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国際協力銀行、住民の反対を無視しタイの火力発電事業への融資決定を強行
〜環境社会配慮ガイドライン違反の疑い〜

メコン・ウォッチ プレスリリース

2005年11月30日

国際協力銀行(JBIC)は11月11日、タイの「カエンコイU天然ガス焚き複合火力発電事業」の事業者に対して、日本の民間銀行などと協調して約7億1300万米ドル(約840億円、1ドル118円換算)を限度に融資を実行する契約に調印しました(注1)。しかし、このプロジェクトの事業者は、環境破壊を懸念する住民に対して適切な説明を行わず、強引に支持を取りつけようとするなど、強硬に建設工事を進めています。現地住民は、こうした問題をJBICにも伝えていますが、JBICは有効な手段を取ることなく今回の融資決定を下しました。こうしたJBICの行為は、2003年に施行された環境社会配慮ガイドラインに違反する疑いがもたれます。

ゲンコイU複合火力発電事業とは(注2)

タイ中部サラブリ県に建設中の天然ガス焚き複合火力発電所であり、発電容量は1468メガワット、2004年末から建設が始まっています。タイの電力セクターの民営化に伴って導入された独立発電事業者(IPP)によるプロジェクトで、日本の電源開発が、事業者ガルフパワー社の100%親会社ガルフエレクトリック社に対して49%を出資しています。JBICは、事業者であるガルフパワー社がタイ発電会社(EGAT)に電力を販売するための長期資金を融資します。

現地住民の懸念と不適切な合意形成

現地の住民は、既に100以上の工場があるゲンコイ地区の更なる環境破壊を懸念し、事業の与える悪影響とその対策に関する協議を事業者やJBICに求め続けています。しかし、事業者のガルフパワー社は、環境影響評価をタイ政府が受理する直前まで住民に公開せず、住民からの質問にもきちんと答えないばかりか、強引に支持を取りつけようとするなど、強硬に建設を進めています。このため、独自の活動を思いたった住民が、自分たちの手で情報を収集し、より多くの人々から理解を得ようと情報発信を行ったところ、2005年の6月と7月、「虚偽の情報を流布した」として6名が環境関連法違反容疑で地元警察に逮捕されました。住民は、住民参加の権利や表現の自由が蔑ろにされていると主張し、タイ上院の「社会開発と人間の安全保障委員会」もこの問題を調査しています。

環境社会配慮ガイドライン違反の疑い

この事業には2003年に施行された「環境社会配慮のための国際協力銀行ガイドライン」(以下ガイドライン)が適用されるため、JBICには融資決定の際、環境社会配慮の要件を確認する義務があります。ガイドラインは融資の要件として、「早期の段階から、情報が公開された上でステークホルダーとの十分な協議を経て、その結果がプロジェクト内容に反映されていることが必要」とし、「社会的に適切な方法で合意が得られるよう十分な調整が図られていなければならない」としています。しかし、これらの項目はいずれも守られていません。JBICはプロジェクトの環境審査において、重要なステークホルダーである現地反対住民の参加に対する配慮を怠り、反対住民からの情報提供を活用していません。また、この事業の前身は、タイ南部で計画されたボーノーク石炭火力発電所計画であり、この計画は、深刻な環境影響を無視し、懸念を表明する住民の声を力でもみ消そうとした結果、タイ国内で大規模な現地反対運動を引き起し、結局中止に追い込まれました。社会的合意形成において、同じ問題を抱えるゲンコイIIに融資決定をしたJBICは過去の経験を教訓化しておらず、これもガイドライン違反の疑いがもたれます。

この件に関するお問合せはメコン・ウォッチ(担当:後藤(東京)・土井(バンコク))まで

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