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メコン河開発メールニュース2019年10月21日
ラオス人の中には、政府の政策や開発を批判したことで身の危険を感じ、ラオスから隣国タイへ脱出し、国連に難民として認められタイにとどまっている人たちがいます。これらの人びとのうち、人権活動家として積極的に発言をしていたオット・サヤウォンさんが、8月末、夕食を買いに行くと外に出たまま行方不明となり、強制失踪(注*)にあったとみられています。
前回のメールニュースでお伝えしたとおり、ラオスではSNSで政府の洪水対策を批判した女性が逮捕されています。
http://www.mekongwatch.org/resource/news/20191011_01.html
2012年には、ラオスで著名な社会活動家であったソムバット・ソムポーンさんが自宅に帰る途中に警察官によって車を止められた後、何者かに連れ去られたまま足取りは未だに不明です。ご家族は今も彼が帰って来ることを願っています。一連の情報は以下をご覧ください。
ラオス・社会活動家失踪事件
http://www.mekongwatch.org/report/laos/laos_disappearance.html
オットさんの事件を受け、10月1日に国連の人権特別報告者が連名で、ラオスとタイの人権状況に懸念を表明しましたので翻訳してご紹介します。
原文はこちらに掲載されています。
Thailand/Lao PDR: UN experts concerned by disappearance of Lao human rights defender
https://www.ohchr.org/SP/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=25087&LangID=E
ラオスの人権状況は憂慮すべき状況が続いています。それに加えて、これまで軍事政権下のミャンマーの民主化運動グループの活動拠点となるなど、周辺国の市民の避難場所であったタイが変容してきたことは、流域全体の人権状況の悪化、そして市民社会スペースの縮小を示す懸念すべき事態です。持続的な開発には、様々なステークホルダーの参加と言論の自由が保障されていることが前提とされていますが、その実現が未だに難しい状況であると言えるのではないでしょうか。
(注*)国の機関等がある人の自由をはく奪し、失踪者の所在を隠蔽し、かつ、法の保護の外に置くこと。
ジェネーブ(2019年10月1日)
国連の人権専門家は、著名なラオス人人権擁護者であるオット・サヤウォン(Od Sayavong)の失踪について、深刻な懸念を表明した。彼は国連の特別報告者との会合からわずか数ヶ月後にタイで行方不明になった。
懸念を表明した人権専門家は、国連の難民機関によって認定されているオットを発見するために取られている手順を明らかにすることと、バンコクにいる他の脆弱な立場のラオス人人権擁護者の安全確保を、タイ政府に要求した。
オットが最後に目撃されたのはバンコクの自宅で、2019年8月26日だった。9月2日、彼の仲間がタイ警察にその失踪を届け出た。警察は彼の居場所について明らかにしていない。
人権団体は、難民や亡命希望者に対し彼らが迫害に直面している自国へ、強制的かつ、しばしば不法に送還を行う地域国家間の協力は、憂慮すべき傾向だと指摘している。それにはタイから近隣国への送還も含まれる。
オットは、タイに住むラオス人移住労働者と人権擁護者のグループで、ラオス人民民主共和国(ラオス)の人権擁護と民主主義を提唱する「Free Lao」の元メンバーだ。バンコクにいる「Free Lao」に所属する人権擁護者たちは、ここ数週間、特にバンコクでのASEANサミットと並行して行おうとしていた活動に関連して、監視と脅迫を受けていると述べている。2017年には、国連の専門家が、このグループの3人のメンバーが、タイ滞在中にラオス政府を批判する活動に参加した、という理由で12年から20年の懲役判決を受けたことに懸念を表明している。
極度の貧困と人権に係る国連特別報告者であるフィリップ・アルストン(Philip Alston)は、ラオス訪問に先立ち2019年3月15日、オットや他のラオス人人権擁護者とバンコクで会談している。「もしもオットの国連システムへの関与に対する報復として強制失踪が発生しているとしたら、それは彼の人権への侵害であり、即時の行動が求められる。人権分野で誰一人、国連との接触およびコミュニケーションを妨げられるべきではない」とアルストンは述べた。
「オット・サヤウォンは、恣意的逮捕と強制失踪の履歴があるラオスという国の、人権、汚職、環境問題についての声高な提唱者だ」と、人権擁護者に関する国連特別報告者のミシェル・フォースト(Michel Forst)は述べた。「タイ当局がオットの居場所に関する情報を迅速に提供することを望んでいる。それまでは、彼の失踪が、彼の安全上、重大な脅威となる国に強制送還させられている可能性を否定できない」
「普遍的な人権に関する法や基準に沿って政治的な意見の相違を表明しただけで、標的にされることは、誰に対してもあってはならない」と言論と表現の自由に関する国連特別報告者、デイビッド・ケイ(David Kaye)は述べた。「オットの失踪は非常に懸念されることで、表現の自由に対する権利の行使に恐ろしい影響をもたらす可能性がある」。
国連の専門家たちは、ベトナム人のブロガーでジャーナリストのTruong Duy Nhatの強制失踪と、その後のタイからベトナムへの強制送還といった、同様の複数の事件についても懸念を表明した。彼らはまた、ラオスに亡命したタイの政治活動家スラチャイ・ダンワッタナヌソーン(Surachai Danwattananusorn)とイティポン・スクパン(Itthipol Sukpan)の2018年12月と2016年6月の失踪についても懸念を表明した。
強制的または非自発的失踪に関する作業部会の議長であるルチアーノ・ハザン(Luciano Hazan)は、次のように付け加えた。「オットが行方不明になった状況は憂慮すべきものであり、タイ当局はこの失踪を調査し、彼を探すために必要なすべての措置を講じる必要がある」。(彼は)ラオスが、市民社会のリーダーで2012年に失踪したソムバット・ソムポーン(Sombath Somphone)の事件解決に向け、未だに意味のある行動を取っていないことに言及しながら発言した。
人権専門家たちは、懸念を既にタイ政府とラオス政府に伝えている。
以上(原文にあった注は省略しています)
(翻訳/文責 メコン・ウォッチ)