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サムットプラカン汚水処理プロジェクト

サムットプラカン汚水処理プロジェクトは、バンコクから南に1時間ほどのチャオプラヤ川河口に建設中の汚水処理施設を中心とするプロジェクトです。「環境ODA」として日本やアジア開発銀行から資金が供与されていますが、環境や住民の生活への重大な影響が予想されるほか、不十分な環境アセスメント、住民参加の欠如など多くの問題が指摘されています。

プロジェクト名
サムットプラカン汚水処理プロジェクト
所在地
タイ・サムットプラカン県クロンダン地区
実施機関
タイ科学技術環境省(現天然資源・環境省)公害管理局
資金供与
国際協力銀行(JBIC)が円借款(ODA)としてタイ環境基金を通じて70億円、アジア開発銀行が2億3000万ドルを融資。
状況
2003年2月にタイ政府がプロジェクト建設中断を指示。

サムットプラカン汚水処理プロジェクトとは

サムットプラカン汚水処理プロジェクト所在地

サムットプラカン汚水処理プロジェクトは、バンコク首都圏に属するサムットプラカン県で進められている汚水処理プロジェクトです。プロジェクトは、(1)クロンダン区の汚水処理施設、(2)200km以上に及ぶ汚水収集のためのパイプライン設置、を主な内容とし、現在建設が進んでいます。プロジェクト地は元々予定されていたバンプー区・バンプラコ区からクロンダン区に変更されています。

クロンダン区の海岸沿いは淡水と海水が交じり合う汽水域であり、マングローブの生える豊かな自然の中、人々は古くから漁業で生計を立ててきました。貝やエビの養殖、稚魚の養殖、魚介類の加工業、塩の製造、そしてこうした製品の運送・仲買など、クロンダン区に住む世帯の60〜70%がこうした漁業と関連産業で現金収入を得ています。

建設現場

ところが、建設中の汚水処理施設によって、大きな環境への影響が懸念されています。この施設は、工業団地からの重金属や有害物質を含む汚水を処理できるように設計されていず、未処理の汚水による環境破壊が予想されるほか、大量の淡水が流れ込むことによって汽水域の生態系に大きなダメージを与える可能性があります。また建設中の現在でも、建設廃棄物が、住民の漁業・交通の場である運河に投棄され、地域住民の生活に影響が出ています。

これだけの環境への影響が予想されるにもかかわらず、環境アセスメントは極めて不十分にしか行われていません。初期的な環境影響評価がなされたものの、その後プロジェクト予定地が移転し、移転先のクロンダン区では環境影響評価が行われず、住民の批判を招いています。プロジェクト地の移転については汚職も指摘されています。

漁村の風景

住民がこのプロジェクトを知ったのは、建設が既に始まっていた1998年後半のことです。その後技術的なヒアリングは行われたものの、住民が公式にプロジェクトに対して意見を述べる機会はありませんでした。住民たちは、プロジェクト完成後の生活への影響を心配しながらも、今も生活しています。

このプロジェクトに対してはアジア開発銀行から2億3000万ドル、旧海外経済協力基金から70億円の融資が行われています。2000年5月にチェンマイで開催された第33回アジア開発銀行(ADB)年次総会において、200人を超える住民が千キロ以上離れたクロンダン区から抗議のために集まりました。ADB総会期間中、NGO主催の「ピープルズフォーラム2000」でアメリカなどADBの理事3人に、問題の深刻さと開発プロセスの不透明性を訴えたり、日本の大蔵省代表団と個別の会合を設けてADBの対応を批判したりしました。ADBは問題のレビューと調査団の派遣などを決め、国際協力銀行(JBIC)も同調する姿勢を示していますが、その間の融資の凍結や工事の中断がないことに批判が出ています。

2000年以降の動き(その1):クロンダン住民、ADBに異議申立て

2000年12月、汚水処理施設建設反対運動のリーダーとタイのNGO代表が日本を訪れ、財務省・外務省・国際協力銀行(JBIC)などと会談し、問題の解決を訴えました。施設建設を経済面から支える日本政府・開発機関の責任を問い、融資中止を求めることが目的でした。また、東京・大阪・福岡では報告会も開催され、日本政府の関与を監視すべき日本の市民にも問題が伝えられました。しかし2003年12月の完成を目指し建設工事は「着々と」進行しました。

