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カンボジア土地問題>NGOが支援国政府に対して経済土地コンセッションによる被害を強調

メコン川開発メールニュース2010年6月24日

カンボジア政府は1990年代初頭より、「経済土地コンセッション」という手続きによって、内外の民間企業に対して最大99年にわたって土地の使用を認めることで、大規模なプランテーションや農園の運営への民間投資を促進しています。カンボジアのNGOの調査によれば、耕地全体の4分の1にあたる100万ヘクタール以上の土地が、すでに経済土地コンセッションとして民間企業に付与されており、その結果、対象となった土地に住む住民たちが強制的に移転させられたり、農地や放牧地への立ち入りを制限されたり、深刻な被害を被っています。

こうした現状に危機感をつのらせたカンボジアのNGOグループは先月11日、カンボジア政府に多額の開発援助を供与する国々の政府に対して、カンボジア政府と支援国の対話の場である「カンボジア開発協力フォーラム」で採択される声明の中で、経済土地コンセッションによる被害にきちんと言及するよう求める要請を発出しました。また、NGOグループは、カンボジア政府に対しても、すでに実行されている経済土地コンセッションを見直し、あらたな経済土地コンセッションを一時停止することなどを要請しています。

カンボジアにとっての最大の援助国である日本は、土地問題や立退き問題など、カンボジア社会が構造的にかかえる問題に対してこれまであまり積極的に働きかけてはきませんでした。他の支援国政府が経済土地コンセッションに代表される土地問題に対して一致して取り組みはじめるとき、日本政府がどのような対応をとるのかが注目されます。

以下、カンボジアのNGOグループが発した要請(原文英語)の日本語訳です。長文ですが、経済土地コンセッションの持つ問題点が包括的に記述されていますので、全文をご紹介します。


マーガレット・アダムソン駐カンボジア豪大使
アジェイ・マーカンデイ国際連合食糧農業機関カンボジア担当

2010年5月11日

マーガレット・アダムソン大使閣下、アジェイ・マーカンデイ様

   【カンボジア開発協力フォーラムにおいて採択される経済土地コンセッションに関する開発パートナー声明について】

私たちは、経済土地コンセッション(ELC)が農村および先住民族社会の環境と人権に及ぼしている影響を深く懸念する市民団体です。ELCは、過去10年間、広範囲の地域で人権侵害と社会・環境的被害を生じさせており、それは詳細に記録されています。私たちは、開発パートナーに対し、カンボジア開発協力フォーラムの農業に関する会合で採択される声明において、この被害に言及することを求めます。また、カンボジア政府に対し、以下を求めます。

1)すでに付与されているELCに関し、法令を順守し、人権を擁護した内容となるように見直しを行う。
2)ELC付与について一時停止措置(モラトリアム)を実施する。
3)小規模農業、漁業、牧畜に対する支援を中心とした政策を実施する。

カンボジアの耕地全体の4分の1にあたる100万ヘクタール以上の土地が、すでにELCとして民間企業に付与されています【1】。このように権利が売払われた結果、住民たちは強制的に移転させられたり、自給自足的農業用の農地や放牧地への立ち入りを制限されたり、食料や非木材森林生産物入手のために何世代にも亘って利用してきた森林を破壊されたりしています。そして、食料や、一定の水準に達した住居を得る権利を侵害され、不安を募らせています【2】。

過去数年間、土地コンセッションの付与数は増加しましたが、政府もコンセッション企業も現存の規則を適切に順守していません。ELCの付与は地域住民との協議を経て行うという法的義務があるにもかかわらず、大部分の土地コンセッションは協議が行われないまま付与されています。環境社会影響評価も行われておりません。時には、土地が分類され、国有地【3】として登録される前にコンセッションが付与されることもありますし、法的手続に違反して再分類が行われ、正当な所有者が移転させられるということも頻繁に起きています。そして、補償や移転が行われる前に、問題点に関する解決策が整うことはほとんどありません【4】。

