ホーム > 資料・出版物 > メールニュース > ラオス・ナムトゥン2ダム>世銀・ADBの支援決定から十年、課題は山積
メコン河開発メールニュース2015年4月2日
昨日4月1日は、2005年にアジア開発銀行(ADB)の理事会がラオス・ナムトゥン2ダムの建設に対して財政支援を決めてからちょうど十年目にあたりました。前日の3月31日には、世界銀行(世銀)がすでに支援を決定していました。
当時、メコン河流域内外のNGO・市民社会は、ナムトゥン2がもたらす甚大な環境社会被害、ラオス国内の市民社会や法制度の脆弱性、世銀やADBが過去に支援したダム案件で発生した問題などを根拠に、世銀とADBがナムトゥン2に関与することに強く反対しました。メコン・ウォッチも、世銀・ADB内で大きな発言力を持つ日本政府・財務省に支援見送りを働きかけましたが、結局、支援は決まり、ナムトゥン2は2010年3月に商業運転を開始しました。
これまでの経緯は>
http://www.mekongwatch.org/report/laos/laos_nt2.html
しかし、案の定と申しますか、現地では環境社会被害が深刻化し、世銀自身が2014年6月、事業の進捗状況を総合して、「やや不十分(moderately unsatisfactory)」との評価を下しています。世銀やADBが委託した専門家委員会(POE)の最新報告書(2014年12月)でも、移転住民の生活再建に遅れが生じ、住民が違法伐採などで現金収入を得ているといった課題が指摘されています。【注】
また、ナムトゥン2は、メコン河流域で巨大ダム建設が加速するきっかけにもなりました。その後、ADBはラオスなどで支流ダムの建設を支援し、ADBも世銀も流域内の送電線網の整備を後押しするなど、間接的な形でダム開発への支援を続けています。
世銀とADBの決定から十年目を迎え、メコン・ウォッチでは、国際NGO五団体と協力して上記の問題点をまとめたうえで、両機関をはじめ関係機関に対して、ナムトゥン2の失敗を認め、巨大ダムの建設を助長する支援政策を抜本的に見直すよう求める共同声明を発しました。英文のままですが、ご紹介させていただきます。
共同声明(英文)は>
http://www.mekongwatch.org/PDF/rq_20150401ENG.pdf
【注】
世銀のナムトゥン2事業評価(英文)は>
http://www.worldbank.org/projects/P049290/nam-theun-2-social-environment-project?lang=en
専門家委員会(POE)第23次報告書(英文)は>
http://namtheun2.com/images/stories/poe/poe23.pdf
(文責 土井利幸/メコン・ウォッチ)