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【プレスリリース】メコン河流域国に対する援助政策見直しを求め、 NGO/NPO18団体が共同要請
「過去のODA事業の問題点を検証し、インフラ開発より制度支援を」

2009年11月4日

開発援助のもたらす環境社会影響に関心を有するNGO/NPO18団体は、11月4日、鳩山首相および関係大臣に対して、メコン河流域国に対する援助政策の見直しを求める要請書を提出しました。

カンボジア、タイ、ビルマ(ミャンマー)、ベトナム、ラオスのメコン流域5カ国に対する日本の二国間ODAは円借款、無償資金協力、技術協力合計で1,962億円(2007年度)にものぼり、同地域の最大のドナーとなっています(注1)。
一方、ODAによって実施されている大規模インフラ事業の一部は、環境汚染や生態系破壊、住民移転などの環境社影響を引き起こしています。日本は、新たに、日メコン地域パートナーシップに基づくODA拡充、「開発の三角地域」支援(約20億円)、東西回廊等の物流円滑化支援(約20億円)により、次々とインフラ建設支援を進めていますが、過去のODAの十分な検証なしに、巨額の支援をし続けることは、ODAによる直接的な環境社会影響を繰り返すばかりか、相手国の構造的な社会問題を温存し、助長することにもつながりかねません(注2)。

要請書では、このような認識を踏まえ、@過去のODA事業の問題点を包括的に検証し、問題解決への支援を実施すること、Aインフラ開発より環境・社会保全政策や法制度整備の分野への支援を優先させること、BODAの検証およびODA戦略立案に当たっては、流域国政府だけでなく各国の市民社会からの声にも耳を傾けること――などを求めています。

さらに、ODAに関連する諸問題として下記を例示しています。
・ タイでは、日本のODAで整備され日本企業の海外進出の受け皿となった東部臨海工業地帯のマプタプット地区で住民が長年悪臭や呼吸器疾患を訴えており、今年、同国の公害管理地域に指定された。
・ カンボジアでは強制立ち退きの問題が深刻化しているのにも関わらず、日本は大規模な住民移転をともなう道路建設を支援し続けている(注3)。
・ 日本政府は、ビルマ(ミャンマー)の天然ガス開発に権益を持っている日石ミャンマー石油開発へ出資しているが、軍事政権が天然ガス輸出からの収入を軍備拡大に使っていることが指摘されている。
・ ラオスでは、アジア開発銀行(ADB)と日本政府の協調融資によって2000年ナムルックダムが完成したが、漁業への打撃や水質悪化によって多くの人々が悪影響を受けている。
・ ベトナムでは、ODAにより、大型の道路・鉄道、水力発電建設事業など、ときに一事業で数千世帯にものぼる 住民移転を伴う事業が数多く推進され、都市の貧民層および山岳部の先住・少数民族に生活が激変を強いられてきたが、移転後の生計回復に関する検証はされていない。

また、メコン流域における喫緊の環境・社会問題として、メコン河本流ダムの建設計画を取り上げ、流域の多くの人々は河が育む豊かな生態系(注4)に根ざした生活を営んでいることを指摘、「日本は他の国際ドナーや中国などの新興国とともに、メコン流域国における環境・社会配慮のための制度向上に積極的に取り組み、1960年代に作られた古いインフラ偏重の開発路線から各国政府が脱却し、自然や社会の破壊を伴わない開発を進める支援を行うべきだ」としています。

注1)円借款(交換公文ベース、債務救済を除く)1,654.46億円、無償資金協力(交換公文ベース)155.5億円、技術協力(JICA経費実績ベース)152.31億円。出典:外務省「政府開発援助(ODA)国別データブック 2008」。

注2)出典:外務省「政府開発援助(ODA)国別データブック 2008」。

注3)カンボジアにおける強制立ち退き問題については、こちらをご参照ください。

注4)メコン河では先月、ラオス国内の本流ダム建設予定地で、日本の研究者により世界自然保護連合(IUCN)が絶滅危惧TA類に指定し、ワシントン条約の付属書1にもリストされているメコンオオナマズが確認されています。

要請書の本文はこちらをご覧ください。

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