急速な農業関連産業の発達により、カンボジア先住民の伝統的な土地利用や農法は深刻な脅威に晒され、先住民たちに特に大きな影響を与えています。土地法は、先住民族の土地を共同所有地として登録することについて定め、所有権登録前から先住民族が所有してきた土地を保護する規定を置いています。しかし、こうした法的保護の存在や、カンボジア政府の度重なる約束にもかかわらず、共同所有権の登録は遅々として進まず【5】、未登録の土地に関する保護はありません。
その間、土地の権利あさりはますます進んでいます。こうして、先住民たちは、伝統的に利用してきた農地から引き離され、墓地として利用されたり心のふるさとになったりしている森林の破壊や、食糧不足という問題に直面しています【6】。

ELC付与による商業的大規模プランテーションの促進政策は、当初意図された利益をもたらしていません。GTZ【7】は最近、カンボジアの土地に対する外国投資について報告書を発表しましたが、これによると、ELCのうち生産状態にあるのは10%に過ぎません【8】。ほとんどのELCでは、投資主体が森林を伐採した後に土地を放置したり、土地の価格上昇を待ってコンセッションを維持したりしています【9】。ELCは、雇用や貧困対策に資するのではなく、むしろ土地喪失、権利剥奪、住民移転、環境破壊の増加につながっています。

現在、農村世帯の少なくとも60%が、土地をまったく持たないか、0.5ヘクタール以下の土地しか持たない土地貧乏の状態にあり、一世帯の最低限の食料需要を満たすこともできません【10】。国連開発計画(UNDP)によれば、土地を持たない住民の数は、年2%という憂慮すべき上昇率を示しており、農村部における貧困の主な原因となっています【11】。政府の管理が不十分なまま新たなELCを付与して土地に対する大規模投資を増加させれば、このような持続不可能な状態がさらに悪化することは避けられません。

一方、政府は、社会土地コンセッションを通じて土地を持たない者に土地を分配するという公約を果たしていません。2008年を例にとると、ELC(経済土地コンセッション)によって民間企業に22万2,539ヘクタールの土地が付与されましたが、社会土地コンセッションを通して土地をもたない貧しい住民に与えられた土地は2,075ヘクタールに過ぎません【12】。

2009年8月、300以上の地域代表が、国民議会、閣僚評議会、大臣3名に対し、19の地域に住む15,000人の住民たちの署名を提出しました。この署名は、違法なELCと土地あさりによって20万ヘクタールをこえる住民たちの土地が脅かされていると述べ、政府に対し、コンセッションの無効化、地域社会に対する土地の返還、コンセッション政策の見直しを求めるものでした。

署名提出時、バッタンバン州の住民代表は、「私たちが自らの法的権利を守ろうとすると、脅しに会う」、「政府やドナーに、何が起こっているのか知ってほしい。私たちは、生活の支えである土地、森林、漁業を失いつつある。私たちはますます貧しくなり、富裕層はますます富んでいる」と語りました。私たちは、開発パートナーに対し、このメッセージに耳を傾けるよう切に求めます。

開発パートナーは、次のカンボジア開発協力フォーラムで、適切なセーフガード、法の支配を確実にする組織、歳入の透明性、人権擁護が確立されるまで、ELC付与について一時停止措置(モラトリアム)を実施するよう、カンボジア政府に訴えるべきです。

カンボジア政府と開発パートナーが行うべきは、地域住民が土地を維持できるような、地域に根ざした食糧・農業システムを促進することと、公平な土地および自然資源へのアクセスを保証する土地所有制度改革を実行することです。

私たちは、カンボジア政府との協力的な対話を望み、この嘆願書をお送りしております。迅速な回答と、上述の問題に対処するという確約を頂けますようお願い申し上げます。

デイビッド・プレッド(Bridges Across Borders Cambodia、代表理事)
シア・ぺェアラム(Housing Rights Task Force、事務局長)
ナリー・ピロージュ(LICADHO、理事)
チット・サマット(NGO Forum on Cambodia、代表理事)
イェン・ヴィラク(Community Legal Education Center、代表理事)


(文責 メコン・ウォッチ、翻訳 草部志のぶ)

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