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ホーム > 資料・出版物 > メールニュース >ラオス水力発電ダム(5)＞ナムパックダム 懸念される暮らしへの影響
メコン河開発メールニュース2010年12月27日
メコン河開発メールニュースでは、「東南アジアのバッテリー」を目指すラオスの水力発電開発について、現地情報を交え最近の状況を5回にわたってご紹介しています。第5回も続けて、神戸グリーンパワー社のナムパックダムの進捗についての報道記事を紹介します。
メコン河下流域の魚は、河川内で大きく回遊していることが知られています。雨季、7−8月にはナムパック川にもメコン河から回遊してくる魚が現れます。メコン河から離れたここでも魚の回遊の時期は、人々は漁で収入を得ています。それ以外の季節も川では自給のための漁が営まれています。
ラオス政府はその豊富な水力をエネルギーに変え海外に売電し、経済発展を実現しようとしています。その一方で、ラオスの国民の8割は農村部で自給的な生活を営んでいます。ダム建設は河川環境に大きな負の影響を与え、多くの場所で魚類の減少、漁業の不振を招いていることが報告されています。
また、第2回でご紹介したように、ボロベン高原ではプランテーション開発などが進み、住民が使える土地は限られてきています。ダム開発には、人びとがタンパク源を依存する河川生態系への影響や、その回避が可能かどうか詳しく検討することが必要です。ラオス国内では建設に向けて事業が前進している、との報道がなされていますが、このような懸念については全く触れられていません。
2010年9月28日 ビエンチャン・タイムズ紙
ポンサヴァン・ヴォンサイ
チャンパサック県ナムパック川での水力発電計画に関し、日本企業がラオス政府との事業契約の締結に向けて前進している。
27日、神戸グリーンパワー株式会社のヴィライ・スラタ副社長は、「来年5月には契約を締結する見込みだ」と述べた。
契約署名後、同社は建設期間も含めて30年間事業を行うことができる。
ヴィライ副社長によると、発電能力は120メガワット、予想される投資コストは約1.6兆キープ（2億米ドル）。建設は来年11月に開始可能で、完成には3〜4年を要する。
同社は、昨年11月にラオス開発投資省と開発同意書を交わし、現在、18ヶ月間の予定で綿密なフィージビリティ調査を行っている。この調査で、ナムパック水力発電事業の実現可能性が判断される。
同副社長は、「5月までに調査が終わり、その結果がラオス政府に提出されるだろう」と述べる。
調査内容には、建設システムや売電先も含まれる。同社は、まだ電力供給契約を締結していない。
貯水池は4〜5平方キロメートルで、発電所から700メートルほど高い場所に計画されている。発電所はパトゥムポーン郡、貯水池はパクソン郡に建設される。
貯水池の規模は小さいが、発電所と貯水池の間に700メートルの高低差があるため、補充的な水力をほとんど要さずに発電が可能で、年間を通じて発電所への送水が可能となる。
来年5月の建設開始に向け、同社は、次の乾季に建設現場への道路のアクセス状況を調べる。同社は2007年に、ラオス政府と予備的可能性調査のための開発検討に関する覚書に署名している。
当初の調査では、事業コストが8,470億キープ（1億米ドル）、発電能力が45メガワットと予想されていた。
この事業は、ラオス政府が20パーセント、神戸グリーンパワー株式会社が80パーセントのシェアをもつ合弁事業となる。
ラオス南部での電力需要が高まり、多くの水力発電計画が持ち上がっている。ナムパック水力発電所は、国内に電力を供給し、輸出用の発電も行うことが期待されている。
多くの水力発電事業が完成に近づくなか、現在から2020年までの間に、ラオスでは少なくとも1年に2基の発電所が操業を開始する。
2006年の時点では、ラオスに発電所は10基しかなく、総発電能力は700メガワットだった。現在は14基で、総発電能力は2,540メガワットだ。
エネルギー鉱業省エネルギー推進開発課によると、メコン河本流を除き、ラオスでは水力で26,500メガワットを発電できる可能性がある。
（文責 木口由香／メコン・ウォッチ 翻訳 草部志のぶ）