河の水位低下によって運行が難しくなっているため、北行きの貨物船とスローボートの運航を一時的に停止すると発表した。

同協会は、貨物船の船長らから、ウドムサイ県パクベン郡のホアイクーン村付近の水位が60センチほどにまで下がり、ボートが通り抜けられないという報告を受け、このような発表を行った。

ルアンパバーンでは貨物船を含む60隻以上のボートが、現在、北への運航を停止している。それらのボートの多くは、手工芸品や動物を運ぶものだ。ルアンパバーン・ボート協会のNikone Somphantavong会長によれば、現在、川幅は約8メートルで、これはほぼ例年並みだが、ホアイクーン付近では、水位が例年よりも浅くなっているという。

今年、メコン河の水位は通常よりも低下している。通常、ホアイクアン付近の水位は、少なくとも1メートルほどだが、今は60センチほどしかない。そのため、水上交通に問題をきたしている。

同協会は、水位がさらに低下することを懸念している。この状況は、観光産業や地域経済にとって問題となっている。しかし、同協会は、安全上の理由から、北行きのボートの運航を一時停止することを決定した。

同協会によれば、いつ通常の運行が再開されるか明言することはできないという。しかし、通常は6月に雨季に入ると川の水位は上昇する。

メコン河の水位低下は、ルアンパバーンからウドムサイへ、さらにボケオへ観光客を運ぶビジネスに影響を及ぼしている。

観光ツアーの運営者たちは、ビジネスに影響を与えている問題について不満を口にしているが、これは自然の問題なので、誰を責めることもできない、とNikone氏は言う。

現在、パクベンの100隻以上のボートが影響を受けている。それらの多くは、タイのチェンライ県からボケオ県と(ウドムサイ県の)パクベンを通ってルアンパバーンに向かう観光客を運ぶボートだ。

ルアンパバーンのボート協会は、ボケオ県の船頭たちとこの問題について話し合い、旅客を南に輸送する方法を探っている。

提案された解決策では、ボケオのボート協会が観光客を9時発のボートに乗せるというものだ。観光客はパクベンに1泊し、翌日、他のボートに乗り換え、ルアンパバーンに向かうことになる。

メコン河は世界では12番目、アジアでは7番目に長い河川である。

タイ政府、MRCを通じ、中国にメコンのダムからの放水量の増加を要求

ネーション紙 2010年2月22日

タイ政府は、メコン河委員会(MRC)に対し、下流の干ばつを緩和するために、中国に建設されているメコンのダムからもっと水を流すように、中国政府と交渉するよう要求する方針だ。

Saksit Tridej氏(訳注1)は、タイや近隣国を流れるメコン河の下流では水不足が起きている地域があるが、それは中国が発電のために川の水を堰き止めていることが原因のようだと述べた。

しかし、中国は、ビルマ・タイ・ラオス・カンボジア・ベトナムが加盟するMRCのメンバーではない(訳注2)。

MRCは3月初旬に会合を開くが、その会合の期間中に、MRCが中国のダムからの放水量を増やすように中国の協力を求めるよう提案するつもりだと、Saksit氏は語った。


訳注1:タイ天然資源・環境省次官
訳注2:原文のまま。実際にはビルマ(ミャンマー)はMRCの加盟国ではなく、1996年より中国とともに「対話パートナー」(dialogue partner)となっている。

(文責・翻訳 木口由香・東智美/メコン・ウォッチ)

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