ホーム > 資料・出版物 > メールニュース >中国政府、海外での事業に対する環境保全指針を発表
メコン河開発メールニュース2013年5月9日
今年2月28日、中華人民共和国の商務、環境保全両省が、中国企業による海外での投資活動などに関して、地元の自然・社会環境の保全に配慮するよう促す指針(「対外投資協力環境保護指針」)を発表しました。【1】
豊富な資金力を背景に、海外で旺盛な開発事業を実施してきた中国企業ですが、メコン圏でも、カンボジアのカムチャイ・ダム建設による環境破壊、ストゥンアタイ・ダムの破損、下流セサン2ダムへの地元住民の反発、ビルマ(ミャンマー)のミッソン・ダムに対する反対運動と建設中断など、各地で問題に直面しています。【2】今回の指針の発表の背景には、中国企業に集まる批判の声が、国際社会での中国の立場に有利に作用しないとの判断と、中国の市民社会による働きかけがあります。【3】
「対外投資協力環境保護指針」では、中国企業に対して、地元の文化・慣習に対する配慮や産業廃棄物の取り扱いへの留意に努め、国際機関の環境保全基準からも学ぶように呼びかけています。その一方で、指針には拘束力がなく、被害を受けた地元住民が中国企業や政府に対して苦情を申立てたり、事業を中止にする手続きもありません。その意味では、非常に不十分な指針です。しかしながら、国際社会に対する中国政府の意思表明である以上、中国企業への影響は無視できないでしょう。現地国政府、地元住民、国際社会がこの指針を活用して、中国企業・政府に情報公開や影響緩和策を求めてゆくことが、指針の実効性を高めていくと思われます。
以下では、米国のNGO「インターナショナル・リバーズ」がホームページに掲載した情報・分析などを基に、今回の「指針」の要点をまとめました。【4】
「指針」は全22条から成り、現地国の法令遵守、地元文化の尊重、環境・災害管理計画、影響緩和措置、地元住民対策、汚水・産業廃棄物処理、国際環境基準といった課題に言及している。重要な内容は、「地元住民との対話」と「環境影響の緩和」の二つに大別できる。
「地元住民との対話」については、以下のようにうたわれている。
「環境影響の緩和」については、以下のようにうたわれている。
主な課題には、以下の点がある。
注
【1】「指針」の原文(中国語)は、以下で閲覧可能
http://www.mofcom.gov.cn/article/b/bf/201302/20130200039930.shtml
英文訳は、以下で閲覧可能
http://english.mofcom.gov.cn/article/policyrelease/bbb/201303/20130300043226.shtml
【2】ここで言及した事業については、以下を参照
カムチャイ・ダム
http://www.mekongwatch.org/report/cambodia/kamchay.html
ストゥンアタイ・ダム
http://www.mekongwatch.org/resource/news/20121210_01.html
下流セサン2ダム
http://www.mekongwatch.org/report/cambodia/LowerSesan2.html
ミッソン・ダム
http://www.mekongwatch.org/resource/news/20111007_01.html
【3】Global Environmental Institute(GEI)が中心的な役割を果たした。
http://www.geichina.org/index.php?controller=News&action=View&nid=189
【4】特に、Grace Mang. “Beijing Sends a Signal to Chinese Overseas Dam Builders”. April 23, 2013.を基にしてまとめた。
http://www.internationalrivers.org/blogs/262/beijing-sends-a-signal-to-chinese-overseas-dam-builders
(文責/翻訳 メコン・ウォッチ)