そこでクロンダン区住民はADBの異議申立制度を使って建設計画の問題点を明らかにさせることにしました。煩雑な手続きを経て2001年4月、住民代表三名がADBの異議申立制度・独立審査機関である「インスペクション・パネル」に対して、「汚水処理施設建設計画への融資はADB自らの政策に違反している」との訴えを提出しました。ADBでは1995年にすでにこの制度が設置されていましたが、それまで実際に審査が実施されることはなく、この時もADB内部でクロンダン区住民の訴えを審査の対象とするかどうかで意見が分かれました。最終的には審査の決定が下され、パネルが調査を開始しました。

ところが大きな問題が発生しました。タイ政府がパネルの現地調査に応じなかったのです。ADBとタイ政府の間で交渉が重ねられ、クロンダン区住民代表がADB本部で聞取りに応じるなどの善後策も検討されましたが、結局パネルは机上調査によって報告書を完成させることを強いられました。パネルとしても不本意だったでしょうが、クロンダンの豊かさをADBに認識させようと必死になっていた住民にとっては非常に不満な結末でした。千野ADB総裁(当時)が自らタイ政府の説得に乗り出すなどリーダーシップの発揮を求められた局面でもありましたが、総裁はついに腰を上げようとはしませんでした。

2001年12月にパネルが報告書を発表。この報告書の中でパネルは、予算超過時の追加融資・業務派遣・環境配慮・非自発的住民移転・社会的側面の統合・ガバナンスの六つの政策・手続きにおいて「ADBが政策違反を犯した」と認めました。とりわけ、1998年の追加融資時に計画の再審査を行わなかったことが他の政策違反につながったと結論付けます。しかしADBの政策違反をはっきりと認めながらも、パネルはクロンダン住民が最も望んだ融資の中止を勧告するまでには至りませんでした。クロンダン住民はこの点に強く反発します。翌2002年3月、ADB理事会もパネルが認めた政策違反については受け入れますが、結局ADB自身によって汚水処理施設が抜本的に見直されることはありませんでした。

2000年以降の動き(その2):タイ政府・天然資源・環境大臣による工事中止命令

ADBの政策違反が明らかになる中でも建設工事は進行しました。ところが、2002年5月に一大転機が訪れます。タイ政府のタクシン首相(当時)がクロンダン区を訪問し、集まった住民の前で「この建設計画は不透明だ」と明言したのです。この出来事以来、汚水処理施設建設にまつわる不正の追求が焦点となります。住民やタイのNGOもメディア関係者の力をかりるなどして情報を収集・分析。その結果をもって管轄省庁である天然資源・環境省にねばりづよく働きかけます。

そして2003年2月、パパット天然資源・環境大臣(当時)がクロンダン汚水処理施設建設の工事契約に「重大な違反があった」ことを公表しました。これにより建設契約は無効。大臣は同時に工事中止を指示しました。ここでの「違反」とは、汚水処理を担当するはずの英国企業がタイ政府との契約締結直前にジョイント・ベンチャーから離脱していたにもかかわらず、このことが報告されずに契約が結ばれた点を指しています。これはまた、建設地取得をめぐるより大きな不正追及のための序章でもありました。この後タイ国内ではサムットプラカン汚水処理プロジェクトをめぐって、大物政治家らを被告に何件もの刑事・民事訴訟が起こされており、裁判が終了するまでには何年もかかると言われています。

2003年2月のパパット天然資源環境大臣の決定をもって、汚水処理施設は完成一歩手前で頓挫してしまいました。紆余曲折を経ながらも、5年に及ぶクロンダン区住民の願い通り、汚水処理施設プロジェクトは中止に追込まれました。


「東南アジア最大級」と言われた汚水処理施設の一部。
2003年以降工事は中断したままである。
「せっかくだから完成させれば」という声は、この処理場が
もともと技術的にも経済的にも汚水処理問題を解決できない
点を見逃している。


工事中止で環境が回復しつつあるクロンダン区。
マングローブの中に天然資源を生計として利用する人びとの
「手入れ」が垣間見れる。ADBをはじめとする開発機関は 最後まで
この豊かさを無視して、「施設建設は地元のためにも役立つ」と
強弁した。

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