ホーム > 資料・出版物 > メールニュース >ラオス> 大規模インフラ事業>南部の鉄道建設に50億ドルの融資決定か?
メコン河開発メールニュース2013年4月30日
現在、ラオスでは、メコン河本流のサイヤブリ・ダムをはじめ、多くの大型インフラ事業が進行中です。今度は、南部を横断してタイとベトナムを結ぶ鉄道建設に対して50億米ドルの融資が決まったとの情報が入ってきました。
こうした大規模事業は、ラオスをほんとうに豊かにするのでしょうか。昨今のラオスは、経済・政治上の矛盾がますます深刻化しているかのように見えます。
以下では、鉄道事業への融資決定とあわせて、こうしたラオスの現状の一端を報じたthe Diplomatの記事を日本語要約で紹介します。
2013年4月18日
Luke Hunt記者『The Diplomat』
ラオス南部を横断してタイとベトナムを結ぶ220キロの鉄道建設事業に対して、50億米ドルの融資が決まったとのことである。融資を決めたのは、ニュージーランドのRich Banco Berhadという企業集団で、この融資で、マレーシアを拠点とするGiant Consolidated社が鉄道を建設する。
近年のラオスは、大型インフラ事業を何件も計画しているが、多額の融資の返済能力に疑いを持つ経済専門家もいる。世界銀行によれば、ラオスのGDPは2011年時点で83億米ドルであり、今回の融資額は、この額の半分以上にあたる。中国企業が収益性を疑問視して事業から撤退したため、鉄道はラオス政府の所有となり、融資の返済もラオス政府の責任である。
一方で、中国企業は、中国国境とビエンチャンを結ぶ72億米ドルの南北高速鉄道建設事業には、依然として乗り気である。(※) アジア開発銀行(ADB)は、この事業への融資に尻込みしたが、中国輸銀が融資を検討しており、ラオスの運輸大臣によると、事業はほぼ開始準備完了の状態にある。
とりわけ論議をよんでいる大規模インフラ事業には、メコン河下流本流にはじめて建設されるサイヤブリ・ダムがある。ラオス政府は、ダム建設に疑義を持つ者を納得させようと大々的なPR作戦を展開してきた。ところが、生態系や漁業への影響の可能性が具体的に指摘されてPRの内容と矛盾し、ベトナム、カンボジアをはじめ、メコン河委員会(MRC)を援助する西欧諸国が建設延期を主張すると、ラオス政府は公式の場では同意を表明しながら、ひそかに工事を進めた。
国外から大規模インフラ事業に異を唱える者については、西側の報道がデマを流していると言い、恩恵に疑いを持つラオス人に対しては、非国民呼ばわりをしてきた。最近では、ソムバット・ソムポーン氏の失踪事件に関して、国際社会からの圧力が強まっている。先月には、ジョン・ケリー米国務長官が、ラオス政府に事件の捜査を早めるよう働きかけた。
こうした論議の真っただ中で、ラオス政府は、建設に4年を要する鉄道事業というあらたな重荷を背負ったことになる。
【訳注】
(※)2012年10月にラオスは特別国会を招集し、南北高速鉄道事業を承認している。
原文(英語)はこちら
http://thediplomat.com/asean-beat/2013/04/18/laos-approved-for-u-s-5-billion-loan-for-rail-project/
(文責・翻訳 メコン・ウォッチ)