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ホーム > 資料・出版物 > プレスリリース・要請文 > タイ・サムットプラカン県汚水処理施設への環境ODA： 環境影響調査（EIA）をめぐって問題が深刻化
2000年8月22日
日本のODAなどでタイのサムットプラカン県クロンダン区に建設が進められている汚水処理施設に対し、異例の建設中環境影響調査が実施されましたが、この結果について、援助を実施した日本政府とアジア開発銀行（ADB）のアメリカ人理事の認識が大きく異なっていることなどが判明し、事前の環境影響調査なしに進めているこの『環境保全事業』の問題は今後更に深刻化しそうです。この汚水処理施設については、漁業を営む近隣の住民から環境破壊を心配する声が強く出されているほか、土地の取得をめぐる不正取引などが指摘されています。
本プロジェクトは、サムットプラカン県全域の工業・生活廃水の処理を目的として、旧海外経済協力基金（OECF、現在の国際協力銀行＝JBIC）及びアジア開発銀行（ADB）の融資によって1998年に建設が始まりました。しかし、建設開始後にプロジェクトの存在を知った建設地の住民から、様々な懸念が表明され、2000年5月のADB総会では200人以上の村人が、抗議のためにチェンマイを訪れ、ADBの理事にプロジェクトの中止を訴えました。漁業や関連産業で生計を営む現地の住民たちは、淡水や重金属の排出による環境破壊、土地購入に関わる汚職疑惑、環境影響評価（EIA）の不在、住民参加の欠如などを問題として挙げています。
5月以降、現地住民、タイの環境NGO、国際NGOなどが、タイ政府やADB、国際協力銀行（JBIC）との政策対話に取り組んでいます。日本では、メコン河流域国の環境・開発問題に取り組むNGOであるメコン・ウォッチが、JBICに対して、EIAが行われていない本プロジェクトは旧OECFの環境ガイドライン違反であると訴えてきました。これに対しJBICは、フィジビリティ・スタディ（実現可能性調査）の中で行われている初期環境影響調査（IEE）によれば、重大な環境影響はなく、EIAを行う必要はないとしており環境ガイドラインの違反はないと主張しています。また、建設を進めている事業者によって異例の建設中のEIAが行われ、現在ドラフトがタイ政府に提出された段階ですが、このEIAからも大きな環境影響は生じないとの事実が確認されているとJBICは主張しています。この見解は、参議院の中村敦夫議員が提出した質問主意書に対する森総理大臣名での公式の答弁書の中で明らかにされました（共に希望者に提供可）。
これに対して、先日アメリカのNGOであるBank Information Centerと会合を行ったADBのアメリカ理事代理は、（1）IEEは建設地であるクロンダン区を対象としておらず、本プロジェクトはADBの環境ガイドラインに違反していること、（2）現在実施中のEIAは質が低いとしてタイ政府が却下したことなどを認めています（この会合の英文議事録は提供可）。
これらのアメリカ理事代理の認識は、先に紹介しました中村議員の質問主意書に対する森総理の答弁書と大きく矛盾しています。これまでのJBICによる説明とは大きく食い違ったものであり、今後の本プロジェクトの扱い（融資の中止や独立審査）に対して影響を与える可能性があります。また、アメリカの理事代理が語った通り現在ドラフト段階のEIAが不十分なもので、環境への大きな影響が考えられるということになれば、質問主意書への森総理の答弁の信憑性についても疑問が生じることも充分考えられます。
メコン・ウォッチでは、二国間ODAを拠出しかつADBへの最大の援助国である日本政府の責任を重視しており、日本で関心を持っている人たちのクロンダン区への視察ツアーを計画しています。8月25日に現地視察・地域住民との対話をする予定です。関心のあるマスコミ関係者の同行は可能です。
なお本プロジェクトの概要と問題点については以下のホームページをご覧ください。
また、8月11日発売の『法学セミナー』2000年9月号に、新潟大学の鷲見和夫教授がこのプロジェクトの問題点等をまとめています。
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