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カンボジアにおける強制立ち退き問題

カンボジアにおいて強制立ち退きの問題が深刻となっています。
現地NGOの報告によると、2003年から2008年の5年間に強制立退きや打ちこわしなどの人権侵害を経験した住民は13州で5万3,758世帯(約25万人)に達し、全国でさらに15万人(2008年時点での試算)が立退きを強制される可能性があります。
中には、警官隊が出動し催涙ガスやゴム弾が住民に向かって発砲されるケース、妊娠中の女性に電気棒が使用されるケースなど、暴力的な立ち退きも生じています(カンボジア・プノンペンにおける土地紛争・強制立退きの発生例)。立退きを強制された住民が補償金や代替地を提供されることもあるものの、たいていの場合、補償は資産の価値に見合わず、住民はそれでも受け取らざるを得ない状況に追い込まれています。

現在の強制立退きの頻発は、カンボジア国内の土地権、紛争解決、住民移転・補償にかかわる政策や制度の不備に起因し、都市部における地価の高騰による土地投機が拍車をかけています。世界銀行(世銀)、アジア開発銀行(ADB)などは、カンボジア政府に対して土地制度や補償政策に関する支援を行ってきましたが、残念ながらそれらの支援は、都市貧困層をはじめ、最も支援が必要な人々にほとんど恩恵をもたらしていません。

世銀、ADBや各国ドナーは強制立退きの激化を憂慮し、2009年7月16日、「カンボジアの都市貧困層への立退きの停止を求める」と題する声明を出しています。オーストラリア、ドイツ、イギリス、アメリカなど多くの国々が名を連ねる中、日本の名前はありません。

カンボジアにおいて、住民移転や紛争解決のための政策や制度の不備がますます明らかになるにもかかわらず、日本は、相変わらず多くの住民移転を伴う大型インフラ案件を支援し続けています。立退き停止を求めるドナー声明が出された2週間後の7月30日、日本は国道1号線改修事業第3期の無償資金協力の交換公文に調印しました。また、現在、第2メコン架橋(ネアックルン橋)建設事業への無償資金協力に向けた検討が進められています。強制立ち退きの問題と露呈する制度の欠陥を放置して日本がこのような支援を続けることは、カンボジア政府のこの問題への真剣な対処を求める国際社会の努力に水を差しかねません。
日本の支援のあり方が問われています。

注1)Cambodian League for the Promotion and Defense of Human Rights (LICADHO). Land Grabbing & Poverty in Cambodia: The Myth of Development. May 2009. 
注2)AmnestyInternational. Rights Razed---Forced Evictions in Cambodia. February 2008. 

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