ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ビルマ > シャン州北部の農民、中国への天然ガス輸送パイプラインの撤去を求める
メコン河開発メールニュース2013年9月25日
2013年7月、ビルマ(ミャンマー)アラカン(ラカイン)州沖のガス田(「シュエ田」)から中国雲南省への天然ガス供給が始まりました。天然ガスはビルマを横断するパイプラインによって輸送されています。このパイプラインが通るシャン州北部で農業を営むシャン民族の住民たちが、パイプライン建設によって深刻な被害を受けたとして、パイプライン建設完成直前の4月に、パイプラインの撤去を求めていました。シャン人権基金(SHRF)やシャン女性行動ネットワーク(SWAN)を含む、シャン民族の諸団体によるプレスリリース(2013年4月5日付)をご紹介します。
シャン州北部でのパイプラインによる被害について、より詳しい情報は、プレスリリースと同時に発表されたブリーフィングペーパー(写真入り)をご覧ください。
http://www.shanhumanrights.org/images/stories/Action_Update/Files/shan%20pipeline%20-%20english.pdf
シャン民族諸団体によるプレスリリース 2013年4月5日
本日、シャン州北部の農民たちはビルマ政府に対し、中国への巨大石油・天然ガスパイプラインを彼らの土地からただちに撤去するよう要請書を提出する。人権侵害、ずさんな建設、そして安全性に対する恐れがあることを理由として挙げている。
1万人で組織される北部シャン農民委員会の代表らが今日、シャン州タウンジーにあるシャン州議会に、ビルマを横断するパイプラインを来月の操業前に撤去してほしいとの要求を伝える。
全長800キロメートルに及ぶパイプラインの3分の1が、シャン州北部の約800ヘクタールの森林や農地を横断する。2011年以降、広大な面積の水田と果樹園が掘削された。土壌が投棄され水が堰き止められたため、幅約30メートルのパイプライン通路をはるかに超えた範囲で農作物に被害が及んだ。村々は水源を断たれただけでなく、建設用の車両が道路に損傷を与え、死亡事故を引き起こした。
6つの郡のシャン民族農民たちは、不当で不平等な額の補償金を受け入れることを強要された。シーポーの農民は水田の補償として、ナムカンの農民に支払われた補償金のたった4分の1の額しか受け取れなかった。
農民たちは、ずさんな建設と、シーポーにある腐食性の地下塩類鉱床といった現地の土壌の危険性によって、住居の近くでガスの漏出や爆発が起きて死者が出るのではないかと危惧している。パイプラインにはすでに穴が開いているが、それらは薄くてもろいゴムのテープで修繕されている。それでは何十億立方メートルという量のガスや石油の圧力に耐えられないだろう。安全面でのリスクについて、地元の住民はまったく情報を提供されていない。
「自分たちの家の下に時限爆弾が埋められたように感じています」とナムカン出身のナン・ムウェセン氏は言う。「私たちの合意もないまま土地が取り上げられただけでなく、いまや命も危険にさらされています」
シャン州北部にあるパイプライン周辺では、ビルマ国軍とカチン民族、タアン民族、そしてシャン民族の反政府武装勢力との戦闘が続いており、住民はガスや石油がパイプラインを通るようになったら、地域の軍事化がさらに進み、ビルマ国軍による人権侵害がさらに悪化するのではないかと恐れている。
中国へのパイプラインは、ベンガル湾のガス田からのガスと中東からの石油を中国の雲南省に運ぶことになる。国営の中国石油天然ガス集団(CNPC)とミャンマー石油ガス公社(MOGE)とのジョイント・ベンチャー事業である。ビルマ政府は、中国へのガスの売却によって、30年間でおよそ290億米ドルを稼ぐだろうと目算されている。
報告書「Shan farmers oppose the Shwe pipelines(シャンの農民らがシュエ・パイプラインに反対)」はhttp://www.shanhumanrights.org/images/stories/Action_Update/Files/shan%20pipeline%20-%20english.pdfで閲覧できる。
本プレスリリースを発出したシャン民族諸団体には、以下の団体が含まれる。シャン人権財団、シャン女性行動ネットワーク、シャン・ユース・パワー、シャン・サパワ環境団体、シャン州機関、シャン州開発財団、ならびにシャン・ユース・ネットワークグループ。シャン民族諸団体は今日、チェンマイにある中国領事館に、シャン州北部の農民の要求を伝える。
出典:”Northern Shan farmers call for Chinese pipelines to be removed from their lands,” press release by Shan Community Based Organizations, April 5, 2013.